コーヒーの楽典

ジャンル:グルメ / テーマ:コーヒー / カテゴリ:日本珈琲狂会 [2012年03月04日 06時00分]
CLCJ推薦図書 その6
『コーヒーの店 -大阪-』 キダ・タロー:著
 
 
コーヒー店のガイドブックに求められる正真の実用性、それは掲載された店の数でも無く、委曲を尽くした説明でも無い、「読み物」としての成熟の度合。『コーヒーの店 -大阪-』は、徒(いたずら)な羅列を越えて、コーヒーの愛好と企画の熱情を感じさせる「読み物」として、間然するところがない。
 
 
【地域が好い】
 
「大阪の食いだおれ」と言われるも飲食店の総数が際立って多いわけではない大阪府であるが、喫茶店に限れば(日本政府統計調査による)その事業所の数は長らく日本全国の第一位である。喫茶店やコーヒー店の歴史や市場を語るに、東京を主要としたガイド本ばかりが氾濫し横流し続ける状況にあって、他の地域を歯牙にもかけずに坦坦たらない大阪のコーヒー店を眈眈と巡る本書、ガイド本を要する地域において燦然と輝く。
 
 
【文句が好い】
 
本書で紹介された計154店のうち、著者が直に取材した90店のみ評価の★(星)が付される。「コーヒーの味」満点4星は6店に限られ、平岡珈琲店に《古墳から出土したような手鍋、はかり》、丸福珈琲店に《あのピリピリッと舌をさす懐かしい味》、有り体(てい)にズバリと評して実に清清しい。変哲も無い「味が濃厚」などの表現は登場しない、「美人」「べっぴん」は頻出する、簡潔に図星を指す文句こそが満点4星。
 
 
【姿勢が好い】
 
《…不愉快なモロモロの店…すべて削除しました…まだ疑いをすててはおりません》(はじめに)、《レジの娘の厚化粧。無表情。活気のない店内…笑顔でサービスされたコーヒーがどんなにすばらしいか…なんで常識ができまへんねやろナ!》(あとがき)。コーヒー自体の品質や技法に関する言及は少ないが、コーヒーを商う「店」に求められる前提を徹底して崩さない気骨、本書に貫かれている姿勢は至当にして妙妙である。
 
 
発刊の同年にコーヒー業界が定めた「コーヒーの日」と異なり、業界外でショパンと呼ばれたがる「浪花のモーツァルト」キダ・タローは真にコーヒーを愛好して本書を著した。音楽はショパンに届かぬキダ・タローだが、『コーヒーの店 -大阪-』は規律あるリズムでテンポルバートを勧めるコーヒーの楽典。
 
 
(注:推薦は主宰・帰山人の独断による。他の会員に罪は無い)
 
コメント (2) /  トラックバック (0)

コメント

No title
ナカガワ URL [2012年03月07日 20時21分]

紹介されてる本は、全部蔵書なのですか。どうやって探すのですか。しかし、カワグチヨーコに煎じて飲ませたいです。効かないかな。

to:ナカガワさん
帰山人 URL [2012年03月07日 23時19分]

CLCJ推薦図書は(今までのところ)全て蔵書、探さなくても手元に転がっています。で、煎じ飲ませてADME(アドメ)を試したくても対象に吸収能力がありません。たぶん、つける薬もないと思います。

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Author:kisanjin
鳥目散 帰山人
(とりめちる きさんじん)

無類の珈琲狂にて
名もカフェインより号す。
沈黙を破り
漫々と世を語らん。
ご笑読あれ。

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