フレンチプレスの受難2

ジャンル:グルメ / テーマ:コーヒー / カテゴリ:珈琲の記:2011 [2011年03月21日 06時00分]
コーヒー漫画『バリスタ』(むろなが供未 原案・花形怜:「週刊漫画TIMES」連載)、ここから“珍しい珈琲の淹れ方”が紹介されるという情報、私の胸は高鳴った…
 
  「『バリスタ』4巻の描きおろしペーパーで美味しい珈琲を淹れよう!」
   …描きおろしペーパーは、4巻にも登場する“珍しい珈琲の淹れ方”を
   作中のバリスタが丁寧にレクチャーするという、珈琲好きにはたまらない
   内容に仕上がりました。…  (2011年3月10日:芳文社ニュース)
 
 珍奇な抽出法?
早速に入手してみると…踊った胸は塞がり潰れた※。
 
  「カンタン フレンチプレスの淹れ方 Presented BY むろなが供未」
   中粗挽きに挽いた豆をフレンチプレスの容器にいれ3分の1までお湯を
   いれます  約30秒間蒸らしたら上までお湯を注いでフィルターを付け
   最初のお湯を入れてから4分後フィルターを下げてできあがり!  コツ
   はお湯を注ぐ時とフィルターを下げる時ゆっくり静かにすること  注ぎ
   始めと最後の一滴は細かいコーヒー粉が含まれるからよけて注いでね!
 
呆れるべきことに“珍しい珈琲の淹れ方”の解説は以上である。「丁寧にレクチャー」と予告した者は日本語を解さない人物だったようである。しかも「作中のバリスタ」とは、主人公の若き天才バリスタ蒼井香樹ではなく、1号店の先輩プリーモ前田貴宏でも美人店長バリスタ高遠輝美でもなく、2号店の敵手プリーモ関拓海ですらない。紹介役は「普通のバリスタ」(1巻p.133)で、「僕って戦力外ですか?」(2巻p.50)の扱いで、シェケラートもマトモに作れない(2巻p.159)、「靴の汚れたバリスタ」(3巻p.111)、塩谷昌志(しおのやまさし)! 脇役の冴えないバリスタが粗雑にレクチャーする…珈琲好きには「たまらない」どころか「耐え難い」ほどに人を食った扱い、またもや「フレンチプレスの受難」だ。
 
フレンチプレスが「4巻にも登場する」部分を読んで、気を取り直そうか…
 
  「今日はフレンチプレスで淹れよう」 「ネルやペーパーでのドリップは
  豆の脂(あぶら)を漉しとってしまうけど これは金属フィルターだから
  豆の脂も一緒に飲めるんだ」 堺麻美(焙煎士)
  「豆の脂には香りや旨みがつまっているんですよね」 蒼井香樹
  (『バリスタ』4巻p.64)
 
違う! フレンチプレスとコーヒー油脂分との通俗に飲まれた中途半端な説明(例えば、フレンチプレスの抽出液をネルやペーパーで再度漉しても、油脂分は除去しきれないし、また、ネルやペーパーでのドリップでも油脂分は抽出可能)、フレンチプレス独特の味わいを誤って解説する、「フレンチプレスの受難」である。
 
 あるbicerin あるbicerin (1)
‘Bicerin’(ビチェリン:1巻episode.01)や‘robusta’(ロブスタ:3巻episode.18)や‘Caffè sospeso’(ソスペーゾ:4巻episode.34)など、漫画『バリスタ』には好い話題も登場するだけに、珈琲好きには今更珍しくもないフレンチプレスを“珍しい”(?)などと嘘臭く採り上げて拙劣な紹介、慨嘆にたえない痛恨事である。
 
  「あたしコーヒーを飲むたびにいつも思うんだ」 「この素晴らしい飲み物
  のために誰かの犠牲がありませんように」 「関わるすべての人々の涙
  が流れませんように──」 堺麻美 (『バリスタ』4巻p.66)
 
「この素晴らしい飲み物のための誰かの犠牲から目を逸らさぬように」 「人々の涙が流れ続けても関わるすべてのコーヒーを素晴らしく思えますように」 鳥目散帰山人(珈琲狂)
 
