不穏な津波

ジャンル:グルメ / テーマ:コーヒー / カテゴリ:珈琲の記:2011 [2011年03月18日 06時00分]
コートジボワール(République de Côte d'Ivoire)におけるコーヒー生産は
現況で約220万袋(13万2千トン:10/11crop:USDA推計)であり、
世界総計の1.6%弱(ロブスタ種総計の4%強)シェアにしか過ぎないが、
ここ1世紀以上に渡り西アフリカ域最大のコーヒー生産国及び輸出国である。
世界最大量の生産・輸出を誇るカカオ栽培と共にコーヒー栽培が産業基盤である
コートジボワール(象牙海岸)、そこに不穏な情勢の津波が襲来している。
 
 不穏の津波バボ 不穏の津波カカオ 不穏の津波ウワタラ 
昨2010年のコートジボワール大統領選挙は、Laurent Gbagbo(ローラン・バボ
またはバクボ:憲法評議会による当選)とAlassane Ouattara(アラサン・ウワタラ
またはワタラ:選挙管理委員会による当選)とが各々に大統領就任を宣する事態を
招いた。バボ大統領(前?大統領)の資金源とされるココアとコーヒーの輸出を
2011年1月24日ウワタラ大統領(元首相)は1ヵ月間停止する命令を出し、
その後さらに禁輸延長を宣言した。これに対して同年3月7日にバボ大統領は
カカオとコーヒーの買取と輸出を国の管理下に置く大統領令を発表した。
 
これらの事態に対してUSA国務省は、ウワタラ氏を「公正に選出された大統領」と
認定し、2010年12月21日にバボ氏(や親族・側近)にUSAへの渡航禁止制裁を
発動した。その後バボ氏が退陣しないと見るや、一転2011年1月3日バボ氏の
USAへの退陣亡命を受け入れる懐柔策を示し、同年3月9日オバマ大統領の声明で
「市民の無差別殺害に衝撃を受けている」としてバボ氏を強く非難した。
類例連続して暇がないほどに自国の便益を優先するUSAには辟易する。
 
コートジボワール出身の国際的レゲエ歌手Alpha Blondy(アルファ・ブロンディ)は、
2002年からのコートジボワール内戦以来初の母国コンサートを2007年12月30日
開催、自身が‘big brother’と呼ぶバボ大統領(当時?)にも演説を促した。フランス
(旧宗主国)やUSAなどの干渉を嫌い、コートジボワールの自律的な真の独立・発展を
主張する点においては、政治家バボと歌手ブロンディは「兄弟」であることを私も認める。
 
近年のコートジボワールと日本との交易では、カカオではガーナよりも圧倒的に少なく、
コーヒーはほとんど輸入されていない。内戦再燃に向うコートジボワールの政治危機に
関して、日本でも(欧米の論調に倣って)バボ氏の不当性を前提に「国際社会の退陣
要請にかかわらず大統領の座に居座る」などと表現しているが、コートジボワールの
内政へ物言う立場に日本は無く、短慮で浅見な論調は慎むべきである、と私は思う。
 
移民奴隷や児童労働などコートジボワールのコーヒー生産実態に関わる課題は重いが、
少なくとも不穏な情勢の津波に巻き込まれているコーヒーにより目を向けていきたい。
では、どうするか?アルファ・ブロンディの“Café Cacao”という曲詞が示している。
♪ Buy it, buy my coffee now !! Buy it, buy my cocoa now !! ♪
 
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コメント

No title
ナカガワ URL [2011年03月22日 00時44分]

残念ながらコートジボワールは、そのロブを、ロブの中でも悪いサンプルとして飲んだことしかありません。ベトナムロブ登場以前は、結構「アフリカ・ロブ」というとコートジボワールだったものです。「あの人は今」みたいな情報(日本人だけかしら)はとてもありがたいです。最近コーヒーのキャッチコピーを尋ねられることが増えていまして、コーヒー生産国要覧の必要性を痛感しています。(というより、ただ「きれいな柑橘系の酸が----完熟味の甘さが----ブルーベリーのような風味が----だけでは「(あえて)陳腐」に感じられて、そしてもっともっと基本的な何かを知るのを、忘れているような気がして----)20世紀を適切な意味で定着した歴史として語り、21世紀の最初の激動の10年を様々な情報源から選り抜きして、このコートジボワールの記事のような資料が各国についてあったら----なんてまあ虫がいい話ですが。1月マナグアの空港でコスタリカ人の輸出会社の社長さんから別れ際に、ノルマ・エレナ・ガデアなるニカラグアの歌姫(大分薹が立ってるので乳母かな)のDVDを頂戴しました。タイトルは「グラシアス・アラビータ(すいません変なカナ表記で)」ビオレッタ・パラの名曲ですね、と答えると、自分が一番好きな曲であり、ニカラグアではガデアの歌が一番だ、とのこと。味覚だけが鋭い人の言葉より、こうしたことの共感があるとないでは、ある方が説得力が増します。さらにあえていえば、文化としてコーヒーの味を伝えるべきでは、と改めて思いました。というわけで、帰山人の「珈琲世界不思議発見~あの国は今」どうかシリーズ化をお願いしまあす。無責任!!

