俗物の勘違い

ジャンル:グルメ / テーマ:コーヒー / カテゴリ:珈琲の記:2012 [2012年03月16日 23時00分]
理に落ちるどころか理を解することができない、趣意をはかりかねるコーヒー本に遭う。
  俗物博士
 
『我が輩は珈琲博士』(廣瀬幸雄:著/時鐘舎:刊)
 
《我が輩は「珈琲博士」である》(p.14)、だが《私は「博士」というより「コーヒー馬鹿」です》(p.15)?? 《いつかは本物の「ノーベル賞」も夢じゃないと思うくらいです》(p.15)、しかし《立派な賞よりも、身近なところで皆さんの役に立てる「町のエジソン」でありたい》(p.148)??? ここまで首尾一貫せず整合性を欠く言述、呆れが礼に来て宙返りしても足りない。
 
『工学屋の見たコーヒーの世界』(いなほ書房:刊)という旧著もある廣瀬氏、本書でも盛んに工学博士や工学屋と自称して「科学者」の顔を売るが、どうにも腑に落ちない。
 《コーヒーには何と、「がんの原因を消す」作用があることも分かって
  きました》(p.14)
 《ガスの直火による焙煎機は、豆の表面から火が加わるため…一方、
  遠赤外線を使えば内側からも熱が伝わり、豆全体が均一に焼き上
  がることになります》(p.34)
これら読者の曲解を誘う安直な表現に鑑みても、医学や物理学にも通じた科学者の言説とは到底考え難い、それは化学・薬学・生理学・農学などについても同様である。破壊工学が専門の「博士」廣瀬氏であるが、コーヒーのサイエンティストとは呼び難い。
 
《日本コーヒー文化学会という団体があります。…肩書に興味はありませんが、私が学会に入るまで、そして副会長になるまでには、これまた紆余曲折がありました》(p.126)と記し、コーヒーの賞味期限に関する見解を主張し続けたために、《学会で冷遇される日々が続きました》(p.128)と 著者は述べているが、この点に関しても納得はできない。発足当時(1993年12月4日)の「日本コーヒー文化学会」は、常任理事の一人である田口護氏(珈琲屋バッハ店主)を「工学・焙煎委員長」に据えていた。ここから派生した暫定の委員会活動は、その後(1998年6月5日)に分科会制度に改組され今に至る。
 《平成10年度総会内容決まる。…各委員会内容報告、分科会(社会
  人文科学部会・生産流通部会・地域文科[ママ:化の誤り]部会・コー
  ヒー工学部会・焙煎抽出部会)》 (1998年3月30日付発行 「日本
  コーヒー文化学会ニュース」第13号p.3)
1995年に日本コーヒー文化学会に入会した廣瀬幸雄氏は、《学会で冷遇される》(?)とみるや威迫の共を商業団体である全日本コーヒー協会に求めて金沢大学「コーヒー学入門」を開講(1997年2月1日~)し、日本コーヒー文化学会の理事職を得ている。この間に、田口氏を委員長とする旧来「工学焙煎委員」の称に廣瀬氏が異を唱え続け、自らに「工学」の名乗りを拘泥したこと、上記の「コーヒー工学部会」という名称が証左。この「工学」名称は消滅で妥協され、再決定時に「コーヒーサイエンス委員会」(廣瀬派)と「焙煎抽出委員会」(田口派)に改組された。「肩書に興味はありません」と言い切るが、権勢と肩書を欲さないではありえぬ騒動ではないだろうか、馬鹿馬鹿しくも笑止の沙汰。
 
本書『我が輩は珈琲博士』を通読すると、著者が自らの性格を奔放や率直とし高尚なるユーモアと言いたいところは、軽率と粗雑と低俗なジョークの勘違いであろう、と解する。ジャケットカバーには、クドい肩書に加えて「笑いと科学のスペシャルブレンド」とあるが、エスプリの効かない下卑た笑いは周囲にウケない。(私自身もその種に類すると認めた上で)俗物は俗物らしく「低俗と非科学の虚勢ブレンド」とでも素直に吐露すべきと思う。
 
コメント (2) /  トラックバック (0)

コメント

No title
シマナカ URL [2012年03月18日 08時41分]

いつもながら小気味いいねえ。珈琲博士だかエジソンだか知らないけど、いろいろ観察すると俗臭芬々たるところが確かにあるな。ボクは権威というものは認めるけど、権威主義は大きらい。H氏の場合、どう見たって衣の下から鎧が透けて見えるよね。

to:シマナカさん
帰山人 URL [2012年03月18日 23時32分]

あんまり阿呆阿呆とカラスのように鳴くと、顰蹙を買うかもしれない、カラスは口ゆえに憎まる、と言いますから。俗臭は観察済みなんでしょ「カラスを食べる会」で…本に地名と主宰が明かされていたのでスグわかった。困ったもんだ…カラスを鵜に使うがごとしですよ、日本のコーヒー界も^^;

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鳥目散 帰山人
(とりめちる きさんじん)

無類の珈琲狂にて
名もカフェインより号す。
沈黙を破り
漫々と世を語らん。
ご笑読あれ。

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