「わや」な映画

ジャンル:映画 / テーマ:映画感想 / カテゴリ:観の記:映面 [2011年11月03日 22時30分]
「わや」という日本語をナゴヤ弁であると信じているナゴヤ人は意外と多いようだ(ここで言うナゴヤ〔弁/人〕とは、狭義には名古屋城下旧市街域を指すが、広義には尾張地方全域を、さらに超広義には中京圏全域を指す)。収拾がつかない無茶苦茶な状態を示す「わや」は、実際には北海道・東北・関西・山陽・四国・九州の各一部地域でも日常で使用される多広域の方言であり、決してナゴヤ特有の方言では無い。「わや」の用例に強いてナゴヤらしさを求めるならば……《まぁ1本、まぁ1本と、たいがいにしとかにゃいかんよ。今晩のおかずが、「わや」んなってまった。カマクラさんもいかんわぁ~、うますぎるもん》(ナゴヤご当地で長らく有名な「星S印の鎌倉ハム」のKウインナーのテレビCF)…などと「台無し」つまり「事態の推移が予定や期待通りに進まない」場合に使うケースが多い? 新たなナゴヤご当地映画を観たところ、期待通りに進まない当に「わや」な作品だった。
  枉惑!
 
『WAYA! 宇宙一のおせっかい大作戦』 観賞後記
 
【わやだて~】
題名通り作品中で出演者に「わや」だとか「おせっかい」だとか何度も言わせているが、ナゴヤ人は意外と(シャイとかじゃなくて、具現の器が小さいという意味で)控えめか? と思わせるほど、破壊力のある行動も危機的な状況も起こらないのでシラケルばかり。《気をつけたのは、開かれた物語にすることです。内輪受けや地元ネタは極力なくし…名古屋の外のお客さんにも感情移入してもらえるような構成を考えました》(映画パンフレット「古波津陽監督インタビュー」)というなまじな配慮が裏目に出たか、「わや」でも「おせっかい」でも高揚を感じられない中途半端さ、ナゴヤの外には余計に通じないナ。大言壮語がギャクになっていないタイトル、ナゴヤが矮小に感じられて「わやだて~」。
 
【わやだがね~】
「愛知県出身」を頼りに選んだのか? スピードワゴンの井戸田潤と小沢一敬、SKE48の矢神久美と松井珠理奈、いずれも大根というより役者になっていない、その下手を悲しむよりも観ていて怒りが湧く。服部公とルー大柴、2人だけがマトモな存在感を放つ(但しルーの喋る京都弁?は取って付けたようでイタダケナイ)。矢崎滋やモロ諸岡は今作品ではパッとしない印象を受けた、役を作ろうともしない井戸田潤の芝居を舐めた真性な軽薄さに引っ張られたか? 映画の中で扱われる劇中劇について「劇(げき)って言うな、芝居(しばい)と言え」という旨のセリフが2度ほどあったが、メインキャストが「芝居」どころか茶番「劇」にもならない演技力では、もう映画自体が「わやだがね~」。
 
【わやだがや~】
芝居小屋「開慶座」を商店街の一画に再建するシーン、やれ本格的な設計だ大工だと作品中で騒ぐ割には、その工事は梁に上っている者も、その下にいる者(子ども達も含む)も、全員ヘルメット無しで作業する…どんな理由をつけても違和感が残る場面だ。城をダンボールで築こうが(古波津陽監督は、同じ愛知県ご当地映画『築城せよ!』を前作)、芝居小屋を廃材で作ろうが、建設現場のイロハを無視では「わやだがや~」。
 
