しろコーヒー

ジャンル:グルメ / テーマ:コーヒー / カテゴリ:珈琲の記:2011 [2011年05月26日 06時00分]
「おもしろき こともなき世に しろコーヒー」 しろコーヒーは面白いコーヒーだろうか?
 
 
【白いコーヒー 1:UKの場合】
   しろ珈琲
コーヒーである。ミルク入りコーヒーやクリーム入りコーヒーのことをUK(イギリス)及びオーストラリアなどCN(イギリス連邦)の一部で“white coffee”(ホワイトコーヒー)という。“black coffee”(ブラックコーヒー)に対照する表現である。同じ英語圏にあってもUSA(アメリカ)では“white coffee”とはほとんどいわれず“light coffee”(色薄いコーヒー)や“coffee with milk”(ミルク入りコーヒー)と称されることが多い、面白くない白ける表現? オーストラリアやニュージーランドでは、近年“Flat White”(フラットホワイト)と呼ばれるカフェメニューが普及している。牛乳を使用したエスプレッソ系メニューの一つであるが、エスプレッソの上にキメの細かいスチームドミルクのみが入っているものを指している。さらに上部に泡状のミルクフォームがわずかでも盛り上がるカフェラテとは異なるモノと主張しているが、概念が先行して実体区分が追いついていない状況には鼻白むばかり。 
 
 
【白いコーヒー 2:レバノンの場合】
   しろ珈琲 (2)
コーヒーではない。白くもない。ほぼ透明である。ベイルートを主としてレバノン及びシリア近辺で“white coffee”(ホワイトコーヒー)といえば、“orange blossom water”(オレンジブロッサムによる着香水)を湯で割ったもの(好みで加糖する)を指す。現地では食後の消化促進やリラックス効果などを効用とした常飲品の一つである。透明な飲料が“white coffee”(ホワイトコーヒー)と表現される理由は不透明である。
 
 
【白いコーヒー 3:マレーシアの場合】
   しろ珈琲 (4)
コーヒーである。マレーシアのペラ州都イポーで誕生したといわれるコーヒー飲料に「怡保白咖啡」“Ipoh white coffee”(イポーホワイトコーヒー)がある。マレーシアで“kopi”(コピ)と呼ばれる一般的なコーヒーは、生豆を焙煎する際に大量のマーガリンと砂糖を加え絡めるという、極めて特徴ある過程で製造される。この油脂と砂糖が塗(まぶ)された焙煎豆は焦げた黒褐色を呈している。これに対してイポーコーヒーは焙煎する際に少量のマーガリンのみ(または少量の砂糖も)加えて製造されるため、一般的な“kopi”(コピ)よりも色が薄く(明るく)見える。つまりイポーホワイトコーヒーは相対的に「純正に近い」(?)ことを「白い」と表現したかったようであり、抽出された実際のコーヒー液は通常のコーヒー色である。何とも中途半端で皮相な白の主張だ。
 
 
【白いコーヒー 4:日本の場合の壱】
   しろ珈琲 (5)
コーヒーである。しかし、「コーヒーだけどコーヒーじゃない、はじめての味わい。」との不得要領な惹句。ボトル缶コーヒー『キリン FIRE ホワイトコーヒー』が2004年6月8日発売された。キリンビバレッジは「もっとまろやかに、もっとホワイトへ」と原材料に全粉乳・クリーミーパウダー・カゼインNaを加え、2005年5月31日リニューアル版を発売したが、2006年秋に生産を終了した。コーヒーであるのかないのか、謳い文句が煮えきらない缶コーヒー、黒白をつけないままに姿を消した「ホワイトコーヒー」である。
 
 
【白いコーヒー 5:日本の場合の弐】
   しろ珈琲 (3)
コーヒーである。しかし、「牛乳をもっと飲んでもらいたい」との主客転倒な意図による。「十勝ホワイトコーヒープロジェクト」は、2007年12月16日十勝毎日新聞が開始した牛乳消費拡大を狙った地域振興活動である。したがって『十勝ホワイトコーヒー』には「コーヒーの種類も牛乳との割合などのルールもありません」が、某ソムリエ考案の「コールド・マセレーション・スタイル」は名の通りに浸漬法によるものでコーヒー風味の牛乳でしかない実体となっている。「角を矯(た)めて牛を殺す」ようなコーヒーである。
 
