夢と未来はあるか?

ジャンル:グルメ / テーマ:コーヒー / カテゴリ:珈琲の記:2011 [2011年08月18日 06時00分]
主催の名目は、一昨年「珈琲工房ひぐち」・昨年「コーヒーサロン」(東京大学池本研究室)
と移り今年は「日本コーヒー文化学会」、実質は「珈琲工房ひぐち」樋口精一氏が主導する
晩夏のコーヒーイベント。3年連続で中部学院大学各務原キャンパス大講義室へ向かう。
 
2011年8月17日
「コーヒーの夢と未来を語ろう」
 
 夢?未来? 夢?未来? (1) 夢?未来? (2)
開会待ちに毎度振る舞われるコーヒーの試飲…「エスメラルダ・ゲイシャ」!豪儀だ(笑)。
 
 
1.川島良彰氏の講演 「コーヒーの未来を切り拓く ~サステイナブルコーヒー~」
 夢?未来? (3) 夢?未来? (4) 夢?未来? (5)
題目通りならば察せられるだけ飽くという予想(?)を裏切り、今般の川島氏講演は秀逸。
「不味いコーヒーが氾濫している」理由の例として「ブルマンを海抜で区分する」都市伝説が
まかり通るコーヒー業界と切って捨て、昨今のゲイシャ流行を「私にとっては珍しくもないが、
勝手に品種がひとり歩きしている」と諌め、「エスメラルダ農園でもJaramilloとそうでない所
では全く味が違う」と断言し、今2011年のコーヒー価格高騰を騒ぐ日本のコーヒー業界に
1978年(1977年の誤り?)高騰時と為替換算でキロ当たり1850円対510円と比較し
「この間に業界がコーヒーの価値を上げるどころか下げてしまった」と示し、「高価格で産地
が潤っているか?」では「生産者の裏切り」(ブラジル生産者に不作と断られて高価格でも
別の豆を買い付け直そうと行けば同じ生産者だった)もあると暴露し、「ワインとコーヒーの
違い」に関して「日本のコーヒー業界で世界中各国バラバラな品質基準を全て知っている
人間なんてボクも含めて1人もいない」と吐露し、「どの抽出方法が一番おいしいかなどと
決めつけてはいけない」話で「(ミ・カフェートでは)何でドリップなのか、フレンチプレスじゃ
ないのか、とバカな質問をした奴がいる」と怒り、高品質豆が採れるといわれる同じ農園・
同じ畑の中でも「コーヒーの品質ピラミッド(グランクリュ/プレミエ/ハンターズ/一般流通/
コマーシャル/工業用)が存在することを理解していない人が多い」と非難し、「喫茶店でも
レストランでも自家焙煎でもコーヒーがまずかったら大声で『不味い!』と言え」と明言し…
正鵠を射た提言の連発炸裂、コーヒーハンターの面目躍如たる講演ぶりに陶然とした。
 
 
2.平田大輔氏の講演 「バリスタを目指す若者たちへ ~エスプレッソの歴史と抽出理論~」
 夢?未来? (7) 夢?未来? (8)
題目通りならば斬新な識見を得るという期待(?)を裏切り、今般の平田氏講演は庸俗。
エスプレッソの歴史に関しては、大陸封鎖という凡常の背景論に限られ、抽出高速化の
需要理由も不明瞭。氏の「エスプレッソの歴史は、たいしたことはない」という自嘲の冗句、
それは、統一王国成立とサビ病発生(共に1861年)からエチオピア戦争疲弊後にバール
始原とロブスタ種発見(共に1898年)を経た因果の歴史を語っていないからで、他でも
ない「イタリアに」エスプレッソが生まれ流行った理由に欠けた内容、「たいしたことはない」。
マシンの歴史に関しても、ベゼラ~パボーニ~イリー~ガッジャ~ファエマという演繹的な
技術改良による体系的変化には一切触れられず、やはり内容は、「たいしたことはない」。
エスプレッソの抽出理論に関しては、「望ましいタインピング圧は抽出圧とほぼ同値になる」
というもっともらしい説明を披瀝していたが、(デヴィッド・ショーマーの理論などとも乖離し)
物理的に同値である必然性が理解できず、「覚えておくとラッキー」と私は思えなかった。
 