  ※今般、描きおろしペーパー入手にあたり、配布限定エリアに在住する
    義弟(たろーの小屋)が協力、その尽力に感謝する意はいささかも潰れない。
    義弟の故郷(実家)は福島第一原子力発電所が所在する福島県大熊町、
    身内被災の心労を圧して入手したモノを評し斬り刻むに臆さぬ我が非道、
    私・鳥目散帰山人はその責めを承知の上で、珈琲狂から見舞い申し上げる。
 
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コメント

No title
y_tambe URL [2011年03月22日 10時28分]

昨今、フレンチプレスを推進しようとしてる人たちをみてると、「日本ではハリオが、フレンチプレス(ハリオール)を当初コーヒー用として生産されたものの普及せず、紅茶用器具として売ってきた」ということを、見事にスルーして語ってるのが何とも…。

to:y_tambeさん
帰山人 URL [2011年03月22日 18時38分]

うむ、確かに「日本ではハリオが…紅茶用器具として売ってきた」こと自体も「受難」の過去ならば、それを「見事にスルーして語ってる」のも「受難」の現在でありますねぇ。
その過去に編集人Y氏が雑誌「blend」などでメリオールやハリオールを立派な珈琲器具として紹介していた、それを「スルー」した日本の珈琲業界も「受難」の原罪を負っている、と私は思うのであります…。

No title
ナカガワ URL [2011年03月23日 01時24分]

最近プレスのコーヒーを所望されるので、飲む機会が増えました。率直にいうととても気に入っています。3人用に7gスプーン2杯。湯沸しの90度くらいの湯を注いで、4分待ちプレスして、まず1杯。4分待って2杯目をいただきます。ディティングミルのダイアルの1番粗いところに「プレス」表示があるので、そこで挽きます。この1杯目と2杯目の変化のギャップがとても楽しめます。酸味がオブラートに包まれたようで、「出汁」っぽいヌメり感が好きになれなかったのですが、香ばしいトーストや少し塩っぱいサンドイッチなどと一緒にいただくと、お吸い物のよう。もし、程よい苦味があるコーヒーなら、2杯目は口の中をすっきりさせてくれて楊枝要らずの体。最後に残った粉っぽいコーヒーもわたしは砂糖を少しいれて「塩番茶」風に飲み干します。ハリオさんに頼んで「狂会認定プレス」というのを作ってもらいましょうよ。それで「狂会流プレス術」みたいないい加減な流儀を作って----ジャパネットタカタで売るか。いずれにしても、私見ではテクスチャーの変化が大きく感じ、日本人にアピールするには、そこを楽しめるようにしてあげないと、なんて。

to:ナカガワさん
帰山人 URL [2011年03月23日 12時29分]

>…「塩番茶」風に飲み干します。
好いですネェ。「プレスの微粉が嫌だ」って言っているよりも(嫌なら飲むな!)、この気構えも好い(ずっと楽しいしぃ~)。
私的には「塩谷昌志」流(上記『バリスタ』流)の淹れ方(少量の湯で蒸らしておいて後から湯を注ぎ足す)は好きじゃありません。私のやり方は2種類、その時々で淹れ分けます。
 
あしたの「フレンチプレス」その1:浸漬の香味をひらくため あるいは煮出しに近づけるため まず粗挽き珈琲をプレスに投入し 熱湯を全部一度に注ぐこと このさい 粉を湯の中で躍らせる心がまえで やや高い位置から内角をねらいえぐりこむように注ぐべし。ヘタに雑味をどうこう考えず 浸漬は浸漬らしく淹れた香味は その威力を3倍に増すものなり
 
あしたの「フレンチプレス」その2:浸漬独特の香味をくずす 突破口を見いだせば すかさず 透過で淹れるべし これ 珈琲の抽出における基本なり。まず適温の湯をプレスに注ぎ置き その上に粗挽き珈琲をのせ まっすぐ 湯の上面と粉の上面が浸りそろうように押さえるべし このさい 珈琲から放出されるガスが出きるまで待ち その後きわめてゆっくりと下まで押し下げること。雑味など一発でKOする必殺プレスなり
 
淹(た)て!淹(た)つんだ!フレンチプレス~

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Author:kisanjin
鳥目散 帰山人
(とりめちる きさんじん)

無類の珈琲狂にて
名もカフェインより号す。
沈黙を破り
漫々と世を語らん。
ご笑読あれ。

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