  枉惑! (1)
【枉惑だがや~】
新美南吉作の童話「二ひきの蛙」を底本にした劇中劇「対決トノサマ蛙」、この芝居で下駄屋のシゲさん(矢崎滋)と役者のノブさん(ルー大柴)が仲直りするクライマックスが同時に映画のクライマックスにもなるワケだが、そこに興奮を感じられないのはナゼであろうか? 互いに引退を考えている、シゲさんの属する商店街もノブさんの属する大衆演劇も、往時の勢いを失った寂れゆく世界である。にも関わらず、本作品はその凋落衰微を直接に語らない。企画元が円頓寺商店街の街おこし有志である限りは、《『WAYA!』はとにかく前に未来に向かって突き進んでいくタイプの映画》(同前「古波津陽監督インタビュー」)にならざるを得なかったのだろうが、宿怨を越えて歩み寄る話に寂れた背景論を欠いては厚みの無いものになるのは当然であろう、「枉惑だがや~」。
 
  枉惑! (2)
ナゴヤの円頓寺商店街界隈を舞台にした映画は、昨2010年の『歪屋』(ひずみや)(森零監督作品)に、今2011年の本作『WAYA! 宇宙一のおせっかい大作戦』が続き、次にも新たな映画の企画が進行しているらしい。……《まぁ1本、まぁ1本と、たいがいにしとかにゃいかんよ。ご当地映画が「わや」んなってまった。ナゴヤの皆さんもいかんわぁ~、浮つきすぎるもん》…などということにならぬように、今後の展開に期待したい。
 
 ※結び一文が説教臭い「二ひきの蛙」は好きになれない童話であるが、今般
   ばかりは、私か映画関係者か、いずれ力(りき)み過ぎた方に良い道話に
   なる、とも感じられる。
   「よくねむったあとでは、人間でも蛙でも、きげんがよくなるものであります」
 
コメント (16) /  トラックバック (0)

コメント

No title
ナカガワ URL [2011年11月04日 03時56分]

内田樹の「うほほいシネクラブ」面白かったです。帰山人さんに似てないかしら?

笑いました
珈子 URL [2011年11月04日 07時05分] [編集]

ハハハ
もう一本もう一本のコマーシャルにかけたのが面白くて笑っちゃいました。

記事とは関係なくてごめんなさい。やっぱりコーヒーの事なんですが・・・・。インドモンスーン程ではないんですが白っぽくなった豆が1ハゼから2ハゼがすぐおこるというびっくり体験をしました。これはどういうことでしょうか?また適切な焙煎方法がありましたらご教授下さい。
よろしくお願いします。

to:ナカガワさん
帰山人 URL [2011年11月04日 17時51分]

内田樹氏は名だけ知っていて触れていない存在です。あ、『うほほい』は映画本3冊目、1冊目は「いなほ書房」だったんだ。…論評の切り口が似ているのはナカガワさんの方じゃない?私ゃあんな偉丈夫な文は書けませんよ…「少しだけ足りない」んじゃなくて「全く足りない」^^;;

to:珈子さん
帰山人 URL [2011年11月04日 18時46分]

>白っぽくなった豆が1ハゼから2ハゼがすぐおこる…
インドモンスーンが白っぽくて大きく膨らんでいるのは独特な曝気発酵プロセスによるものですが、他の豆が白っぽいのは、 1.精製~出荷の過程で乾燥が(過剰に?)進んで含水率が低くなった 2.保存の過程で乾燥が(過剰に?)進んで含水率が低くなった(オールドクロップやオールドビーンズ) 3.乾燥~保存の過程で水にさらされた(雨にあたったetc.) などが考えられます。巷では(1や2のような)乾燥が進んだ豆は、1ハゼと2ハゼの間隔が短い、とか言われていますねぇ。3の理由などで乾燥度合が揃っていない豆の場合は、焙煎プロセスが豆ごとにバラついて1ハゼと2ハゼが重なったりすることもあります(少量焙煎ほど生じ易い)。
総じて、1ハゼと2ハゼの間隔を空けたければ、通俗ですが「火力を下げる」対処が主でしょうか。但し、私は1ハゼと2ハゼの間は「○分(○秒)が適切」とかいうことばかりに惑わされない方が良いと思っています。仮に焙煎プロセスの全体で焙煎度や仕上がり具合が思い通りであるならば、1ハゼ2ハゼがつながってしまってもイイ。逆に(ハゼの間隔はどうであれ)焙煎が適切じゃない場合は、ハゼ以外の要素を気にかけて「>適切な焙煎方法」を追うべきかと…。
珈子さんが出遭ったケースはどうでしょうか?ビックリだけならば気にしなくて良いと思いますし、焙煎結果に不満があるならば、まずその豆の状態に見合った(元々設定する)火力の調整でしょうかねぇ…

