夢幻のスペシャルティ

ジャンル:グルメ / テーマ:コーヒー / カテゴリ:珈琲の記:2012 [2012年04月12日 05時00分]
某年某月某日、「スペシャルティコーヒーだけの店」と謳っている某コーヒー店を訪ねてみた。どうせ、《スペシャルティコーヒーのもつ本来の旨みや香りは、プレス式で味わえ》とかいう店だろうと、高をくくって暖簾をくぐってみると…そこには予想を超えた「スペシャルティ」が…
 
 【ごあいさつ】
  ようこそ。スペシャルティコーヒーだけの店にお越しくださいまして、ありが
  とうございます。当店において提供しておりますコーヒーは、当店独自の
  基準で「スペシャルティ」と判断したものであります。原材料となるコーヒー
  生豆に関しまして、必ずしも、品評会やオークションで上位を占めたもの
  や、なにがしかの認証を得たもののみを、使用しているわけではありませ
  ん。また、当店ではコーヒーの生豆を焙煎して、さらにそこから抽出した
  後、お客さまがカップからコーヒーをお飲みいただく段階で、「スペシャル
  ティコーヒー」である、とお勧めできるものを提供させていただいておりま
  す。また、お客さまが当店のコーヒーを召しあがった後に、「このコーヒー
  は今まで体験したことのない美味しさである」などと思っていただければ、
  ユニークな香りや味でひと時を楽しく過ごせたことによって、当店のみなら
  ずお客さまにとっても本当に「スペシャルティ」なコーヒー体験と自負して
  います。
 
 【コーヒーを愛好している、コーヒーに興味がある、一般のお客さまへ】
  当店では、原材料となるコーヒー生豆の種類が一定しておらず、またその
  種類も少ない場合がございます。また、同じコーヒー生豆であっても、焙
  煎する際に焼き具合を2段階或いは3段階に分けて、お客さまにお選び
  いただく場合がございます。さらに、各々に焙煎したコーヒーに合わせて、
  コーヒーを抽出する際に、使用する器具はもとより、挽き具合や量、水質
  や温度、濃度などを変えさせていただいております。こうした当店からお
  勧めするところと、お客さまのお好みとをすり合わせながら、「スペシャル
  ティコーヒー」をご一緒に楽しんでいただければ幸いと存じます。何なりと
  気軽にお話しくださいませ。
 
 【コーヒーに浸り、コーヒー世界に潜っている、マニアの方や業界人の方へ】
  当店では、原材料のトレーサビリティなどに留意してもおりますが、例えば、
  シングルエステートと限定しておりませんし、栽培品種やスクリーン、ブラ
  ンド、さらに認証の有無なども限定しておりません。ただ、可能な限り生産
  地の方々と交流を重ね、市場の流行などに惑わされ過ぎないよう、消費
  地の良き仲間やお客さまと共に、栽培からカップまで「スペシャルティコー
  ヒー」をご提供し楽しめる努力を、続けております。時として(或いはかな
  り多くの場合)、いわゆる「こだわりの店」や「スペシャルティコーヒーの店」
  とは異なる提示やサービスに面食らうところもおありでしょうが、悪しから
  ずご了承ください。
 
ム、かなり意表を突かれる謳い文句ではあるが、それなりの視座と自負がある店のようだ。幸い人好き喋り好きそうな雰囲気を発散させている店主だったので、メニュー表を眺めて感じた疑問をぶつけてみる…「マスター、『焼き味噌っぽい香ばしさ』とか『茗荷のような苦味』とか、そんな表現ばっかり書いてあるけれど、どうして?」の問いに、「あ~、どうしてSCAAフレーバーホイールなんかを基にした香味表現にしてないかって? あのね、ワインがどうとかナッツがどうとか言っても、それ自体が日本人の生活から遠いモノだったら理解し難いでしょ。ウチじゃなるべく身近な食材や物に例えた表現で説明するし、それ以外でも、お酒好きのお客さんにはお酒の種類や銘柄に、お花好きのお客さんにはいろんな花の匂いに、例えて説明しているワケよ。ドイツ語で医学習ったからって、日本人の患者にドイツ語で説明するお医者さんじゃダメでしょ。言語の共通化って意味を捉え間違わないようにしないとネ」と…。
 
「じゃ、『スペシャルティコーヒーだけの店』なのに、鴛鴦茶がズラズラ並んでいるのは?」…「あ~、それは私の遊び心から始めたの。インドとかケニアとかインドネシアとか、コーヒー産地の近くで風味に特徴のある紅茶を栽培している場合があるでしょ。そしたら、ユニークなコーヒーと紅茶を産地の特性で合わせたりぶつけたりして、スペシャルティの鴛鴦茶を作ってみたら面白いんじゃないか、と思ったワケ。紅茶マニアのお客さんにもウケて、最近ではコーヒーオンリーのメニューを水色(すいしょく)で選ばれたりしてるんだ。面白いでしょ」
 
