旅せぬ缶コーヒー

ジャンル:グルメ / テーマ:コーヒー / カテゴリ:珈琲の記:2012 [2012年06月02日 23時00分]
缶コーヒーは旅をするのか? それは創造の旅? 慢心の旅? それとも、旅はしないのか?
 
 
【旅せぬ缶コーヒー1/ジョージアクロス UK-STYLE】
 
  旅せぬ缶珈琲  旅せぬ缶珈琲 (1)
コーヒーに別の物を混ぜた缶コーヒー「ジョージアクロス」シリーズ、第1弾「和-STYLE」の
香味は不良だったが、“コーヒーにちょっと抹茶”という発想は新奇で大胆、そこは買えた。2012年5月21日より発売された第2弾「UK-STYLE」は…“コーヒーにちょっと紅茶”!? 鴛鴦茶(珈琲×紅茶×牛乳)そのまま、しかも同年2月6日より発売されたJT(日本たばこ産業)の缶コーヒー「ルーツ エクスプローラー テ・マリアージュ」の後追い…合わせた紅茶が「テ・マリアージュ」はディンブラで「UK-STYLE」はダージリンと違いはあるが、この着想の安直と貧弱、まるっきり話にならない。そこから先は香味で判断するしかないので試飲。
 
  旅せぬ缶珈琲 (2)
 《「ジョージアクロス UK-STYLE」は、ブラジル産の厳選されたうまみの
  深いコーヒー豆と、さわやかな香りのコーヒー豆をブレンドしたコーヒー
  に、「紅茶のシャンパン」と言われるダージリンティーのエキスを隠し味
  に使用しました。缶を開けた瞬間に香るダージリンの香りが特徴の、こ
  れまでにない“ちょっと違う”缶コーヒーです》
  (日本コカ・コーラWebサイト)
缶を開けた瞬間に香るダージリンというよりもアールグレイに近い香料の臭気。味わいの印象も同様であり、飲み終わる最後まで予想以上にコーヒーよりも紅茶の味が支配して、「隠し味」どころではない。後味に紅茶とコーヒーの双方から出たような渋味が残っている。但し、「缶コーヒー」という概念を外して「缶・鴛鴦茶」と捉えれば、作りモノ上手ともいえる?
 
《“クロス”することで創り出される新しいライフスタイル、そして新しい缶コーヒーのカタチ》と嘯く「ジョージアクロス」シリーズ、第1弾は着想大胆で香味貧弱、第2弾は着想貧弱で香味大胆、見事に「クロス」(?)している。浮沈や盛衰の激しい缶コーヒー市場において、トップシェアのブランドらしい「冒険」の旅を期待したが、今般「UK-STYLE」は旅立てない。
 
