ヒトラーの尻尾

ジャンル:グルメ / テーマ:コーヒー / カテゴリ:珈琲の記:2011 [2011年06月12日 06時00分]
ドラブノ(Drawno)はポーランドの西ポメラニア地方西ポモージェ県ホシュチュノ郡にある、美しい湖・川・湿原・森林に恵まれたDrawa国立公園管理本部が置かれている街である。
 
  Hitlers tail (3)   Hitlers tail
 
『スターバックス再生物語 つながりを育む経営』(ジョアンヌ・ゴードン+ハワード・シュルツ:著/徳間書店:刊)を読み終えて、私は「コーヒーは消えていた」で記していた「10年後のスターバックス創業50周年がパイクプレイス店のみであれ」を再び強く希求するに至った。
 
『スターバックス再生物語』によれば、CEO復帰を公表する2008年1月7日の夜明け前、ハワード・シュルツ氏はスターバックス「1号店」(?)の鍵を開け、暗闇の中で自らに誓う。
 《まず、物語として名高いスターバックスの歴史を守るためにCEOに戻るのでは
  ないということ。ルーツに戻るべきなのは本能的にわかっていたが、伝統が改
  革や革新への気風に結び付かなければ成功は望めない。》
まるで創業者気取りの誓いであるが、この日から25年4ヵ月前に新入マネージャとして雇用されたシュルツ氏に「ルーツ」を語る資格は無い。そもそもスタバが創業した店舗は別地であり、自らが買収したスタバの「1号店」で歴史や伝統を否定する立場に無いのだ。
 《次に、過去の間違いを責めないこと。それは非生産的な行為だ。また、売り上
  げや株価の下落が加速しているのを考えると、そんな時間はないはずである。
  スターバックスが直面している問題の責任は会長だったわたしにもあるし、失
  敗から学ぶこともできた。…戦略と戦術だけでは、この混乱を乗り越えること
  はできないだろう。とくにわたしがCEOに復帰する当初は。なによりも必要なの
  は情熱だ。》
過去の間違い、それはシュルツ氏がスタバを買収し変容させたことであろう、と私は思う。この後にスタバが2007年頃に直面した問題の責任は会長だったシュルツ氏に「こそ」あるのであって、「も」などと言い、株価の急落を理由に自らの間違いを「責めないこと」とする氏の浅薄な「情熱」が、この混乱を生じた最大の原因であったことは紛うこと無しだ。『スターバックス再生物語』は、かつては善良なるコーヒー店に後から揉め事の火をつけ、それを忘れたかのように鎮火に「苦労して云々」という、マッチポンプな自演乙話である。
 
『スターバックス再生物語』によれば、業績回復を公表する直前の2009年6月後半に、ハワード・シュルツ氏はルワンダを訪れて、コーヒー農家である女性の発言に驚いている。
 《「あなたは家族のためにどんな夢をもっていますか?」…「収入を得て、フリー
  ジアン牛を飼い、家族にもっとミルクを飲ませたい」。わたしも驚いた。…それ
  からムカムウィザに向かって言った。「そして、あなたのために牛を手に入れま
  す」》
シアトルに戻った氏がルワンダでの見聞を社内フォーラムで話した際、女性が挙手する。
 《「わたしはその女性に牛を買ってあげたいです」 リンダが牛を買う金を寄付し
  てくれた。しかし、それ以上のことが起こった。彼女の発言に刺激されて…ス
  ターバックスのパートナーとスターバックス基金は、フリージアン牛をルワンダ
  へ送る資金を寄付した。》
この(章題は「良心」という)話題を自ら‘Conscience’と語るところに、シュルツ氏と彼のスタバが非合理で誤っていることをハッキリと象徴している、と私は思う。ムカムウィザらルワンダ農家の望みは「(コーヒー生産など農業)収入を得」ることで「フリージアン牛を飼」うことなのだ。しかも現地では「牛」は歴史的社会的文化的経済的に特別で重要な意味を持つ所有財であり、シュルツ氏らの短慮な「良心」はこれらを破壊する可能性も否めない。憐憫と良識とを捉え間違える企業体が、「C.A.F.E.プラクティス」などを掲げる資格は無い。
 
『スターバックス再生物語』の原題は、“Onward:How Starbucks Fought for Its Life without Losing Its Soul”であり、CEOに復帰したハワード・シュルツ氏が社内に向けた「変革に向けたアジェンダ通信」の結語として示した言葉、「未来へ(オンワード)」による。‘Onward’を逆に読んだ時に、数百年に渡って隣国に侵略され続け、ナチスドイツに蹂躙され破壊された地名が表れることは、私にとって大変興味深い。そのナチスドイツは「第三帝国」を自称し、スターバックスはサードプレイス(第三の場)を提唱している…、果たして今後のスターバックスに未来はあるのだろうか? アフリカ諸国やアジア諸国を蹂躙する前に、シュルツ氏らは‘Drawno’に行って自らの「情熱」を冷ますべきであろう。
  Hitlers tail (1)   Hitlers tail (2)
 
