新しくないごっこ

ジャンル:映画 / テーマ:映画感想 / カテゴリ:観の記:映面 [2012年09月04日 23時30分]
プロデューサーがほざく…「日本映画の中に新しいジャンルが一つ生まれたんだ」。
監督がぬかす…「殺陣(たて)と言いたくないんだ。アクションも芝居と同じなんだ」。
おろ?愚か者!…「剣は凶器、剣術は殺人術、剣劇(チャンバラ)はごっこ、どんな
綺麗事やお題目を口にしても、それが真実…」って学校で先生に教わらなかった?
  新しくないごっこ
 
『るろうに剣心』(RUROUNI KENSHIN) 観賞後記
 
♪たーけ たーけ たけるー! るろうにフニャン フニャン フニャン ニャン ニャン フニャン
るろうにフニャン フニャン フニャンニャニャ~ン るろうに剣心 たけるでフィット!♪
「不殺」(ころさず)を誓った者が(ガンマンならば無弾装の銃になってしまうハズが)
逆刃刀などという半端な凶器を佩びて「おろ?」などと戯れている主人公・緋村剣心、
この人格が大根なキャラクターに佐藤健の大根役者ぶりが完璧にフィットして好い。
 
 《…何と言っても、私たちの心をとらえて離さなかったのが東映のチャンバラ映画
  だった。『笛吹童士』『右門捕物帖』『旗本退屈男』『新吾十番勝負』……中村錦
  之助や大川橋蔵、東千代之介といったスターたちの活躍に一喜一憂し、映画を
  観た翌日の私たちは興奮冷めやらず、木ぎれを剣に見立てたチャンバラごっこ
  で名シーンを再現した。“諸羽流青眼くずし”“秘剣・揚羽蝶”…》
 《たしかにそれは時代劇のスチールなのだが、私たちがこれまで知っていた東映
  の歌舞伎町時代劇とは明らかに違っていた。(略)…そのスチールに写っている
  主人公らしき浪人は、髪もヒゲも伸び放題、着ているものといえば、何年も雨と
  ホコリを浴びたようなヨレヨレの着物なのだ。とにかく汚かった。(略)その映画の
  タイトルは『用心棒』、監督の名は「黒澤明」とあった。》
  (『沈黙の団塊へ』かわぐちかいじ:著/ワニブックス:刊/2001年)
 
 《…ああ、これからの時代劇は『用心棒』のリアリズムを抜きにできない描写になっ
  たなと思いましたね。(略)それで、もう東映時代劇は見る気がしないから、大映
  に行くんです。すると、座頭市なんてたしかにリアルなんですよ。ただしヒーロー
  映画なんですけどね。狂四郎のほうはというと、東映の持っていた日本的な様式
  美をリアルなものに少し変えながら撮ってた。多分大映の人たちは、黒澤明が
  提示してきた圧倒的なリアリズムに対して、そっちへ歩み寄って行くんじゃなく、
  従来の日本の伝統美や様式美をふまえて、黒澤の方法論を自らの方に引き寄
  せて作ってたんじゃないかと。(略)だから大映はリアリズムの表現とヒーロー映
  画を合体させたんですよ。(略)まあ、技術をもってた事も確かだけど、声高にさ
  あどうだどうだって主張しない、そこが職人ぽくていいなと思ってね。》
  (「かわぐちかいじ×北川れい子 映画語りおろし スペシャル対談」かわぐち談/
   『’86-’02 かわぐちかいじ全短編』/講談社:刊/2003年)
 
『るろうに剣心』は、時代劇としてもチャンバラ映画として佳作であるが、それは日本
の映画として「全く新しくない」からであり、殺陣は殺陣という「ごっこ」だからである。
それをキッチリと説く技量もない阿呆なエセ職人が作っている、奇跡の佳作である。
 