ウム、このコーヒー店、かなりイケるなぁ。「スペシャルティコーヒー」のあり方の一つを観た。
 
     ダメスペ
 (※残念ながら、本記事の某店は私の脳内でしか営業していない夢幻の悪戯である)
 
コメント (16) /  トラックバック (0)

コメント

teaR URL [2012年04月12日 23時37分]

メチャクチャ名店じゃないですか。本気でいますぐ行きたいと思っちゃいましたよ。騙されました…。

to:teaRさん
帰山人 URL [2012年04月12日 23時50分]

ね、イイ店でしょ(teaRさんは「行きたい」と言ってくれると思ってました:笑)。でも、充分にありえる店だと思うんだけどなぁ…

No title
シマナカ URL [2012年04月13日 09時07分]

恥ずかしながらボクもだまされた。たしかにこれは名店(迷店? それとも冥店?)だな。店主が饒舌すぎるところが難といえば難か。

to:シマナカさん
帰山人 URL [2012年04月13日 14時46分]

へへ、騙されてもらえたとはコリャ愉快であります。
で、「饒舌すぎる」?いいんですよ、饒舌で。そりゃ「腹に膨るところを寡黙に通す」やせがまんの「美」を愛する気持ちは察しますが、額に皺寄せて苦虫噛み潰したような顔で淹れられた珈琲が上等とは言い切れませんから…だいたい珈琲店主なんてぇのは、大衆食堂や居酒屋のオヤジと同類の人品が求められるものだと、私ゃ思ってます。

No title
じょにぃ URL [2012年04月13日 21時35分] [編集]

帰山人さん。

正直、私がやりたいと思っている事をやっている
お店が既にある!!とドキッとしましたが
帰山人さんの悪戯でほっとしました。

そして、私の考えていることも
一応、間違っていなかったんだなと思いました。


先日、
エチオピアンカフェ ルーシー行ってきました。

コーヒーセレモニー面白かったです。

やはり3杯目がちょっと薄めでしたが
酸味が和らぎ苦味がちょうど良い感じになって
私としては好みでした。

相席したカップルが面白くて
彼女さんがべっぴんさんで
コスプレ姿に目のやり場に困りました(^^;)

楽しい時間はあっという間にすぎました。
なんだかんだ3時間半いました。

面白い経験でした。

to:じょにぃさん
帰山人 URL [2012年04月13日 23時47分]

じょにぃさん、「やりたいと思っている事」やってください^^/
そして「ルーシー」へ行きましたかぁ…面白いよねぇ、アノ店。パッと見の空間はフツーに俗っぽいのに、時間が過ぎると何か独特の空気感がある…エチオピアというより亜空間って感じ?(笑)

漂う
珈子 URL [2012年04月15日 23時09分] [編集]

「消費地の良き仲間やお客さまと共に」の消費地の仲間はアマチュアのとっては開拓しようがない世界です。この頃「珈琲難民」だな~と思ってしまいます。どこに原因があるのかコーヒーの本質はどこにあるのか訳が分からず茫洋とした中で佇んでいる感覚です。こんな喫茶店があったら疑問はすぐ解決しそうで、」ふわふわ感は無くなり地に足がつけられるのですが…。味の表現について・・幸いと言うかお菓子の原料を多く味わいますので違和感が無いです。層か~日本的な表現も良いですね。

to:珈子さん
帰山人 URL [2012年04月16日 00時28分]

表白された「本質が見えない」という課題は、私も感じます。敢えて言えば、今までのプロ連中の示し方がマズイのだと思います。欧米の先進性を追うのも悪くはありませんが、ロクに検証も噛み砕きもしないでウケウリの論ばかりを垂れ流して「本質」を見えなくしてきたのでしょう。香味の表現に関しても、「日本的な表現」に固執するつもりもありませんが、実際に自分が日常で食べたこともないチョコレートや果実の味に譬えて悦に入っているプロの連中の話なんぞアテになるものですか!これからは賢い(=アホなプロをアテにしないという意味)アマチュアが日本のコーヒーの「本質」を突いていくべきだと私は思っています。いや、この仮想珈琲店のようであれば、そこにはプロもアマも超えた「本質」論があるのだと思いますヨ^^/

No title
cocu-coffee URL [2012年04月17日 16時06分]

「だいたい珈琲店主なんてぇのは・・・」そうなんですよね。たかがコーヒー屋ごときが気取るなよって思います。だから自分達コーヒー屋に「本質」なんて求めないでください。(笑)

to:cocu-coffeeさん
帰山人 URL [2012年04月17日 18時26分]

