返してこい!3

ジャンル:グルメ / テーマ:コーヒー / カテゴリ:珈琲の記:2012 [2012年07月22日 01時00分]
「ドリップ」(drip)という語に「つまらない、面白くない、退屈な、間抜け、鈍間、愚図」の意
があることを意識したのであろうか、滴り落ちるどころか腑に落ちないコーヒー本が登場。
  抽出不全本
 
『ドリップコーヒーの最新技術』(旭屋出版:刊)
 
サイフォンコーヒー プロフェッショナル テクニック』と『コーヒー焙煎の技術』という救いの
無い駄本を昨2011年夏に発刊した旭屋出版が、今2012年夏にもまた帰ってきた!
前2書と同様に、取材を受けて本書に掲載された各々のコーヒー店自体を一概に悪く
言うつもりは無い。むしろ今般、野蛮な扱いを受けた店店には憫然たる思いすら抱く。
やはり悪しきは、取材記事を脈絡も無く並べただけの無能なる編集をしているところ、
「こんなシゴトならばサルでもできる」と言えばサルに失礼な程度の手抜きの仕立てだ。
 
古き本ばかりを美化しえないが、愛着と批評の精神を忘れないムックは確かにあった。
『blendブレンド―No.1』(柴田書店:刊/1982年)の巻頭「銘店の珈琲―味と技」には、
ネルドリップ抽出店として「カフェ・ド・ランブル」・「ダボス」・「和田珈琲店」・「オランダ」の
順で4店が登場する。ランブルに続き、ダボスの抽出、和田の抽出はこう紹介される…
 《…ランブルのように点滴するわけではないから1回ごとの注湯は多少早いが、休み
  が入るのでほぼ同じ時間に仕上がる。》(『blendブレンド―No.1』p.15)
 《…同じネルドリップでも和田の淹れ方はランブルやダボスとはだいぶ違う。浅煎りの
  豆は深煎りに比べ、湯の浸透するのが遅く、細かく挽いてゆっくり注湯すると湯の
  落ちる速度が遅れ、余分な成分まで抽出してしつこい味になりがちだ。和田のネル
  ドリップは荒挽きにした豆を大量に使って手早く落す。》(前掲書p.16)
また、同書はペーパードリップ店として「珈琲屋バッハ」に続き「ぽえむ」を紹介する…
 《…まず一度に淹れる人数分により穴の数の違う3種類のドリッパーがある。さらに、
  タイプ(ロースト別:アメリカン、ジャーマン、フレンチ)の違いにより粉の分量、挽き
  方、抽出の方法が異なる。つまりこれらの組合せで9種類ものマニュアルが存在
  するのだ。》(前掲書p.18)
このように、比べて違いを際立たせた解説が付された時にこそ、是非はともあれ創意
工夫の意図を滲ませた解説が記された時にこそ、取材を受けて掲載されたコーヒー店
の抽出データや手順を示した写真が、より具体的で有益な「教本」と化していくのである。
 
『blendブレンド―No.1』とほぼ同時期に発行された「―複製時代の偽叙事詩」を冠する
『LIVE!オデッセイ』(狩撫麻礼:作/谷口ジロー:画)では、マネジャー下村がこう吐く、
 《あんたの会社(とこ)は、せっかくイキのいい毒気タップリのバンドを例外なく屁みて
  えな歩行者天国のBGM風の音盤(オサラ)にしちまうのはどういうワケだ!?》
ドリップコーヒーは奥が深い、面白い。しかし『blendブレンド―No.1』とは大きく異なり、
面白くもなく間抜けな意の「ドリップ」コーヒー本でしかない『ドリップコーヒーの最新技術』
は、技術教本では無い、単なる気まぐれなコーヒー屋のガイド本としてしか機能しない。
コーヒー抽出の技術を本書のみで学びきる、と謬論する次代のコーヒー店志望者には、
「かえしてこい、という感じ!?」という返本の忠告を贈っておきたい、そんな本である。
 《あんたの会社(とこ)は、せっかくイキのいい毒気タップリの珈琲屋を例外なく屁みて
  えな掲載されただけで喜び回る愚鈍(バカ)にしちまうのはどういうワケだ!?》
止揚も仕様も無い旭屋出版の「―複製時代の似非コーヒー本」、抽出も不全であった。
 
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コメント

No title
ナカガワ URL [2012年07月22日 07時00分]