 
【旅せぬ缶コーヒー2/二つの‘顔缶’】
 
  旅せぬ缶珈琲 (3)  旅せぬ缶珈琲 (4)
二つの缶コーヒー本、ポッカ本である『成功は缶コーヒーの中に』(谷田利景:著/プレジデント社:刊)と、サントリー本である『缶コーヒー職人-その技と心-』(高橋賢藏:著/潮出版社:刊)、比して悲哀が満載。ポッカコーヒー‘顔缶’生みの親、谷田氏はかく言う。
 《顔缶というと、サントリーの「BOSS」を思い浮かべる人が多いかもしれ
  ないが、元祖ポッカで、サントリーが顔缶デザインを使うに際しては、事
  前に同社の役員が丁重にも私に挨拶して仁義を切ってくださり、恐縮し
  たものだ。》 (ポッカ本p.84)
 《あるパーティーで、サントリーの関係者が私に近づいてきて…(略)…そ
  の道の先駆者として私を讃えてもらって、私はうれしかった。「マネされ
  ることをやったのだ」とちょっぴり得意であった。》 (ポッカ本pp.151-152)
しかし、サントリー‘顔缶’「BOSS」の開発を振り返る高橋氏は、ポッカ‘顔缶’に触れない。
 《そんな中、最も飛躍的な伸びを見せたのが、K社だった。八七年に新
  ブランドを発表したK社は、…(略)…九一年には、ほぼ「WEST」と
  変わらない販売数量にまで伸ばしてきていた。ネーミング、中味の組
  み立て、広告戦略などで明確な存在感を世に示していた。》
  (サントリー本pp.23-24)
 《…現在の「BOSS」のロゴになった顔のマークは、当時、入社一年目
  だった石浦弘幸がデザインしたものだった。加藤さんが「こんな感じの
  顔のあるデザインを」とササッとスケッチしたものが、現在の顔マーク
  の原型で、そもそもは石浦が着ていたトレーナーの柄にヒントを得たも
  のだったらしい。》 (サントリー本p.59)
1987年に「WEST」を投入したサントリー陣営は、同年から伸張率で上回るキリン陣営の「Jive」に脅威を感じ、新ブランドの開発にかかる。そこでポッカの‘顔缶’なんぞは眼中に無い。ポッカ谷田氏の言「マネされることをやった」、その自意識過剰に憐憫すら覚える。だが、キリンvsサントリーの争いに関しても、サントリー本で高橋氏が触れない裏がある。
 《ユニカフェのアイデア勝負の提案型営業は他社にはない差別化ポイン
  トである。(略)例えば一九八五年ごろから売り込みを開始したビール
  とウイスキーのトップメーカーにも売り込むことができた。(略)…五品
  を新発売した中で、四品が当社のコーヒーによる製品化であった。(略)
  もう一社に対しては当時、注目を集めていた炭焼きコーヒーを提案し、
  それが一九八七年から商品化され、さらに一九九二年には新ブランド
  に一新。当社の売上も飛躍的に伸びる原動力となった。》
  (『利他に生きる コーヒー業界の風雲児 大武浩幸のコーヒー業半世
   紀』大武浩幸:著/日本食糧新聞社:刊)
この三つ目の缶コーヒー本(?)を加えて二つの‘顔缶’を眺めると、缶コーヒーの‘顔’よりも、携わった人間たちの方がはるかに「厚顔」であることが明瞭となる。各人の述懐に嘘は無くとも、驕心する魂からは抜け出せない。そこに囚われた缶コーヒー、旅することは無い。
 
 
【旅せぬ缶コーヒー3/謎の缶コーヒー】
 
  旅せぬ缶珈琲 (5)
『旅する缶コーヒー』(マキヒロチ:画著/マンサンコミックス/実業之日本社:刊)、「週刊漫画サンデー」(当時)に2010年7月29日号から2011年5月31日号まで不定期掲載され、そのオムニバス形式の全11話を収めた缶コーヒー漫画単行本である。その題名の通りに、コカコーラ・GEORGIA エメラルドマウンテンブレンド、伊藤園・W coffee ブラック、サントリー・BOSS ブラック、伊藤園・TULLY'S COFFEE バリスタズチョイスブラック、UCC・ミルクコーヒー、キリン・FIRE プレミアムブレンド火の恵み、ダイドー・ブレンドコーヒーなどが各話ごとに登場しているが、その題名に反し、これらの缶コーヒー自体が話中で旅することは無い。著者マキヒロチ氏が本作のテーマ「缶コーヒーのある風景」を収集するため、
 《会う人会う人にネタを聞く日々……、コーヒーのワークショップに参加して、
  小千谷に行って──、缶コーヒーのある風景を撮りに行くことも、そんな
  風に缶コーヒーのカケラを集めて妄想する作業はまさしく旅でした──》
  (オマケのページ:pp.232-233)
という制作過程を「旅」と称し、各話の内容と旅は無関係、随分と粗暴な缶コーヒー漫画。
 
