プアオーバーなコーヒー3

ジャンル:グルメ / テーマ:コーヒー / カテゴリ:珈琲の記:2011 [2011年10月22日 23時00分]
休日の昼下がり、3杯目のコーヒーを喫しながら買い置いてあるムックのページを捲る。『Casa BRUTUS(カーサブルータス)特別編集 COFFEE BOOK』(マガジンハウス:刊)だ。惹句「コーヒーをもっとおいしく飲むために。」、胸中で途方もない違和感が膨らんでくる。
  poorover Mook
 
過去記事「プアオーバーなコーヒー」では月刊誌のコーヒー特集に対して批評を加えた。対象とした『Casa BRUTUS』No.129 2010年12月号(マガジンハウス:刊)の案内は、
 《新世代のコーヒーブームはサードウェイブ・コーヒーと括られます。…コーヒー
  豆に徹底的にこだわって、果実のように楽しむ。ローストは浅め煎りで、苦味
  よりも酸味が決め手。そして、エスプレッソよりドリップがトレンドとなってきま
  した。そんな新時代のコーヒーブームを徹底的に解明します。いま、コーヒー
  を語ると[ママ]ことはライフスタイルの流行を語ることのようです》 (2010年
  11月11日メルマガ)
と言っていたが、あれから約1年近く過ぎて「プアオーバー」の語は流行の気運が弱い。
 《USA「第3世代」の‘Pour-Over’(プアオーバー)はどうであれ、日本を含め他
  国のコーヒーが「大惨世代」の‘Poor-Over’(プアオーバー)になるのは願い
  下げである》
こうした評が届いたとも思わないが、「大惨世代」の顕現が予想に遅れることは喝采だ。…などと憂慮が外れたことを喜んでいれば、再び臆面もないコーヒーのムックが登場、前述の月刊誌特集を再編集した『カーサブルータス特別編集 COFFEE BOOK』である。ページ構成を前後に入れ替えただけ、内容に改善も進化もない醜悪な出版物の類だ。
 
【Poor-Over その1 中途半端な最新情報】
「Fresh Coffee for New Generation ベイエリアで沸騰する、第3世代のコーヒー熱。」 (12月号pp.28-35/ムックpp.6-13)の中で、SIGHTGLASS COFFEE(サイトグラスコーヒー)は「出来上がっていく様子まで、オープンにして楽しむ店。」と紹介されている。だが、《今の形態で仮営業が始まったのは9月だ。「…願わくば、年内にすべてを仕上げられればと思っていますが……」》という文まで同じ、つまり時の流れが止まった店? これに、経時を無視して単に流用しているだけ、という反駁は適当でない。なぜならば、《焙煎機はプロバット。閉鎖されたドイツの焙煎所に何年も放置されたままだった機械を見つけ、分解修理したり足りないパーツを自作して使えるようにした…》というキャプションは同じまま、店が出来上がっていく進捗を見せたかったのか、ページ全面写真が新たに差し替えられているのである…そう、焙煎機が全く写っていない新たな写真に!
 
【Poor-Over その2 飲んでいないおすすめ】
「お取り寄せで感動の1杯を探せ!!」の中で、日本各地の店からコーヒーを取り寄せて、関根伸慈氏と来栖けい氏がブラインドテイスティングした様子と評価が紹介されている。だが、月刊誌12月号(pp.70-73)では12店のコーヒー全てに関根氏の表現した香味特性が記され、空疎とはいえ両氏の総論もあることに比して、ムック(pp.90-95)では店が増やされて30品のコーヒーを並べているものの、テイスティング評は抹消された。ムックで増やした18品を改めてティスティングする機は省かれたらしい、そのために前の12品ももろとも犠牲に、凡愚で陳腐な案内に堕して取り寄せる気も抹消された!
 
【Poor-Over その3 抽出不全の直伝メソッド】
「サードウェイブ・コーヒーってなに?」(12月号pp.36-41/ムックpp.14-19)の最後で、FOUR BARREL COFFEE(フォーバレルコーヒー)による直伝簡単メソッドと称して、HARIO V60ドリッパーを使った「プアオーバー」が紹介されている。だが、ハリオ自体の推奨メソッドでは《粉は少しゆすって平らに/中心よりうず状にお湯を注ぎます》としていることと違って、直伝メソッドでは《中央に凹みを作っておく/回さずに中央めがけてお湯を注ぐだけ》としていて、《ドリップに施した螺旋状の溝が、まんべんなく豆にお湯を行き渡らせるので、ケトルを回す必要がない》という抽出不全も必至の珍説を披露。他方、手順説明(写真解説6)では《凹み部分を目指してまわすようにお湯を注ぎ》とも記され、理解不能で難儀なこと、「誰が淹れてもおいしいペーパードリップ術」は笑止。こうした表現の稚拙はムック化に際して改善されたのか…否、完全なる流用である!
  poorover Mook (1)
 
それにつけても、論や動向としての「サードウェイブ」は肯定も否定も自由であろうが、これを内容が改悪され退化した醜悪なムックで連声に煽られると、商魂のみに盲従するコーヒー関連の出版界(の一部)に憂慮と煩悶を覚えてしまう、また「返してこい!」。USA「第3世代」の‘Pour-Over’(プアオーバー)はどうであれ、日本のコーヒー本は大半が‘Poor-Over’(プアオーバー)に堕し続けている、悲惨な状態にもう懲り懲りだ。『カーサブルータス特別編集 COFFEE BOOK』は「コーヒーをもっとまずく飲むため」本、そんな世迷言をつぶやきながらムックを閉じると、傍らのコーヒーもすっかり冷めて…
 
