魔法の本

ジャンル:グルメ / テーマ:コーヒー / カテゴリ:珈琲の記:2012 [2012年07月06日 23時00分]
当節、珈琲屋の宣伝文句はおぞましい…「ワンランク上の絶品」、「注文殺到中の極上」、「究極」、「一流」、「天才」…気高い自負は消え失せ厚かましい押柄ばかり、反吐が出る。どうしてこうなってしまったのか?あるコーヒー本を手に入れて、この感忿の元が解けた。
  魔法の本
 
『コーヒーがおいしくなる魔法の本』(枻出版社:刊)
 
枻(えい)出版社のコーヒームックは常に自ら焼き直した陳腐な仕立て一本槍であるが、その題名に付されるキャッチコピーの変遷には、コーヒー本の低俗化が垣間見えてくる。
 
2006年12月刊 『別冊Lightning vol.35 コーヒースタイルブック』 (エイムック1289)
「自分好みの飲み方ってある?」
 ↓
2009年2月刊 『別冊Lightning vol.63 コーヒーブック』 (エイムック1672)
「自分だけのコーヒーはじめませんか?」
 ↓
2009年9月刊 『COFFEE LOVERS』(コーヒーラヴァーズ) (エイムック1806)
「コーヒーを愛する人たちへ捧ぐ、コーヒー本の決定版」
「うまいコーヒーは何が違うのか?」
 ↓
2010年1月 『コーヒーの基礎知識』 (食の教科書シリーズ)
(特定のキャッチコピー無し) 
 ↓
2010年9月 『COFFEE hour』(コーヒーアワー) (エイムック2029)
「本当に美味しいコーヒーが、この一冊ですべてわかる!」
「世界一美味いコーヒー豆はどれだ!?」
 ↓
2010年12月 『珈琲のすべて
「この一冊で、コーヒーがわかる人になる!」
「うまいコーヒーには理由がある。」
 ↓
2011年11月刊 『コーヒーの基本』 (エイムック2290)
「美味しいコーヒーの淹れ方から、豆や器の基礎知識まで網羅!」
「美味しいコーヒーの教科書」
 ↓
2012年7月 『コーヒーがおいしくなる魔法の本』
「この一冊でコーヒーのことが全部わかる!」
「コーヒーの知識と最高の淹れ方を徹底解明!」
 
如何? 中身こそ代わり映えしないが、「別冊ライトニング」や「コーヒーラヴァーズ」の頃は趣味人に「コーヒー面白いですよ」と訴えかけるような遊び心と余裕が残されている惹句。それがここ2年ほどで、ガンガンと押し付けがましい言葉の羅列に変化してきて、ついに「魔法の本」(?)にまで変わり果ててしまった。今般「魔法の本」に到っては、もはや章題までもが「史上最高においしい」、「究極のコーヒー」、「至福の一杯」、「絶品コーヒー豆」…低劣な珈琲屋がインターネット通販などで煽り立てる文句とソックリな言い回しばかりだ。珈琲屋とコーヒー本、その惹句は共に低俗に堕し、コーヒー界と消費者を白痴化させた。
 
「絶品」と謳えば実際は「下品」、「究極」とあれば極めて「下手」、そう読み替えるべきか? その読み替えを必要とする頻度が高い場合、コーヒー本であれば駄本、珈琲屋であれば注文や取り寄せをして確かめる必要すらない愚店、そう判断してよかろう。そして今後も、駄本を読んでは「極上」だの「至福」だの「天才」だのと喧伝する愚劣な珈琲屋になる者が、ガンガン輩出されてくること、残念でも必至の予感。この愚昧を打ち消す魔法の本は無い。
 
コメント (4) /  トラックバック (0)

コメント

世は天才だらけ
シマナカ URL [2012年07月07日 19時03分]

街の料理屋のおっさんが鉄人だ巨匠だともてはやされて以来、街の凡夫匹夫は「天才」となり、料理は「絶品」だらけとなった。ボクもガキの頃は神童と呼ばれてたけど、今は60肩に悩むただのジジイだ。究極のコーヒー? それはボクが煎ったコーヒー豆のことであって、それ以外のコーヒーなど駄豆に決まってる。さて帰山人は奇散人でもある。奇才天才の類ではないけれど、phonyなもの(江藤淳が懐かしい)を嗅ぎ分ける術は心得ている。なにが魔法だ、アホらしい。愚昧なやつらはすっこんでろ!

to:シマナカさん
帰山人 URL [2012年07月08日 00時45分]

あ~あ、「究極」は「下手」の意だって説いたハナから「ボクが煎った…」と言いますか(笑)。まぁ、シマナカさんも私もマメな商売人じゃないから、腕自慢も「あいくるしい」で済ませましょうかネ。これが自称「天才」の商売人になると「むさくるしい」だけ…ココにも魔法なんぞはございませんナ。

No title
ナカガワ URL [2012年07月09日 01時41分]

これらをキサンジンセンセに買わせた「エイ魔女」マジックはすごいのかなあ。
バーナムの森が動かぬ限り負けることはない。女の腹から生まれたものには負けない。きっとドイ様たちも占ってもらったのでしょうね。これはこれは新しいラストキングオブスコットランドのおでましだ、なんて。
キサンジンセンセは、毎週森を動かさんばかりに山を行き、もしかしたら帝王切開でいらっしゃるかしら。

to:ナカガワさん
帰山人 URL [2012年07月09日 02時57分]

私ゃマクダフか?(笑)まぁ三船よりは志村喬の方が好きだけど…
いくら私が山を走ってもバーナムの森なんか動かせやしませんよ。
「エイ」の魔法のバーナム効果で「正しくない珍妙な珈琲屋」になっちゃう者はいるでしょうがねぇ…
魔術を打ち消す効用をさらに高め、3冊目の泰然とした本出してください!

この記事にコメントする

トラックバック

この記事へのトラックバックURL
http://kisanjin.blog73.fc2.com/tb.php/470-3ccf2452
編集

kisanjin

Author:kisanjin
鳥目散 帰山人
(とりめちる きさんじん)

無類の珈琲狂にて
名もカフェインより号す。
沈黙を破り
漫々と世を語らん。
ご笑読あれ。

09 ≪│2017/10│≫ 11
1 2 3 4 5 6 7
8 9 10 11 12 13 14
15 16 17 18 19 20 21
22 23 24 25 26 27 28
29 30 31 - - - -
Powered by / © Copyright 帰山人の珈琲漫考 all rights reserved. / Template by IkemenHaizin