No title
ナカガワ URL [2011年11月05日 00時20分]

たしかにそう。なんだか自分と波長の合う書き方で、いいような悪いような----思わず興奮してしまいましたです。最もわたしのはストレス解消なので当然なりふり構わず居丈高なんですが。腰を低くして「少し足りない」風にしようとするのって、ヘルニアになりそう。それとわたしも「いなほ----」は気になりました。Dr.イグノーにテレフォンショッキングしたりして。

to2:ナカガワさん
帰山人 URL [2011年11月05日 14時21分]

Dr.イグノーの映画は進んでいるのだろうか?いや、完成を待っているわけじゃないが^^;…まぁコーヒー関係よりも発明品である「低温サウナよもぎ蒸し」とか「スチームドライトイレ」とかの映画であってほしい…テレフォンショッキング、お愛想で「えぇ~!」と言ってあげるから早いとこDr.ナカマツにでも回してくださいっ!

No title
珈子 URL [2011年11月05日 17時06分] [編集]

ありがとうございます。
多分1か2だと思います。
飲んでみるとさほど嫌な味ではありません。
バリですが、良くあるアラビカ神山ではなくマンデリンに近いような豆で独特の香りがします。
初めての香りです。香りか臭いか良く分かりませんが不味くはありません。
冷めたのも良い酸味が感じられてこれはこれで2ハゼがすぐ来ても良しとしました。
なかなか来ないマンデリンより気分は良いです。
賑やかでした。
またまた今日のタンザニアは1ハゼが来ませんでした。ハゼの音にはすごく気を使っているので聞き逃すということはありません。
いろんな豆があるのですねー!
1ハゼがないなんてこれも初めてです。

to2:珈子さん
帰山人 URL [2011年11月05日 17時46分]

>1ハゼがないなんて…
音がしない(or小さい)ことはあります。この点に関しても、「パチパチ」しないと気がすまない派の方々は「何かが間違っている」と大騒ぎする傾向にありますが、ハゼ音は豆の種類や状態、焙煎環境によって大きく変化するので、音の大小や有無が焙煎の適切性や仕上がった旨さを規定するとは言い切れませんね。
ハゼ命!のコーヒー屋さんには黙ってブルボン・ポワントゥを渡して煎ってもらいましょう…1ハゼが来ないので、クズ扱いするかもしれません…で、ポワントゥと明かして態度が変わったら、そのコーヒー屋の方がクズです(どこまで意地悪なんだ)^^;

No title
珈子 URL [2011年11月05日 18時50分] [編集]

エ~!
ポワントゥの生豆が手に入るなんてさすがに帰山人さんです。一度飲んでみたいとUCCのネットにトライするのですがいつでもありません。
バーゲンの競争にも負けますがここでも競争には勝てません。もうあきらめました。お値段も高いですし・・・。ハゼ音はなんだか単純にうれしいです。アマチュアですね~!
焙煎の経験がそう無いものですからあれこれ起こることにいちいち反応しています。
おおむね面白がったり、なぜだろうと浅いところで不思議がったりのちっともへこまない焙煎三昧です。いろいろありがとうございます。

No title
teaR URL [2011年11月05日 20時32分] [編集]

へー、ポワントゥって1ハゼこないんですね。初めてしりました。

これまた関係ない話ですが、やっと麻生珈琲店に行きました。カップさすがにいいですね。そういうものの良さがわからない感性の鈍い人間なのですが、惹かれてしまうものがいくつかありました。デザインなんかも面白いものあるし。

