愚連考

ジャンル:映画 / テーマ:映画感想 / カテゴリ:観の記:映面 [2013年01月02日 00時30分]
2012年7月27日の夜、第30回オリンピック競技大会開会式で、ロンドンの空は落ちなかったが、ジェームズ・ボンドを供に偉いババァが空から落ちてきた。その約3ヵ月後、空から落ちないボンドが、河へ落ち滝に落ち凍った池にも落ちる劇映画が公開された。‘fiat justitia ruat caelum’(空が崩れ落ちても正義を貫け)ババァが崩れ落ちても…
  愚連考
 
『007 スカイフォール』(Skyfall) 観賞後記
 
それを嫌えばUSA大統領(ブッシュ41)の職を1期で終らせるほど、圧しつけがましい健康野菜(?)を世に広めたブロッコリ一族が、推しつけがましく007シリーズを製作し続けて半世紀が過ぎた。傑作「カジノ・ロワイヤル」(Casino Royale/2006年)でリブートしたダニエル・クレイグ主演シリーズ、その第3篇「スカイフォール」は…傑作だ。
 
 《…これは第3篇なんですけども、本当にこの乗りに乗ったといいますか、全く
  この人物に板についたという感じがございまして…(略)この間ある資料を読
  んでおりましたら、この007のシリーズというのは、第1篇・第2篇は日本で
  はむしろインテリの観客に受けた、そしてこの第3篇の「ゴールドフィンガー」
  から、初めてその子供さん観客にも、この拡がっていって大ウケになったと、
  こういうことが書いてある。なるほどそういわれてみると、こりゃ本当に誰でも
  楽しませる凄い力を持った作品だな、こう改めて思いますね。ま、これこそエ
  ンターテイメントというものの結晶でございます。存分にお楽しみいただきま
  す。》 (荻昌弘 「月曜ロードショー」『007 ゴールドフィンガー』 TV放映解説
  1984年)
 
第1篇「カジノ・ロワイヤル」というのは懐古趣味のリブートで観客に受けたが、第2篇「慰めの報酬」は慰める言葉も無いほど駄作だった、そして第3篇の「スカイフォール」でリブート作品の前2篇をもう一度リブートして大ウケになった、こういうことを感じ得る。なるほどそういわれてみると、話の運びはますます陳腐に堕ちたものの、誰でも楽しませる凄い力を持った作品だな、こう改めて思える。そこには懐古と自壊が併存する。
 
例えば、好みのマッカランをこぼす方が勿体無いと低俗ボンドガールを見限って扱う。例えば、「ダイ・アナザー・デイ」(2002年)以来となるQとマネーペニーの登場。例えば、「ゴールドフィンガー」(1964年)・「サンダーボール作戦」(1965年)のボンドカー、‘BMT 216A’のナンバープレートを有するアストンマーチンDB5の再来…ここは当に“Everybody needs a hobby.” “What’s yours?” “Resurrection.”…
 
  愚連考 (1)
そして、Mとの訣別。ジュディ・デンチがゴールデングローブ賞と英国アカデミー賞の両主演女優賞を獲った『Queen Victoria 至上の恋』(Mrs.Brown/1997年)は、偉いババァとその手下が交情して騒動を引き起こす物語で、「スカイフォール」はこの大英帝国のババァ(M)とスコットランドの使用人(ボンド)という関係を見事に映し再現した。ババァが崩れ落ちても関係を貫け、ま、これこそエンターテイメントというものの結晶だ。
 
ジェームズ・ボンドの故郷スカイフォール邸は、スコットランドのハイランド南西部はロッホアーバー地方のグレンコー村にある。“Three Sisters of Glencoe”(グレンコーの三姉妹)と呼ばれる居並ぶ山は、スカイフォール邸からも見えたであろうか。擬えれば‘Aonach Dubh’(黒い嶺)はイヴ、‘Gearr Aonach’(短い嶺)はセヴリン、そして‘Beinn Fhada’(長い丘)はM、ボンドと交情した愚連の女たち…また愚考を連ねる。
  愚連考 (2)
 
ところで、キャンベル・スープとマクドナルド・ハンバーガー、ボンドはいずれが好みか? マッカランで復活し、グレンコーで訣別する…偉いババァの家が嘆きの谷になるのか? 『007 スカイフォール』は、懐古と訣別と自壊と復活を繰り返す、巳(ヘビ)年を迎えるに相応しい終局と再生のウロボロスな快作…“think on your sins.” “with pleasure!”
  
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鳥目散 帰山人
(とりめちる きさんじん)

無類の珈琲狂にて
名もカフェインより号す。
沈黙を破り
漫々と世を語らん。
ご笑読あれ。

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