もっとも興味深い話は「第7話 東京・銀座」、《大学教授の父を持つJ大出身のバイリンガル、学生時代は読モをやってたほどスタイル抜群》のOL堀田の本性は、忘れられない過去の男に顔が似ているポッカコーヒー‘顔缶’を買い続け、その空き缶を大量に自宅に並べている女。その空き缶の並んでいる部屋を俯瞰した画のページ(p.144)右上に、たった一つだけ、250gロング缶が描かれている。ポッカの「Mコーヒー」や「クリスタルアイス」には見えない。では何の缶コーヒーか? 何故か? なぜ一つだけなのか? 何を意味するのか? …気になって仕方がない謎の缶コーヒー。この孤独な缶コーヒーに旅は無いのか? 謎だ。
 
 
缶コーヒーは旅をするのか? 自動販売機に訊ねても、答えない…人間に訊ねても不明だ。
 
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コメント

No title
じょにぃ URL [2012年06月04日 11時05分] [編集]

帰山人さん。

飲み終わる最後まで予想以上に
コーヒーよりも紅茶の味が支配して、
「隠し味」どころではない。

どうしてメーカーが作る飲料って
砂糖も含めて大量に入れたがるんでしょうね。

鴛鴦茶といえば
私事ですが
一杯分の豆をkonoの4人用に入れて
蒸らしもせずに一気にドリッパーの
ぎりぎりまで注いで
一杯分抽出すると
見た目は薄ーい珈琲が出来るのですが
紅茶みたいな味わいになって
これはこれで
結構いけるなと思っています。
ミルクを入れるとまさにミルクティ。
珈琲なのに紅茶・・・似非鴛鴦茶。。
邪道ですかねぇ(^^;)



to:じょにぃさん
帰山人 URL [2012年06月04日 15時00分]

じょにぃさん、鳥目散帰山人という男はイヤな奴です。
以前に奴は寄稿文でこんな趣旨をエラそうに吐いています。
《現代日本のコーヒーで歴史的に最も独自性を示すものは、缶コーヒーで…(略)「たかがコーヒーされどコーヒー」と難しい顔をして語る専業者やマニアではなく、「あれもコーヒーこれもコーヒー」と缶やチルドパックを手にする日本人こそが「コーヒーは日本古来の伝統飲料で・・・ 」と話す担い手になる近未来…》(『美味しい珈琲BOOK』成美堂出版)
そのクセ日頃の帰山人自身は、「RTDコーヒー飲料は正真本物のコーヒーなんかじゃない。たかが似非コーヒー」と蔑んでいるらしい…
ああいえばこういう…マッタク愛嬌も無くワガママ勝手な奴です^^;;

缶コーヒーをはじめとしてRTDコーヒーの味や香りが強くなる傾向自体には、私自身はかなり寛容です。少なくとも「どうして?」とは思わない…だって所詮「作りモノ」だもの。
UCCあたりが原材料や香味に比較的「純粋さ」を求めて結果ハッキリしないRTD製品になる傾向、「姿勢は買ってあげたいけれど割り切れない商売ベタじゃシェア低迷も仕方がない」と言っちゃうし、初めてスタバのダブルショットを海外で飲んだ時に、「この作られつくした不自然な増粘性。このコーヒー風味の合成飲料はスゴイ!」と拍手しちゃった。
たかが「似非コーヒー」に素直な期待なんてハナからムリムダ。「作りモノ」競走の出来不出来は、レギュラーコーヒーとは全く別の次元だと捉えています。

そういう意味では、じょにぃさんの「薄ーい珈琲=似非鴛鴦茶」は、決して「邪道」とは言い切れませんよ。だって「作りモノ」じゃないもん!だいたいエラそうな顔してコーヒーを語る輩ほど、自分の好みじゃない手法や香味を「邪道」呼ばわりする性向にある(あ、私もだけど…)。そんな客観性に欠けた説教なんて無視無視。ちっともコーヒーが美味くないもん!(笑)