 
【白いコーヒー 6:日本の場合の参】
   しろ珈琲 (1)
コーヒーではない。しかし、「白いのに、コーヒーの風味が味わい深く香りたつ、新感覚のおいしさ」との世間を瞞着する惹句。PET飲料『ホワイトワンダ』が2011年5月17日アサヒ飲料から発売された。アサヒの缶コーヒーブランド「ワンダ」シリーズに名を借りた『ホワイトワンダ』は、種別を「清涼飲料水」としか表示できない(「コーヒー飲料等の表示に関する公正競争規約」2条1項及び同規約「施行規則」1条による)、謎めいた白色の液状製品である。『ホワイトワンダ』のパッケージ正面に4粒の焙煎コーヒー豆が描かれている、面白い。「不当表示の禁止」条項である「使用したコーヒー豆の量を誤認させるような絵及び写真等の表示」(前述規約施行規則5条2項)に照合すると擦れ擦れ限り限り?ちなみに現行の「ワンダ」シリーズでは「ゼロマックス プレミアム」(主原材料:コーヒー)には豆が7粒、主力商品「モーニングショット」(主原料:牛乳)と「ワンダ ビッグ」(主原料:砂糖)には豆が6粒、パッケージの正面に描かれている(他の「ワンダ」には描かれていない)。描いた焙煎豆の数が相対に少なければ適法?白い目で見ると黒くも見える『ホワイトワンダ』、液色ほどには潔白と白は切れないか?
 
閑話。キリンビバレッジのブランド「午後の紅茶 エスプレッソティー」シリーズはコーヒーの製法イメージを転用した缶紅茶飲料で、缶コーヒー市場の牙城を崩している。各社コーヒー特有の製法や風味を借りて隣接分野の商品を開発…コーヒー自体を原材料にすることは極力減らしたいかのように…生豆価格の高騰期に頻発すること気の迷い?
 
 
【白いコーヒー 7:新たなるホワイトコーヒー】
 
コーヒーである。しかし、空想の産物である。マレーシア産のリベリカ種生豆を選定し、少量の鯨油マーガリンとごく少量のマレーシア産サトウキビの粗糖を加えて焙煎し、エスプレッソ製法によるコーヒー抽出液を得る。これに「先の焙煎豆を別に極粗挽きして浸漬させコーヒーの風味を移しておいた生乳」をスチームドミルクにしたものを適宜に加えて喫する。使用する生乳は、十勝地方で一貫して生産育成された十勝乳牛より得られたものに限る。このコーヒー風味スチームドミルク入りエスプレッソコーヒーには、ただの水ではなくオレンジブロッサムウォーターを適宜希釈したものを添えられたい。これにより『イポー十勝レバノンフラットホワイトコーヒー』ともいうべき「白いけれどコーヒーの風味と歴史と文化が味わい深く香りたつコーヒー」が完成するハズである。白々しいか?
 
 
 
【2011年5月27日 追記】
 
  しろワンダ (1)  しろワンダ (2)  しろワンダ
『ホワイトワンダ』を試飲してみた(比較対照に『ワンダ 特製カフェオレ』も試飲した)。
まず色…よくよく見ると真っ白ではなく、ごく薄~く褐色系統の色が付いている。濁り加減も単に牛乳やカルピスを水で薄めた感じとは異なる…絵の具を溶いた感じ。それでも「特製カフェオレ」と比べれば圧倒的に白っぽい…コーヒーとは思えない。
次にニオイ…昔ながらの瓶入り「コーヒー牛乳」のニオイを薄くした感じ、面白い。正真の牛乳入り(レギュラー)コーヒーの香りとは異なるニオイだが、嫌な臭みはない。
そして味…甘いがベトッとした甘さではない。苦味は少ない。酸味はほとんどない。
総じて思ったほど引っかかりのある味ではないが…ますますコーヒーとは思えない。「引っかかり」でいえば「特製カフェオレ」の方がロブスタっぽいニオイとえぐい苦味が感じられて、飲み下すことにはるかに抵抗感があるし舌に嫌なベットリ感、ゲロゲロ。『ワンダ 特製カフェオレ』は酷くまずいコーヒー飲料であるが、『ホワイトワンダ』はコーヒーっぽくもなく乳っぽくもない当に「清涼飲料水」で「白いコーヒー」とはいえない。もっとも清涼感も薄い「清涼飲料水」なので、魅かれてリピートする要素は全くない。
 