 
『スターバックス暗黒物語』:夢想編
帰山人  「貴公、知っておるか? アドルフ・ヒトラーを」
シュルツ 「ヒットラー? 前世紀の人物ですな」
帰山人  「ああ。独裁者でな、世界を読みきれなかった男だ。
       貴公はそのヒットラーの尻尾だな」
シュルツ 「わたくしが?…情熱無き経営は株価低迷を生むだけです。
       それではスタバは他人の会社になります。ま、勝ってみせます。
       ヒットラーの尻尾の戦いぶり、御覧ください。
       わたくしはCEOで指揮をとります」
帰山人  「……ヒトラーは敗北したのだぞ」
 (某アニメ第40話のセリフに似ていると感じても気のせいです。エルメスのララァ以外の方には謝りません)
 
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コメント

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ねこや URL [2011年06月13日 19時45分] [編集]

えらいマニアックなオチをつけましたね・・・・(--)
わかる私もどうかしてますが。

to:ねこやさん
帰山人 URL [2011年06月13日 21時34分]

わかる方にはわかると思いますが、この後、帰山人はシュルツの陰謀にハマって光る宇宙に消えていくんですがね^^;
「我が忠勇なるスタバのパートナーよ。今や地球上の喫茶店の半数が我がスタバ侵攻によって消えた。この株価こそ我らスタバの正義の証である。決定的打撃を受けた旧来の喫茶店にいかほどの戦力が残っていようと、それはすでに形骸である。あえて言おう、カスであると。それら軟弱の集団がこのスターバックスを抜くことはできないと私は断言する。人類は、我ら選ばれた優良種たるスタバの情熱に管理・運営されてはじめて永久に生き延びることができる。喫茶店の無能なる者どもに思い知らせてやらねばならん、今こそ人類は明日の未来に向かって立たねばならぬ時である、と…ジーク・スタバ!」 まだ言うか…

No title
ナカガワ URL [2011年06月13日 23時46分]

なぜ、なぜ今になって現れたの?なぜあなたはこうも戦えるの?あなたには守るべき人も守るべきものもないというのに。私には見える。あなたの中には家族もふるさともないというのに。

ボストンのコーヒーコネクションはスタバに売却されたと記憶しています。儲けて事業そのものを売却するのはアメリカ人らしいかしら。再生して、ビル・ゲイツに売却とか。ディズニーが買収して、ジョブズがオーナーになるかも、といえば。

to:ナカガワさん
帰山人 URL [2011年06月14日 00時43分]

「奴との戯れ言はやめろ」・・・あ~ナカガワさんまで「そっち」で来ちゃったかぁ(笑) スタバ自体が売られる日が来ようがその時に誰が買おうが、あんまり深い関心はないのですがね。 ただシュルツ氏が“The Israel 50th Anniversary Tribute Award”を受賞するほどのシオニスト(Zionist)であることは事実なので、ジオニスト(Zeonist)を自認する私としては、どうしても北米シアトルにコロニーを落したくなっちゃうんですよねェ「…と、取り返しのつかないことを、取り返しのつかないことをしてしまった…」

No title
じょにぃ URL [2011年06月14日 10時02分]

帰山人さん。

ど~も

私はVがどんぴしゃです。

こんな本が出ていたんですね。
私はこういう本を読むと
『そーだったのか~』
と毎回単純にその本に流されてしまいます。

何も考えていない証拠です(^^;)

でも一回すべてを受け入れてその中から精査して
自分なりの答えを出すようにしています。

でも本だけだと表向きだけで

”本当はこーなんだよ”というのを知らないと

精査もできないかなと。

そうなってくると

帰山人さんのブログは

ほんとに勉強になります。

to:じょにぃさん
帰山人 URL [2011年06月14日 12時18分]

じょにぃさん、ど~も。
まぁ確かに私のブログでは意識的に「本当はこーなんだよ」をぶつけていることは事実なのですが、この『再生物語』に関しては「本だけ」読んでも「???」となるところはイッパイあって、そういう意味ではチョーわかりやすい本ですよ。
例えば、シュルツ氏がCEOに復帰する際に以前に自分が据えた前任者や幹部をクビにすることについては逡巡ぶりをページを割いてアーダコーダと語るワケですが、(VIAの初期技術を開発し自らの意思でとっくに退社していた)ドン・バレンシアに関しては退社の経緯は漠然と1行で触れているだけです。ドラマにならない役者(?)に対するこの温度差!こういう扱いを丸見えにしている本書の構成をして、「改革の苦闘を綴った迫真のドキュメント」(某大新聞の書評)などと評する方がよっぽど捻くれている…ように私には思えるんですけれど…
あ~何か言いたくないことがあったんだな…『再生物語』は人間の姑息なイヤラシサがわかりやすく語られていますヨ^^;

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鳥目散 帰山人
(とりめちる きさんじん)

無類の珈琲狂にて
名もカフェインより号す。
沈黙を破り
漫々と世を語らん。
ご笑読あれ。

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