すいません。いつもお買い上げいただいて。批評とは砂金ふるいなのですね。批評がないならせめて評価をと思います。各店名の横に解説なしで、わけのわからない星やらスプーンやら、丸やらバツやらを複数個つけます。カッコ書きで「編集部の整理記号記入欄です」とか添えます。そのうちにネット上で、あれは取材した編集者の覆面調査時点での評価フォームらしい---あの星はミルの掃除の具合の評価点のようだ、とかいう「あらぬ風評」がたちます。スプーンはサービスの評価のようだ、丸は営業トークと実際の味の整合性らしい---バツはお冷グラスが白かったみたいだ、とか。ま適当に複数の解釈が成り立つ、怪記号付きにします。「見る人が見ればわかるぞミシュラン」といわれるように。確か古本には古本屋が一般の人にはわからない印をつけ、古本には古本の値を付けるといいます。せっかくなので取材しながら業界向けにウシジマくんのコンサルティング部みたいなものを設置してもらって---部署名は「風水部」の方がいいかしら。そこから風水盤を10万円で買うと、記号の読み方がわかるようにします。知りたくない人、知る必要がない人は、ただいつものように掲載を喜べばいいし。悪には悪でが流行りそうなので、どうかしら。

to:ナカガワさん
帰山人 URL [2012年07月22日 21時32分]

ふーむ、これだけネット社会とかいわれながらも紙媒体に「載った載った」と喜ぶ連中がいる限りは、怪記号ミシュラン策もアリかもしれないナ。しかし、これらムックの中身であれば、Webサイトに掲示すりゃ済む話だと思うんだけど…それでもって「あらぬ風評」の行き先は、これまた謎の裏サイトに誘導すればイイんですよ…そこでさんざん皆でやりあった後に、改めて全部まとめてアーカイブ本を出版すればイイ。意義でいえば、それならまだ価値がある、と思うけれど如何?課題はあって当然のオピニオンを出版社が持ちえるか、ってコトだけなんだけど…

No title
ナカガワ URL [2012年07月28日 00時07分]

テーマとは無関係なのですが、新しいケニアの豆の農協名だか地域名だか工場名だか---キアンジル、昨年キアンガイ(アッガイとかズゴックとかもありそうでしょう)、そのまえキアマバラ(シャリアブルもありそうでょ)なんてのがあり、来年当たりは適当にキサンジンとかグワジンとかいう名前をつけても、売れるのではないかと---。

to2:ナカガワさん
帰山人 URL [2012年07月28日 16時08分]

キアン何某と何某ジンとでは、モビルスーツと戦艦くらい「格」が違います。
キアマバラ/キアンガイ/キアンジル…中央州のニエリ及びキリニャガ地区で開発されたキアン(奇案)型モビルスーツ(MS)の各機種の名称。高品質の名産MSとか宣伝されているが、実際は生産単位の縮退が進み、集積するパーツの組合せにすら難渋して年毎に範囲が定まらないので、キアン何某などと意味不明なファクトリー(?)を冠する奇案に満ちた末期的MSである。
グワジン/キサンジン…グワジン級大型戦艦はジオン公国を支配するザビ家の御座艦として作られ、一年戦争終結時にその多くはジオン残党勢力によりアクシズに移されて居住艦として使用された。この捲土重来を期するジオン残党勢力の経緯によって「グワジン嘗胆」という故事成語に名を残している。グワジン級のグレート・デギンは一番艦であったにも関わらずネームシップにもならず味方に破壊された。最近、真なる「グワジン嘗胆」の証として公国時代を偲んだグワジン級新造改良艦グレート・キサンジンの建造が秘かに企てられているらしい…詳細は不明である。

アメリカの焙煎豆
AlphaT7M2 URL [2012年08月02日 12時03分] [編集]

初めまして、こんにちは。

いつもblog、tweet共に楽しく拝見させて頂いてます。僕も大変珈琲が好きで色々と参考にさせて頂いてます。

記事に全く関係ないコメントで恐縮ですが、ひょんなことからアメリカはミネアポリスの珈琲豆が手に入ったので、良ければ少しお譲りしようと思うのですが、いかがでしょうか?Coffee & Tea LTD(www.coffeeandtealtd.com/)という焙煎屋さんなのですが、色々な種類な豆を扱っていてなかなか面白いです。ご興味があれば、メールアドレスの方までご一報いただければありがたいです。

追伸:「コーヒーの鬼がゆく」の解説文楽しく読ませて頂きました。

to:AlphaT7M2さん
帰山人 URL [2012年08月02日 22時31分]

ようこそ!珈琲好きとはいえ、私の「狂った」Blog&Tweet&解説文を「楽しい」とまで言っていただき恐縮です(笑)。
‘Coffee&Tea’買いましたねぇ、Twitpic写真で拝見する限りでは7袋ですか?!
頂戴したコメントのメアドは文字化けしてしまって(私では)対処できませんので、TwitterDMにて連絡先をお知らせさせていただきました。どうぞ、今後ともよろしく。

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Author:kisanjin
鳥目散 帰山人
(とりめちる きさんじん)

無類の珈琲狂にて
名もカフェインより号す。
沈黙を破り
漫々と世を語らん。
ご笑読あれ。

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