ニュー・シネマ・パラダイム

ジャンル:映画 / テーマ:映画感想 / カテゴリ:観の記:映面 [2011年09月18日 23時30分]
ノスタルジーに満ち満ちた映画“Nuovo Cinema Paradiso”の中で映写技師は諭した、「ノスタルジーに惑わされるな」…その箴言についに応えた? 出色のイタリア映画に出合う。
  nuovo cinema paradigma
 
『人生、ここにあり!』(Si Può Fare) 観賞後記
 
原題の“Si Può Fare”(やればできるさ)は、作品中の「協同組合180」のモデルとなったポルデノーネに実在する「ノンチェッロ協同組合」のスローガンであった、と映画のエンドロール邦訳で読んだ。しかし私は、‘Si Può Fare’という言葉は本作品の主人公ネッロを主体にしている、と捉える。「やればできるさ」は、ネッロが自らを奮い立たせる言であり、ネッロのズレた熱血漢ぶりを示した題である。“Si Può Fare”はあくまでネッロが主人公、「もし労働組合の鼻つまみオヤジがキチガイ協同組合のマメジメントに挑んだら」映画だ。
  nuovo cinema paradigma (1)
 
『人生、ここにあり!』は映画になっている本物の「映画」である、そこがイイ、オモシロイ! 残念ながら、公式サイトのコメントはオモシロクナイ…「生きてることのすばらしさが実感できる!」(香山リカ)とか言われても、絶望で死を選んだ登場人物もいる。「今後の社会の在り方に気づきをくれる素敵な映画です」(松野明美)とか言われても、今後の映画の作り方を気づくのは容易ではない。ヒューマニズムだかドグマティズムだか判別できないような、そんな手前勝手な「人間讃歌」は映画に気が違う、キチガイ評は棄て置けばよい。本作品を観て真っ先に讃辞を送るべきは、スタッフとキャストに対しである。構成と展開、演出と演技…(完全に失敗している邦題を除いて)極上の娯楽コメディ映画、スバラシイ!
  nuovo cinema paradigma (2)  nuovo cinema paradigma (3)
 
俗気も楽しいエピソードの一端は、組合の男どもがECの助成金で娼婦を買いに行く話だ。
 《…私にしっくりする精神科医像は、売春婦と重なる。そもそも一日のうちにヘ
  ヴィな対人関係を十いくつも結ぶ職業は、売春婦のほかには精神科医以外
  にざらにあろうとは思われない。…売春婦は社会が否認したい存在、しかし
  なくてはかなわぬ存在である。さらに、母親なり未見の恋びとなりの代用物
  にすぎない。精神科医の場合もそれほど遠くあるまい。》
  (『治療文化論』中井久夫:著/岩波書店同時代ライブラリー)
事実でもあった助成金による売(買)春の挿話は、「やってもできない」が「やればできるさ」という、好ましくも深い意義を感じさせる。精神障害者もまた「社会が否認したい存在」であり「なくてはかなわぬ存在」であろうか。余談ではあるが、「売るのはイイが買うのはダメ」などという徳義を装う低劣なフェミニストは真のキチガイであり、このキチガイどもに対して180号法(バザーリア法)を適用せずにマニコミオに封じ込めるべきだと、私は願っている。いずれにしても、「協同組合180」の創出したビジネスは、ネッロとフルラン医師、さらには精神障害者らに、ある意味「一日のうちにヘヴィな対人関係を十いくつも結ぶ」職を与えた。フランコ・バザーリアの‘La Libertà è Terapeutica’(自由こそ治療だ)という言は真理か?
  nuovo cinema paradigma (4)
 
『人生、ここにあり!』を観て「やればできるさ」と思った者には、アルフレードの箴言を贈る。
  《人生はお前が見た映画とは違う。人生はもっと困難な物だ。》
  (『ニュー・シネマ・パラダイス』:1989年)
『人生、ここにあり!』は、‘Nuovo Schiena Paradiso’(新たな裏の楽園?)を描いた「もしキチ」映画である。その複雑な背景を散りばめつつ埋めこんで「映画」にした巧妙は、「ニュー・シネマ・パラダイム」(‘Nuovo Cinema Paradigma’)とでも言えようか、見事。
 
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コメント

No title
ナカガワ URL [2011年09月19日 08時26分]

おそらくモデルになった人たちも観たら笑い転げると思います。わたしは鏡の中の自分の姿や、いくつかの振る舞いを想い出すたび、自分で自分に笑い転げます。泣きもしますけど。足の血栓で松葉杖になったときの思い出は、感謝と笑いがあるだけです。「お熱いのがお好き」のラストシーン、ジャック・レモンが男だと打ち明けると求婚していた紳士は「完全な人間なんていないさ」みたいなことを。

to:ナカガワさん
帰山人 URL [2011年09月19日 18時03分]

不通の家族を描いた『普通の人々』でジャド・ハーシュの演じる精神科医が言います、‘You're here. You're alive. Don't say you don't feel that.’(今ここに生きていることを感じとれ)。知性体の殺戮を描いた『インデペンデンス・デイ』でジャド・ハーシュの演じる主人公の父が言います、‘Nobody's perfect.’(完全な人間なんていないさ)。ユダヤ人のパクリには無理矢理に笑っておこう…連中、不完全なんだもん^^;

No title
ジョージ URL [2011年09月21日 06時54分]

お早うございます。
先ほど、テレビでそちらの台風情報を見ました。
かなりの水害が出ているようですが帰山人さまのところは大丈夫でしょうか?
静岡県もこれから直撃するみたいですが、ご無事をお祈りいたします。

to:ジョージさん
帰山人 URL [2011年09月21日 22時27分]

気に掛けていただきありがとうございますm(_ _)m
って、返信遅すぎだ…台風とっくに過ぎちゃった^^;
無事で~す。島田の皆様も無事であったなら好いけれど…

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鳥目散 帰山人
(とりめちる きさんじん)

無類の珈琲狂にて
名もカフェインより号す。
沈黙を破り
漫々と世を語らん。
ご笑読あれ。

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