一番関心が深かった暗黒茶なんですけど、ちょうど店主がいなかったのですが(そんなのアリ?)、オープン時から働いているというおじさんに聞いてみたところ、そんなの知らないとのこと。いやー残念です。暗黒茶ってどういうものなんですか?教えてください!

to3:珈子さん
帰山人 URL [2011年11月05日 21時35分]

いや、私だってレユニオン島産ポワントゥを自在に入手できるワケではないですよ^^;
何にしろどんな豆にしろ自分で焼いて、面白がったり不思議がったりすることはイイですよね~。おカネ絡みの定石や再現性を否定はしませんが、それらに縛られない面白さはアマチュア焙煎の冥利だと思いますよ。

to:teaRさん
帰山人 URL [2011年11月05日 21時59分]

ポワントゥのハゼに関しては、川島さんの『コーヒーハンター』でも《一つ一つの細胞が非常に小さく硬いために「爆ぜ」がほとんどない》(p.159)と記されています。但し、細胞とハゼの関係に関しては、Tambeさんですら明言していないので、
http://d.hatena.ne.jp/coffee_tambe/20100529
まだまだ課題は残っているのですが…
 
>やっと麻生珈琲店に行きました。
それはそれは…見事な透かし絵が底にあるコーヒーカップも見ましたか?デザインや絵柄もさりながら、作陶技術の意地を感じます。麻生コレクションの価値は底知れない!(たぶん私も把握しきれていないw)
…でゴメン、暗黒茶は私も良くわからんシロモノなんですよ、こればっかりは麻生さん捕まえて訊いてください^^;

No title
teaR URL [2011年11月07日 01時28分] [編集]

暗黒茶は謎なんですね。てっきりコーヒー点てている方が麻生さんかと思っていたら全然違いました…。

メニューを見る限りは紅茶も中国茶もそんなにこだわりを感じるものではありませんでしたが、実際に話を伺ってみたいですね。

透かし絵が底にあるカップ…みてません。というかショーケースに並んでいるカップの底を見ることはできませんでした。昔は違う感じだったんでしょうか?

日本っぽいデザインのものがいくつもありました。全然よくわかりませんが、これらは日本で作られたものなのかなぁと思いながら見てました。標さんのカップより好きですね。

to2:teaRさん
帰山人 URL [2011年11月07日 13時26分]

えーっと、お店のショーケースとは別に、店からちょっと離れたところに膨大なカップコレクションのある資料館があるんですよ。私は随分以前にうかがったので、当時と同じ状態で保管・展示してあるのかわかりませんが、その手の美術展に貸し出しきれないほどコレクションを有してみえますヨ。

No title
teaR URL [2011年11月09日 00時42分] [編集]

やっぱり別のところにあるんですね。そう聞いたつもりでいたのですが、店内に案内などもなく、勘違いかなぁと思ってしまいました。暗黒茶のこともあるし、また行くしかないですね。麻生さんはいついるんだろ…。

to3:teaRさん
帰山人 URL [2011年11月09日 22時28分]

そもそも麻生洋央『まぼろしの珈琲 サリサリコーヒー・ハロハロライフ』を読んで麻生珈琲店に行ったのに、本の話はふっとんでしまった…私もまた行くしかないかなぁ^^;

この記事にコメントする

トラックバック

この記事へのトラックバックURL
http://kisanjin.blog73.fc2.com/tb.php/397-faf1b536
編集

kisanjin

Author:kisanjin
鳥目散 帰山人
(とりめちる きさんじん)

無類の珈琲狂にて
名もカフェインより号す。
沈黙を破り
漫々と世を語らん。
ご笑読あれ。

10 ≪│2017/11│≫ 12
- - - 1 2 3 4
5 6 7 8 9 10 11
12 13 14 15 16 17 18
19 20 21 22 23 24 25
26 27 28 29 30 - -
Powered by / © Copyright 帰山人の珈琲漫考 all rights reserved. / Template by IkemenHaizin