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コメント

No title
y_tambe URL [2011年05月27日 11時57分]

「カフェ・オ・レとカフェ・ラテ、カプチーノの違いは?」なんてFAQも、これまで随分目にしてきました…が、結局のところは「言ったもん勝ち」。ホイップクリームを浮かべて、シナモンスティックでかき混ぜた「あのカプチーノ」の立場はいずこ?

アレンジコーヒーメニューの名前も、結局、行き着く先は『薔薇の名前』……名前が先か実体が先か、ミルクフォームとスチームドミルクのいずれが先か……

でも、そんな論争なんかとは全く無関係に、そこかしこのコーヒー屋では今日も「カフェラテ」だか「カフェオレ」だかの名前が付いたノミモノが、案外適当なレシピで混ぜられては、売られているのですから。

そう考えると、もう「カフェオレ」でも、「カフェラテ」でも、「琥珀の女王」でも、「本日のバリスタのおすすめ、ミルクとエスプレッソのマリアージュ」でも、何でもいいや、という気分にすらなってきます。

to:y_tambeさん
帰山人 URL [2011年05月27日 14時07分]

>名前が先か実体が先か…何でもいいや、という気分にすらなってきます。
確かに…ある意味「初めにコトバありき」ではあっても、時代の好尚なのかコーヒー界でも有徴性すら解体されつつありますからね。私は‘senza schiuma’って頼むほうがカッコイイと思っているのですが、「泡無しネ!」って言うより「フラットホワイト!」って言いたいんだろうなぁ皆サン(笑)。まぁ、記号学・記号論でコーヒーを考えるってのも魅力がないわけじゃないけれど、それよりエバミルクと生クリームを混ぜて浮かべる場合その比率と下層に置くコーヒーの種類と濃度を動かして相性を見出す実践の方が楽しい私…まず、やって飲んでナンボでしょ~。

No title
ねこや URL [2011年05月28日 10時13分] [編集]

ううう・・・十勝の人には申し訳ないけど、
乳くさいコーヒーは苦手です(><)

ホワイトチョコみたいに珈琲豆の油脂だけで作ったら
ホワイトコーヒーと言えるんでしょうかね^^
ちなみにホワイトチョコもキライです。。。
ワガママなことばっかり言ってますが、白黒ハッキリしてるでしょw

to:ねこやさん
帰山人 URL [2011年05月28日 20時37分]

う~ん、確かにハッキリとワガママですなぁ(笑)
しかも、ねこやさんの場合、コーヒー自体も深煎りの苦味が苦手だったよね~、ホワイトコーヒーじゃなくてブラックコーヒーでもストライクゾーン狭そうだし…こりゃ大坊さんをうならせるよりも、ねこやさんをうならせるコーヒーを焼く方が難しいかも^^;;

No title
teaR URL [2011年05月28日 21時06分] [編集]

はい、十勝人です。十勝ホワイトコーヒープロジェクト…知らない…。

ミルク入りのコーヒーを飲むことはかなり少ないですが、反省して、これからはホワイトコーヒー以外飲まないことを誓います(笑)

コールドマセレーション…お菓子作りの時にする方法ですね。まぁ僕はほぼ加熱した牛乳に漬け込んでアンフュゼしますが…。

to:teaRさん
帰山人 URL [2011年05月28日 23時18分]

ご当地ネタを入れると誰かにヒットしちゃうかも、と思っていたら…teaRさんに当たっちゃったか(笑)。十勝で「ホワイト珈琲だけの店」でも開いちゃいますか?(イノダよりもオソロシイ店だな:笑)
ホワイトコーヒープリンとかもマセレーションやアンフュゼを利用した製法ですよね、それだけでどこまで香味が移りきるのかわかりませんが…

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鳥目散 帰山人
(とりめちる きさんじん)

無類の珈琲狂にて
名もカフェインより号す。
沈黙を破り
漫々と世を語らん。
ご笑読あれ。

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