そもそも、「不殺」(ころさず)という剣客にあるまじき設定で明治の流浪人を描写し
たこと自体が「ごっこ」である、だから平和ボケした現代に合う。したがって、相対に、
幕末のシーンやクライマックスに現れる「人斬り抜刀斎」状態に関しては、黒澤映画
や大映時代劇のチャンバラよりもリアリズムを求められるワケだが、ここは全くダメ。
フニャンフニャンした者が勢いだけで走り、力んで刀を振り回すから、体に居つきが
残って趺踞のような浮動感が全く見えない「双龍閃」になっている。「人斬り抜刀斎」
を撮りたければ、海外で傭兵経験でも積ませ実地の戦闘殺人を積んでからだろう。
 
「ニッポン映画の未来を切り開く、比類なき、ドラマチック・アクション・エンターテイメ
ント」などという嘘臭い惹句は無用、仮に吐くならば、「平和ボケのニッポンに相応し
い不殺が正義、斬り開こうにも斬れない刀のチャンバラ映画でござるよ」か、おろ?
 
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コメント

No title
ナカガワ URL [2012年09月05日 08時55分]

チャンバラトリオファンは、剣心好評価でござる。パート2京都編はハリセン持ち換えでござる。パート3は中国かアメリカに渡るでござる。最後はワイルドウエストショーで余生を送るでござるよ。子孫がオーサカでチャンバラをコントに取り入れ----。

to:ナカガワさん
帰山人 URL [2012年09月05日 20時10分]

え?アメリカに行くの?じゃあ、ハリセンにピコピコハンマーも加えて、ウルトラクイズ形式ってことで…
いや、私も作品自体は好いと思っていますよ。漫画の実写化にしては期待以上だった、とかいう巷の好評も否定はしない(私自身は本作をそういう目線で観ていないけれど…)。ただねぇ、スタッフもキャストも観客も、「抜刀斎は罪を犯し、贖罪の意識でヒーローになりました」っていう講釈を垂れるのが気に入らない。
どうせアタリ映画になったんなら、「講釈抜きでプログラムピクチャーっぽく数十本のシリーズにしたい」とか言って欲しいでござるよ。

No title
ちんきー URL [2012年09月05日 22時39分]

るろうに剣心・・・「1/3の純情な感情」位しか思い浮かびません。
申し訳ないです<(_ _)>

to:ちんきーさん
帰山人 URL [2012年09月05日 23時56分]

いや、別に誰にも「申し訳ない」こたぁないでしょう(笑)
娯楽作品としてはオススメですよ(但し、ガキを相手に必殺技の炸裂を並べる意図は無い、割り切った実写化なので、観る方も「アニメと比べて云々」とか言っちゃあいけませんゼ)^^/

No title
ナカガワ URL [2012年09月06日 08時28分]

子供のころテレビで「ぶらり信兵衛 道場破り」というのがありまして、毎回楽しみに観ていました。道場主と鍔迫り合いしながら、降参金の交渉をして長屋の仲間を助けるのです。
父が時代劇や西部劇好きで、チャンバラがあるならアニメ版「ベルばら」も欠かさず観るアルティメットな人でした。そんなわけで「ベルばら」実写化にがっかりしたものです。あああれから30年。パリの仇を東京で。今回の「るろ剣」は実写「ベルばら」で生き残ったオスカルアンドレの隠し子が立派に育ったような。あああれから30年。もはやこんな話題を書きこめるのはキサンジン様のトコくらいです。

to2:ナカガワさん
帰山人 URL [2012年09月06日 18時09分]

「ぶらり信兵衛」を毎回楽しみに観ていた…やな子供だなぁ…立派に育ったけど(笑)。
そういやぁ、ウィリアム・フレデリック・コディーの3歳下で緋村剣心が生まれている、それから30年余、海をはさんで西部ショーと抜刀斎一座を興すシンクロ話があってもいいかも。その頃、小笠原でコーヒー栽培の実験をさせていた榎本武揚は、廃刀令を自分で布いた山縣有朋から緋村剣心の扱いを相談され、剣心にコーヒー栽培を勉強させて、後年メキシコ殖民団に抜刀斎一座を同道させた…アメリカ大陸でコディー&剣心の夢の共演が成立していた、ってのはどう?

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Author:kisanjin
鳥目散 帰山人
(とりめちる きさんじん)

無類の珈琲狂にて
名もカフェインより号す。
沈黙を破り
漫々と世を語らん。
ご笑読あれ。

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