to:ナカガワさん
帰山人 URL [2011年03月22日 18時01分]

>結構「アフリカ・ロブ」というとコートジボワールだったものです。
それも懐かしき「イボワールの奇跡」ウフェボワニ政権まででしたなぁ。
>このコートジボワールの記事のような資料が各国についてあったら…
いや、これを「資料」というには範疇も深度もかなり不足していますよ。
「イボワールの奇跡」とNestle社の関係、そのNestle社のUSAフルトン工場閉鎖を舞台にコートジボワール(バボ政権)が一芝居うったNYCCC事件、その裏にいるCargill社・ADM社との癒着…本当はこの辺りにツッコマないとコートジボアールのコーヒー・カカオ史は「資料」になりません!
…命がいくつあっても足りない(笑) Alpha BlondyやVioleta Parraの歌でも話題にしてゴマカすしかないのであります。まぁ、オックスファムやアムネスティやグローバル・ウィットネスの発信程度に触れて陳腐な「生産国理解」を叫ぶ日本のコーヒー業界よりはマシだという自負はありますがね(笑)
>帰山人の「珈琲世界不思議発見~あの国は今」どうかシリーズ化…
ま、「アンタ、珈琲界のSalvador AllendeかErnesto Guevaraにでもなりな!」ってVioleta Parraの亡霊にでも言われたら本腰いれていきまあす。こっちも無責任!!

No title
y_tambe URL [2011年03月22日 18時35分]

>ただ「きれいな柑橘系の酸が----完熟味の甘さが----ブルーベリーのような風味が----だけでは「(あえて)陳腐」に感じられて

この視点はとても重要だと思います。むしろ、どんどん「陳腐化」させなくちゃならない…というか、こういった香味表現を「スペシャルティしか使わない」という状況は、ある種、異常なのであって……コモディティだろうが、インスタントだろうが、缶コーヒーだろうが、ありとあらゆる「コーヒーの香味」を語りうる手段なのだから、どんどん使って、どんどん「陳腐化」され、多くの人々がどんどん目にするようになって初めて、「コーヒーが人々に受け入れられた社会」に繋がるのだと思ってます。

to:y_tambeさん
帰山人 URL [2011年03月22日 21時09分]

>むしろ、どんどん「陳腐化」させなくちゃならない…このTambeさんの意は「香味表現」に関して、ですよね? であるならば、私も概ね賛同いたします。
…が(蛇足でありましょうが)、ナカガワさんが「(あえて)」とカッコ付きで言っている「陳腐」とは「香味表現」ばかりで「コーヒーのキャッチコピーを尋ねられる」事態、「もっともっと基本的な何かを知るのを、忘れている」状態を指しているのだろう、と解しています。「文化としてコーヒーの味を伝えるべきでは」の課題には「香味表現」の「陳腐化」(汎用化)だけでは応えられません。
スペシャルティだろうがコモディティだろうがインスタントだろうが缶コーヒーだろうが、ありとあらゆる珈琲を語りうる手段は、「香味」や「品質」だけでは無い…そこがナカガワ氏の意であるならば、こちらにも私概ね賛同いたします。
だからといって、政策や商業戦略はたまた楽曲を身勝手に語れば全部を補完できるワケでもないのでしょうが…
しかも語り方を誤ると、フェアトレードのような流通形態まで「品質」にされてしまう懼れもありますからねぇ。こういう誤った恣意の「陳腐化」に対して私は概ね反対いたします(笑)。

No title
y_tambe URL [2011年03月22日 21時34分]

>むしろ、どんどん「陳腐化」させなくちゃならない…このTambeさんの意は「香味表現」に関して、ですよね? であるならば、私も概ね賛同いたします。

あ、失礼。まさしくそういう意味です。まるで「独特の香味表現で語られること」が、スペシャルティがスペシャルティたる所以かのように捉えられる……そういう状況から、さらに一歩踏み出さねばならない、という意図です。

to2:y_tambeさん
帰山人 URL [2011年03月22日 23時39分]

>まるで「独特の香味表現で語られること」が、スペシャルティがスペシャルティたる所以かのように捉えられる…
見方によってはスペシャルティ課題を象徴しているスゴく鋭いお言葉です。香味自体がユニークであるハズのスペシャルティが、独特な表現という手段の罠で自縄自縛に陥っていますからねぇ。

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鳥目散 帰山人
(とりめちる きさんじん)

無類の珈琲狂にて
名もカフェインより号す。
沈黙を破り
漫々と世を語らん。
ご笑読あれ。

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