 夢?未来? (6) 夢?未来? (9) 夢?未来? (10)
ナゼか♪パイプラインをBGMにバリスタ(水谷恵美子氏と山田貴久氏)による実演、コレを
目当てと思われる参加者からラテの仕上がる都度に拍手が起きるが、アートの精度低い。
会場から体験者が前へ呼び出されてレクチャーが始まる…私は会場を出て喫煙休憩へ。
 夢?未来? (11) 夢?未来? (12)
 
 
3.パネルディスカッション 「コーヒーの夢と未来を語ろう」
 夢?未来? (13) 夢?未来? (14)
司会の樋口氏が参加者からの事前質問を汲み、川島氏・平田氏に坂柳猛興氏を加えた
パネリスト(?)が答える形式。某有名「バリスタ」の店に行きカウンター前で砂糖を用意
して待ち構えていたのに「お席でお待ちください」と言われた実体験を例にイタリアとUSA
(シアトル系)との差異を問う、私の質問も採り上げられた。平田氏が「質問者はバンコで
飲むエスプレッソこそ正統と思っている方」と見抜いた上で、「シアトル系では急いで出す
という概念が無い。JBA認定などを除きバリスタとは日本においては単に『エスプレッソ』
を抽出する人です」と明快に回答され、私の(あぶり出したかった)目的ほぼ果せて満悦。

後段に樋口氏から「サスティナブルコーヒーについて」水を向けられ、川島氏は「日本サス
テナブルコーヒー協会を設立しても『いくら儲かるんだ?』という質問しかしない業界人。
アメリカ企業(のCSR)は卸したコーヒーを1週間後に店が使った分だけ請求し、残りは
ホームレスに無償で提供する。日本の慈善家たちは『かわいそうな』生産者の話はするが
かわいそうなコーヒー屋さんの話はしない。かわいそうな人が作ったコーヒーだから買って
あげなきゃ?はダメ」と言い切り、「今後注目の産地は?」に「ハイチ、そしてイエメン」と
明かした…最後まで(SusCAJ理事長というより)コーヒーハンターが斬り開いて、見事!
 
 
「コーヒーの夢と未来を語ろう」にも「このままでは衰退の一途をたどる」とみて立ち向かう
コーヒー愛好家、今般はその声に共感するところも多かった私であるが、果たして真に
「夢と未来を語ろう」と思える者はいるだろうか?そも、コーヒーに「夢と未来はあるか?」。
 
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コメント

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y_tambe URL [2011年08月19日 02時07分]

コーヒーには「夢も未来も」ないかもしれないけど、そんなあやふやなものにすがることなく、「現実と今」に向かい合い、突き進もうとする「意思と力」。レポートから垣間見えるコーヒーハンター川島氏の講演内容からは、それがはっきりと伺えますね。実に素晴らしい。

to:y_tambeさん
帰山人 URL [2011年08月19日 02時28分]

でしょでしょ。(最初の)講演後に川島さんから「どうでした?言い過ぎかなぁ」と問われて「いやいや、あれくらいガツンと言わないとわからないですよ、特に業界の方々には」と煽ってしまったのですが、でもコレも本音。今回のコーヒー「ハンター」、恰好好かったです!

