追憶消します

ジャンル:映画 / テーマ:映画感想 / カテゴリ:観の記:映面 [2012年08月14日 23時00分]
‘We Can Remember It for You Wholesale’(「追憶売ります」:『模造記憶』所収)、Philip Kindred Dick(フィリップ・K・ディック)が1965年9月に著し、翌1966年4月号“The Magazine of Fantasy and Science Fiction”に掲載された。アンフェタミンを常用して小説を量産していたこの頃のディックは、相変わらず貧苦に喘いで、鬱(うつ)とパラノイアに悩まされていた。自らの運命を未だに「アジャストメント」できないままに、3人目の妻アン・ウィリアムズ・ルビンシュタインとの結婚生活にも破綻が迫っていた…
  Total ReKal (2)
 
『トータル・リコール』(Total Recall) 観賞後記
 
「見たこともない!いま、新しい大冒険映画をハリウッドは創り上げた」、ポール・バーホーベン監督アーノルド・シュワルツェネッガー主演1990年版『トータル・リコール』は惹句に嘘がなかった。リメイクのレン・ワイズマン監督2012年版『トータル・リコール』は…「ブレードランナー」なコロニーと「フィフス・エレメント」で「マイノリティ・リポート」なブリテン連邦を舞台に「ボーン・アイデンティティー」な自分探し…「見たことある!また、新しくもないし冒険もしていない映画をハリウッドは作ってしまった」…懲りん・ファレル。
 
唯一斬新なガジェットは‘The Fall’(フォール)…重力列車(?)と思われるが、なんと!自由落下速度を上回って発着地の2点間を約17分で結ぶ…チャールズ・ラトウィッジ・ドジソンも真っ青の超科学技術で走行するようだ。この技術を有しているならば科学
兵器で汚染された地表世界を除染することも可能だろうに…否、火星に殖民することさえ問題ないだろう。笑うところも少ない硬派な様相で進む展開の『トータル・リコール』には致命的な設定ミス、SFをバカにしているのか?打開策の見えない駄改作である。
 
  Total ReKal (3)  Total ReKal (4)
メリーナV.S.ローリーのキャットファイト、2012年版でも好かったのはこの一点のみか。ジェシカ・ビールV.S.ケイト・ベッキンセールは1990年版のレイチェル・ティコティンV.S.シャロン・ストーンに匹敵する。但し、バーホーベン監督が当時の次作『氷の微笑』でシャロン・ストーンをトップスターへ引き立てたのに対して、ワイズマンは初監督作『アンダーワールド』を機にマイケル・シーンからケイト・ベッキンセールを奪って直後に婚約、『トータル・リコール』でベッキンセールを最終シーンまで出しまくる、性根が腐った話だ。
 
 《彼はめざめた――そして火星を恋い、その峡谷を想った。一歩一歩足を踏み
  しめてその谷間を歩いたら、どんな気分がするだろう。(略)おれは行くぞ、そ
  う自分に言い聞かせた。死ぬまでに、きっと火星を見てやる。》
  (「追憶売ります」 深町眞理子:訳)
  Total ReKal (1)
   ♪ ハァ 火星も無(ね)ェ リアクター無ェ ロボットタクシー走って無ェ
   ♪ ミュータント無ェ クワトー無ェ ローリーしつこく来~る来る
   ♪ 朝起ぎで コア抜けて 17分ほど通勤路
   ♪ 顔割れ無ェ リクター無ェ フォール朝晩乗ってくる
   ♪ 俺(お)らこんな星イヤだ 俺らこんな星イヤだ 火星へ出るだ
   ♪ 火星へ出だなら 酸素ア貯めで 火星でベコ飼うだ
 
  Total ReKal (5)
「リコール社はあなたの願望を100%かなえます」…2012年版『トータル・リコール』を観た際の怒りの記憶を消してくれ! 脳がヤラレて女に恵まれなかったSF作家への追憶は売れない、道にハズレて女に溺れている映画監督への追憶は売って消し去るべき? おれは忘れるぞ、そう自分に言い聞かせた。死ぬまでに、きっとクソ映画を消してやる…
 
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コメント

No title
ちんきー URL [2012年08月17日 19時46分]

いや~、正直「そこまで行くかハリウッド」ってな感じです。
きっともう「ネタ」無しなんでしょうね。
アメコミか続編かリメイク(外国作品も含む)しかない・・・
最近はハリウッド以外の外国作品の方が面白いと感じてます。
(サム・ライミも今一になってきたし・・・)
と言うわけで今回も「スルー」と言うことでm(_ _)m

to:ちんきーさん
帰山人 URL [2012年08月17日 20時54分]

内実としては随分以前からハリウッドシステムは崩壊しているワケですよ。だけど、配給とか興行とか、あるいはバカデミーだかアホデミーだかの評価、こういうものから観客も抜け出せていない…つまり相対的にハリウッドがフォールされているだけで、いわゆる「映画」という存在自体が揺らぎ始めているんでしょうネェ^^;

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鳥目散 帰山人
(とりめちる きさんじん)

無類の珈琲狂にて
名もカフェインより号す。
沈黙を破り
漫々と世を語らん。
ご笑読あれ。

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