コメント (8) /  トラックバック (0)

コメント

そこまで怒らなくても・・
nontan URL [2011年10月23日 10時46分] [編集]

いつもながら意見が過激ですね。小心者のぼくでは絶対に言えないです。本でコーヒーのことが特集されるだけでもぼくてきにはいいことだと思います。興味を持った人たちがコーヒー屋に来た時に正しい方向に導くのがぼくたちコーヒー屋の仕事だと思うんで・・・。ちなみに・・・ランブルのミル・・・すごいですよ。

to:nontanさん
帰山人 URL [2011年10月23日 14時08分]

ど~も、まぁ「意見が過激」というよりも、いつもながら「表現が過剰」という感じじゃないかと…確かにコーヒーに「興味を持った人たち」を「正しい方向に導く」のが「コーヒー屋の仕事」だとは思いますが、だからといって思慮や精度に欠けた駄本の氾濫を許してよい理由にはならない、と私は思います。「コーヒー屋」と同様に著述や出版にも「プロ」としての気概も技量も必要でしょ?そもそも商売人であることを「技量のプロ」と自ら勘違いしている一部の「コーヒー屋」を出版界が崇める過ちが、こういう粗雑な駄本を濫造することになるワケで…
ランブルのグリッドミル、未見なのでイマイチどうスゴイのか把握できていません…着想?性能?成果?また、いろいろと教えてください^^/

No title
じょにぃ URL [2011年10月23日 16時40分] [編集]

とりあえずガンダム関係が出れば何も考えず買っていたのが今は珈琲にシフトしているじょにぃでございます。
何か見たことが表紙だなぁとは思っていいたもののとりあえず買って読んでみると・・・・
前のとおんなじ???と思うくらいの内容でしたね。
どこかの雑誌に前回の内容に加えさらに50%増量みたいな感じでこの雑誌が紹介されてましたけど
ちゃんと読む気になれずにさらっと目を通してめでたく肥やしとなりました。
内容が良くも悪くも情報収集の為に世に出る書物は購入するようにしているじょにぃではありますが
これは流石に如何な物かと考えてしまいますね。
『そんなのおかしいですよカーサブルータスさん!!』
嗚呼、じょにぃ青春のVガンより。

No title
ナカガワ URL [2011年10月23日 21時06分]

コーヒー屋に来た時に正しい方向に導く----なんて素晴らしい話でしょう。いつかそのお店にお訪ねしたいと思います。
ただキサンジンセンセの指摘の半分は、プロであるはずの編集者がその職務を果たしていない、そこに憤っていると思います。盲人と聾唖者の会話みたいですね。編集者はコーヒーを知らず、コーヒー関係者は編集を知らず、みたいな。
世の中には、焙煎機を持って自家焙煎している「元」編集長もおりますから、せっかくコーヒーを広めるために出版物を作るなら、ヘレン・ケラーのようなコミュニケーション方法(指で「ウオーター」みたいな)を身につける方がよいような。さもなければ、その伝説の「焙煎する編集長」いや「編集する焙煎士」か、を呼んでくるとか----。

to:じょにぃさん
帰山人 URL [2011年10月23日 21時45分]

ども、じょにぃさん。50%増量だったのは掲載店の数くらいで、「雑誌」としての完成度は前の月刊誌の方がはるかに勝っていましたねぇ(ワザワザ特集ロゴとか作っていたところは感心していたのになぁ…)、結果同じ880円出させて価値は50%減量のムックでした。まぁ、この商魂醜悪な騙し売りパターンは「一個人」とか他でもやっているわけで…『とうにおかしくなっている!』^^;

to:ナカガワさん
帰山人 URL [2011年10月23日 22時03分]

え?ナカガワさん、フレーバーのナカガワさんは未訪ですか?まぁ確かに2人のナカガワさんのお店には、色の違いはあっても導く技量は充分にありますからねぇ、ええ、それは私も認めます。
私の憤りを別の言い方にすれば、「(コーヒー屋も出版屋も)商売なんだから売るのが前提とはいえ、やり口がカッコワルイ」というコトです。この憤りを表するに「やっぱ同業だから」と(は言わないけれど本音はコレで)憚る者までナデ斬りにするので、私は嫌われるワケですが…でも止めない^^; 2人のナカガワさんは笑っていてくだされ。

No title
cocu-coffee URL [2011年11月13日 11時46分]

サードウェイブ、シングルオリジン、プアオーバーこれらの言葉はちゃんと消費者の耳に届いているんですかね?
SCAJもバリスタ選手権も身内だけがはしゃいでいる学園祭みたくなっているように僕には見受けられますが・・・。

to:cocu-coffeeさん
帰山人 URL [2011年11月13日 22時02分]

>…消費者の耳に届いているんですかね?
届いていないでしょうねぇ^^;スペシャルティもサスティナビリティも届いちゃいないんですから…まぁ、児戯といったら子供に失礼な「ごっこ」と化しているSCAJやJCBをいくら改善しても「届く」ようにはならないでしょうがね。ナゼって「ごっこ」をしている蒙昧なカフェや珈琲屋は、缶やインスタントが消費者のコーヒーだってことを理解していないし、それらに向ける言葉を持っていない。ま、蒙昧な連中を取り除く他に処置無しです。

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鳥目散 帰山人
(とりめちる きさんじん)

無類の珈琲狂にて
名もカフェインより号す。
沈黙を破り
漫々と世を語らん。
ご笑読あれ。

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