No title
珈子 URL [2011年08月19日 08時45分] [編集]

一生懸命メモしなくても帰山人さんのブログを拝見すれば良し・・だったかな。とは言え、川島さんのお話はやっぱり「映画館で見る映画とDVD]くらいの違いで迫力でした。「飲食業界の5%の習慣」を知らなかったので長年何故美味しくないんだろうと思ってきたのが分かりました。不味い!と言わなきゃ・・と思いながら友人と待ち合わせするちいさなちいさな喫茶店で「この頃味が変わりましたね」と言えない私でした。
(私が気になる枯草臭が増えました)

to:珈子さん
帰山人 URL [2011年08月19日 16時30分]

珈子さん、やはりいらっしゃっていましたか^^ いや、視点や着眼点でメモや記事も多様になりますから、私の記事はその一端一角でしかありません^^; 街場の喫茶店のコーヒーは、今どんどん「不味い!」状態になっていますねぇ。1970年代後半のコーヒー価格高騰による状態と同じです…歴史は繰り返すというか、社会は学ばないというか^^; あの時、日本の喫茶店の黄金期は終わりました(喫茶店数のピークは1981年)、今度は何が終わってしまうのか…「不味い!」現実です。

No title
ナカガワ URL [2011年08月20日 09時51分]

コカVSペプシ的な香りも。「うまい」といってもらえる店を増やそうと努力してきた側としては、このロマンチックさは微妙です。日本人は、基本的にロマネスクな人たちと思いますし。SUSCAJはロマンチックを標榜しつつ、I博士の参加を考えるとロマネスクな団体かなと思っていましたので、理事長のロマンチック化は気になります。

to:ナカガワさん
帰山人 URL [2011年08月20日 16時45分]

ロマンチック化…そういう捉え方も否定はできないなぁ。でもまぁロマンチック化は、偶因論的に捉えればエゴイズムを呑んだ反動的保守化ともいえるワケで、ホセ川島個人はそもそもがロマンチストだと思っていますがね、私は。つまり偶因変化であって、根本に確固たるものがあるわけじゃない、主張にサスティナビリティがあるから理事長やってるワケじゃなさそうだし…SusCAJどころかグランクリュでさえ氏に似つかわしい道具立てだとは思っていない、というのが私の本音。だから言ったでしょ、「果たして真に『夢と未来を語ろう』と思える者はいるだろうか?」って…

No title
チッチョ URL [2011年08月20日 19時44分] [編集]

>最後まで(SusCAJ理事長というより)コーヒーハンター
どこまでも現場の人なんですね。だから、彼の話は面白い!

1970年代後半のコーヒー価格高騰は知りませんでしたが、友人が食事の度に「コーヒーが不味い」と言って、コーヒーカップに、ミルク、砂糖、塩、コショウ、などテーブルにある物を手当たり次第にぶち込んで抗議(?)してたことを思い出しました。そこまで過激なことは出来ませんが、せめて「不味い」と呟き、手を付けずに店を出ることにしています。

to:チッチョさん
帰山人 URL [2011年08月20日 21時20分]

チッチョさん、どうも。そう、メディア通しの話はイマイチだけどホセの生ばなしは面白いですよね^^
 
70年代後半にコーヒーが不味くなった異変、舌だけで言い当てたのが泰(タイ)チャンですよ! http://kisanjin.blog73.fc2.com/blog-entry-346.html 素晴らしい「ろくでなし」ですよね^^

No title
cocu-coffee URL [2011年08月30日 21時05分]

近場でこんな面白そうな講演があったんですね。
店を閉めて行けば良かった。
ひぐちさんは業界を良くしたいと思いが強い方なんでしょうか?一度、話をしてみたいですね。

to:cocu-coffeeさん
帰山人 URL [2011年08月31日 02時43分]

>業界を良くしたいと思いが強い方なんでしょうか?
そうですねぇ、篤志家といえるのか否かは私にはわかりません。でも、「自分が良いと思ったコーヒーをたくさん売ること」「それを促進するサービスは惜しまないこと」「それをジャマする規制や権威は嫌うこと」をハッキリと口にしてイヤミを感じさせない、思いいれの強い実直な方ではあると捉えています。樋口さんが思いいれた内容全てにまで私は賛同しませんが、気取ったケレンが無いところは稀少なコーヒー屋の一人だと思いますネ。

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鳥目散 帰山人
(とりめちる きさんじん)

無類の珈琲狂にて
名もカフェインより号す。
沈黙を破り
漫々と世を語らん。
ご笑読あれ。

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