3月11日のコーヒー

ジャンル:グルメ / テーマ:コーヒー / カテゴリ:珈琲の記:2012 [2012年03月08日 06時00分]
コーヒー愛好家にとって、3月11日が“Johnny Appleseed Day”であることを忘れてはならない。アメリカ独立戦争の誘因となり、また独立後のアメリカ合衆国がコーヒーの消費大国になっていく歴史の端緒は1773年である。この年にイギリスが制定した‘Tea Act’(茶法/茶条例)、これに反発したアメリカ植民地の‘Boston Tea Party’(ボストン茶会事件)である。これら事象の翌年に世に生まれ出たJohn Chapman(ジョン・チャップマン)は、アメリカ合衆国の建国初期に開拓が進み始めたオハイオやインディアナ界隈でリンゴの種を植え回り、ジョニー・アップルシードと呼ばれた実在したアメリカンヒーローである。後にHenry Howe(ヘンリー・ハウ)の著作で残された逸話によれば、ジョニー・アップルシードはコーヒー豆用の麻袋を外套衣として着用し、壊れた鉄製の粥鍋を帽子代わりに被り、裸足で町を歩き巡ったという。その真偽は別としても、Emanuel Swedenborg(エマヌエル・スヴェーデンボリ/スウェーデンボルグ)思想の熱心な信奉者であったアップルシードは、スウェーデンボルグの神学を布教するために開拓地を巡り回ったのである。「コーヒー麻袋を着た男」アップルシードの忌日(実際には3月18日死亡?)と伝え拡がった3月11日は、アメリカ合衆国での記念日の一つである。
 
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スウェーデンボルグは、18世紀当時においてヨーロッパ有数の思想家兼科学者である。
 《…あの方は肉は決して食べられず、朝食としてはミルクとコーヒーをとられる
  のみで、午後はいくらかお菓子をそえて同じものをとられ夕食は食べられま
  せんでした…あの方はミルクとコーヒーの中に砂糖を沢山いれられることと、
  砂糖の沢山入ったおいしいお菓子が非常にお好きで、砂糖の精が自分を養
  つているんですよと言われました》 《かれは老年になり胃弱に悩まされてい
  るため、過去十二年間コーヒーとビスケット以外はほとんどいかような食事
  もとつていないと、一七七〇年にタツクセン将軍に語つた。かれはコーヒー
  を非常に好み充分砂糖を入れ、これを日夜凡ゆる時間に飲んだ。かれはま
  たかぎ煙草を非常に愛好した…》 (『スェデンボルグ―その生涯、信仰、教説』
  /ヂョーヂ・トロブリッヂ:著/静思社)
 《…彼は書斎で自分のコーヒーを作り、それに大量の砂糖をたっぷり加え,昼
  夜いつでも飲んだ。…目が覚めると直ぐに書斎へ行き、燃え残り火の上にま
  きや束で購入しておいた二、三片の樺(かば)の樹皮を置いた。そこからコー
  ヒーを作るための火を素早く起こすためである。コーヒーはミルクもクリーム
  もなしで飲んだ。その後直ちに著述のため机に着いた…》
  (『スヴェーデンボリ叙事詩』/C・O・シグステッド:著/あおい出版)
「砂糖入りコーヒーで生き続けた男」スウェーデンボルグは、イギリス議会による茶法の制定の前年(1772年)にロンドンで死亡した。2年後(1774年)、アメリカのマサチューセッツ州レミンスター(当時イギリス領)に「コーヒー麻袋を着た男」アップルシードが誕生。茶法制定からボストン茶会事件に及んだ社会情勢と共に、スウェーデンボルグの神学的魂魄も大西洋を渡ったのであろうか、また、それはコーヒー愛好の意思も付していたか?
 
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ジョニー・アップルシードの伝承に題名を因んだ士郎正宗のSF漫画『アップルシード』は、後に動画(OVA・映画・TVアニメ)化されたが、記念日「ジョニー・アップルシードの日」は先んじて別の漫画作品に作用が働いたようである。宮崎駿の漫画がアニメージュ連載の途中で動いたのである、映画『風の谷のナウシカ』は1984年3月11日に劇場で公開。
 《その者青き衣をまといて金色の野に降り立つべし。
  失われし大地との絆を結び、遂に人々を青き清浄の地に導かん》
スウェーデンボルグとアップルシードの深い思想がナウシカに届いたのか否かは存知ない、アメリカ合衆国や日本も含めて不快なコーヒー消費国が腐海に覆われ始めているかも…
 
コメント (4) /  トラックバック (0)

コメント

No title
ちんきー URL [2012年03月10日 07時18分]

「アップルシード」って実在の人物のニックネームだったとは・・・
アニメ見た時「何故アップルシード?」って思いましたが謎が解けました。

ナウシカも影響受けているとは・・・
勉強になりましたm(_ _)m

to:ちんきーさん
帰山人 URL [2012年03月10日 19時01分]

>ナウシカも影響受けているとは・・・
いや、そこは本気(マジ)で捉えないでくださいヨ^^;
「ナウシカ」に影響を与えたのはリチャード・コーベン、メビウス、ルネ・ラルーあたりでしょうヤッパリ。もっとも宮崎駿が漫画「ナウシカ」を描き始めたのは、映画仕事がうまくいかないウサ晴らしだと私は捉えているので、ありったけの恨み辛みが生み出した奇跡の傑作(漫画はネ)でしょう(笑)

No title
珈子 URL [2012年03月10日 21時46分] [編集]

スウェーデンボルグがコーヒー愛好家であったとは・・・初めて知りました。フ~ムしかも海を渡ってもしかしたら生まれ変わっていたかも・・・とは?何となく信じたくなりますね。そうすると生まれ変わって自分のことを布教していたのだったら執念ですね。帰山人さんのお話はオモシロイです。

to:珈子さん
帰山人 URL [2012年03月10日 22時07分]

世の中エエ加減なもんで、スウェーデンボルグがコーヒー好きだったことも、アップルシードがスウェーデンボルジャンだったことも、あまり知られていません、というか意図的に伏せられている^^;
まぁ私自身は転生も神仏も信じていませんが、「話がオモシロイ」といっていただければ、冥利に尽き、天に昇ります…あ、こういう言い回しはバチ当たりか(笑)

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鳥目散 帰山人
(とりめちる きさんじん)

無類の珈琲狂にて
名もカフェインより号す。
沈黙を破り
漫々と世を語らん。
ご笑読あれ。

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