オヤ?コーヒー屋に「本質」を求めるな、って開き直った!(笑)
大丈夫、私ゃ「コーヒーの本質」を探そうって吼えているだけですから…商売とか経営とかに軸を置いたコーヒービジネスの本質探しなんて、センセイ面した連中にまかせます^^;
まぁ親しいコーヒー屋にも「諸悪莫作・衆善奉行」を掲げる方もいるし、それを否定するつもりもないけれど、私ゃ飲みたいコーヒーを求めるためならば、気取らない極悪人で世に憚ってやりたい^^/

No title
cocu-coffee URL [2012年04月20日 11時25分]

twitterの件はご存じだとは思いますが、自分としても個人を攻撃する様な(そのつもりはなかったのですが)twitterの使い方に問題があったと反省しています。それで、この記事をあらためて読み返してみたのですが、商売として成り立つかは別にして、自分にとっては理想的なお店だと思いました。若手のSCAA主義のコーヒー屋と付き合いが無いので、彼らの思いや考えをよく分かっていなかったのですが、スペシャルティー自体かなり曖昧な定義しかされていないし、香味の基準もはっきりせず、業界の思惑に左右されているであろうコーヒーを「これが本物のコーヒーだ!」と信じている姿勢にとても驚いたし怖くも感じました。自分には業界を引っ張っていく様な力は無いので、地域に愛されるコーヒー屋に成るべく頑張ろうと思っています。今回は自分が撒いた種とはいえ多少ヘコむところもあり、帰山人さんの意見を伺いたくてコメントしてみました。人は自分に都合の良いことしか聞き入れようとしないので、ひよっこの自分に遠慮せず(しないとは思いますがw)辛口の意見をもらえたらありがたいです。

to2:cocu-coffeeさん
帰山人 URL [2012年04月20日 18時19分]

では、率直に(笑)…まず、Twitterの使い方や反響云々に関しては、総じて何ら問題ない、と思っています。「物言えば唇寒し秋の風」を「雉も鳴かずば撃たれまい」や「口は禍の門」と同義とまで通解するのはいき過ぎでして…たまたま既に風が吹いているところで口を開いただけのこと。そういや、「沈黙は金」的なフォローも受けていたようですが、言おうが言うまいが風は吹いていますから(笑)
>信じている姿勢にとても驚いたし怖くも…
私も「怖い」に近しい違和感を覚えていますが、驚きはしていません。定義が曖昧で香味の基準もはっきりしていないものを「これが本物のコーヒーだ!」と信じて喧伝する…これ、深煎りネルドリップ守旧派の連中にも当てはまるでしょ。Tambeさんが言うとおり、対立は繰り返されるものだと思っています。
>人は自分に都合の良いことしか聞き入れようとしない
まさにその通りで、要は「話の中身自体の是非」という合理論じゃなくて、「気分や耳障りの是非」という感情論にぶつかったワケで…それが証拠に「オレらの想いを否定するな」という感情論はあっても、「オマエの反SCAA主義はココを誤解してココは間違いだ」という反証は一つも出てきていない。
まぁ、率直に余分を重ねれば、cocuさんが伝えたかった内容に関しては、「言葉が過ぎたんじゃなくて、まだ足りなかった」とも言えるかも…相手(の流行や通俗に流されている状況)を「短慮」とか「無思慮」とか徹底して本質論で叩く、コレを自身で怖がっていてはいけません(あ~、これはタカ派?である私の言い方であって、ハト派?のやり方はノンタンにでも訊いてください^^;)。

No title
teaR URL [2012年04月27日 20時30分] [編集]

エチオピアンカフェルーシーなんてお店があったんですね。これはすぐに行かねば。

to2:teaRさん
帰山人 URL [2012年04月27日 23時33分]

あれ?↓コレ読んでいなかった?すぐに行って!^^/
http://kisanjin.blog73.fc2.com/blog-entry-405.html

teaR URL [2012年04月28日 23時23分] [編集]

なぜか読んでないようで…。行ってみます!そしてブログネタにします!

to3:teaRさん
帰山人 URL [2012年04月29日 00時07分]

>行ってみます!そしてブログネタにします!
そりゃ楽しみだ^^/
ルーシーのセレモニーがエチオピアのコーヒーセレモニーを代表しているとは言えない(エチオピアでは部族・地域・状況によってコーヒーセレモニーに多様性があるし、おそらく歴史的にも変容してきている)。けれども、あの店の醸し出す亜空間的な雰囲気は、(流行しているのに意味不明な巷の「スペシャルティ」コーヒー店とは異なって)斬新な「スペシャルティ」だと思います。

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Author:kisanjin
鳥目散 帰山人
(とりめちる きさんじん)

無類の珈琲狂にて
名もカフェインより号す。
沈黙を破り
漫々と世を語らん。
ご笑読あれ。

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