No title
じょにぃ URL [2012年06月04日 17時29分] [編集]

帰山人さん。
そうですね
確かに作りものですから
それにうだうだ言っても仕方がないですね。

以前、帰山人さんにもお話した
フードコートの渋みの話。

先日行ってきました。

私のブログに書いたのをコピペします。

作り方は変わっていませんでした。
冷蔵庫から作り置きの珈琲を取り出し
カップに注いで計量
それをフライパンに移し替えて
煮沸。
(沸騰はしていない。
フライパンの側面に触れてジュっと音もしない。)

カップにお湯を入れて温める。
『砂糖とミルクお使いになりますか?』
トレイに律儀にカップと砂糖・ミルクを置く
トレイを持ってテーブルに座る。
おや?
ふわっと珈琲の香りがした。
飲んでみる。
以前の苦味と渋みだけの
只々苦い飲み物だったのが
軽く酸味が感じられる。
ある意味珈琲の味がする。
おやおや?
今度は飲めるぞ。
普通においしく頂けました。
残念な事が一つ
珈琲にプラスチックポットの香りが付いてしまっていた事
飲むたびにプラスチックの香りが。。。
作る人によるのか?
改善されたのか?
単純にタイミングか?
真偽は如何に?ですが
一つ言えることは
前よりは
おいしくなっていたと言う事です。

店員さんもギャルから
ふくよかな20代後半の
女性に変わっていました。

結論は
前より良くなっていました。

でも一杯ずつ入れてほしいですねぇ。

to2:じょにぃさん
帰山人 URL [2012年06月04日 18時45分]

じょにぃさん、「前よりはおいしくなっていた」「前より良くなっていました」…それはヨカッタ。ヨカッタけれども、「淹ておき冷蔵コーヒー温め直し」というオペレーションに変化はなかったワケですね。つまり一杯淹てにはしない…まぁフードコートなら仕方がない、とも思えます。
やはり、総じて一般論で言えば、この問題は実際の抽出やサーブの技術的課題よりも、ブランドや謳い文句と実際のコーヒーの品質水準とのギャップという課題が残ることになりそう…
飲み手が(商品水準の)何をどこまで求めるか?は千差万別ですが、その求める水準は場所やブランドに影響される…そういう意味では、このフードコートコーヒー問題は、缶コーヒー「作りモノ」問題と同じ課題を抱えている、ともいえます。

No title
ちんきー URL [2012年06月05日 20時09分]

そう言えば以前コーヒー豆の価格が高騰したって言われてましたが何故か缶コーヒーに関しては値上げとかの話聞きませんでした。
実際のところ値上げとかの話ってあったんでしょうか?
あれだけ巷で騒いでいたのに不思議です・・・
(何かカラクリが!)

to:ちんきーさん
帰山人 URL [2012年06月05日 21時46分]

えーと、ちんきーさんがいう「コーヒー豆の価格が高騰」で値上げってのは昨2011年のことですネ(インスタントコーヒーもスタバをはじめチェーン店のコーヒーも…)。実は、それ以前の2008年に缶コーヒーも10円値上げを発表していたんですよ。でもデフレが止まらず景気は悪くなる一方なので断念しました。その状態が続いているので、今もガマンしているのでしょう…値上がり後もスタバでコーヒー飲むのが富裕層で、缶コーヒー10円値上げについていけないのが貧乏人…そーゆーレベルの国に成り下がったんです、日本は…将来、自販機の缶コーヒーが130円に、500ml飲料が160円になったら本当の景気回復?あ~情けない。え?今でも自販機で買わない?買うならディスカウントの…社会経済では情けない選択ですが市民生活としては正しいです^^;;

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Author:kisanjin
鳥目散 帰山人
(とりめちる きさんじん)

無類の珈琲狂にて
名もカフェインより号す。
沈黙を破り
漫々と世を語らん。
ご笑読あれ。

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