欺瞞の倫理

ジャンル:グルメ / テーマ:コーヒー / カテゴリ:珈琲の記:2011 [2011年03月04日 05時00分]
「苦い飲み物は、人の倫理基準を厳しくする」(2011年3月2日:ロケットニュース24)
(参照元:NewScientist‘Bitter tastes make you more judgemental’)
という記事によれば、CUNYブルックリン校の心理学研究者Kendall Eskine氏が
苦い飲み物と倫理観念の上昇を関連付ける調査の実験結果を発表した。
 
苦い飲み物=コーヒーで倫理観念が上昇した(?)私の場合、例えばフェアトレード
コーヒーに対して寛容を欠いた愚考になることもいたし方が無いハズである(笑)。
 
Fairtrade Labelling Organizations International(FLO:国際フェアトレードラベル機構)
の2011年2月23日付け表明‘Update on FLO Coffee Efforts’は、前年5月
より上昇が始まったコーヒー市場価格が今年2月21日にはUS$2.75と14年
ぶりの高値になったことについて「生産農家の助けにはなるが欺瞞である」と言う。
フェアトレードコーヒーの最低保証価格(現況US$1.20~1.25)を、市場価格が
はるかに上回り続けている状況に対し、端的に表した言である(その是非は別だ)。
 
FLOの表明と同日に日本で発売が開始されたコーヒー豆に関して、フェアトレード・
ラベル・ジャパン(FLJ)は2011年3月1日付け新着情報で「スターバックスの
新ラインナップにニカラグア産フェアトレード認証コーヒー登場!」と記している。
「××が認証△△を発売開始」の情報ばかり、春風駘蕩?しだらない?嗤笑である。
 
FLJに限らずフェアトレードに関連する運動や団体は、コーヒー価格の高騰期には
それに直接的に触れる言説がめっきり少なくなる傾向にある、と私は感じている。
コーヒー市場価格の低迷期にその低価格を社会的不当と声高に訴えかける論法が、
保証価格を超えることで説明し難く「自分の首が締まる」状況を生むのであろう。
 
仮にコーヒー価格が一定水準よりも高額になるだけで「生産農家の助け」となれば、
Institute of Economic Affairs(IEA)が指摘している通りStarbucksやNestleや
Kraftの方がよほど生産農家には力強い存在でありフェアトレードは意義を失う?
 
仮にコーヒー価格が一定水準よりも高額になるだけでは「欺瞞である」とすれば、、
本来の交易流通構造を改革する理念に照らし、コーヒーの国際市場を視角の外に
置いて最低保証価格制度以外に軸を変えなければフェアトレードは意義を失う?
 
コーヒー市場価格の低迷期にはフェアトレードの理念は伝わり易く実際の成果は
あがり難い、逆に高騰期には見かけの成果はあがり易いが本義は薄まってしまう、
この事前に予測可能な状況に先のFLOの論旨ですら具体的な対応が明確では無く、
加えてFLJのような「自分の首が締まる」喧伝は能が無いといわれても仕方が無い。
 
フェアトレードに関連する運動や団体こそが「生産農家の助けにもならず、むしろそれ
自体が欺瞞である」疑念、「おいしいコーヒーのけいざい論」「フェアトレードをつぶやく
JCS2010参加記」「凍った足に小便」などで触れた過去の時点以上にその矛盾と
欺瞞を疑われ膨らむ現況、当事者らに自覚充分などと、寛容に思えない私がいる。
 
「朝の苦い一杯のコーヒー。これが人間関係の崩壊に繋がらなければ良いのだが。」
と冒頭の日本語記事では結んでいる。朝1杯のコーヒーで人間関係が崩れようとも
「フェアトレードコーヒー。これが国際社会の崩壊に繋がらなければ良いのだが。」
と苦い諫言を吐きたくなるほどに、フェアトレードコーヒーの前途は遼遠である。
 
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コメント

No title
cocucoffee URL [2011年03月05日 16時08分]

丁寧に栽培、精製してくれる生産者が作るコーヒーを適正な価格(若干の高値でも)で買うことが安定供給に繋がるのであれば自分としてはそれを積極的に取り入れたいとは思っています。
利益主導ではなく生産者から消費者までがハッピーになれることを考える、そんな取組をしている良い業者さんが帰山人さんのお知り合いでいれば教えてください。
もし、帰山人さんがそんな団体を起こしてくれれば私は付いていきますよ(笑)

to:cocucoffeeさん
帰山人 URL [2011年03月05日 21時27分]

これは汎社会的にはかなり難しい課題だと思います。
まず、「生産者から消費者までがハッピーになれること」に確証がある…
これには生産者と知己を得て(流通業者を便宜上使っても実質は)直接
買いつけ続けるしかありません。それに近いことは千歳船橋のH氏とか
軽井沢のM氏とかがやっているようですが…豆の良し悪しは好き嫌い?
次に、生産や流通段階の「安定供給に繋がる」ことと同時に、販売者が
消費者に「安定供給」しなくてなりません。つまり「店を続ける」ことに
確信と覚悟がなければ成立しない…経済や経営に疎くては実現できない。
「丁寧に栽培、精製してくれる生産者が作るコーヒーを適正な価格」で
買おうとし続けてきた、それもフェアトレードやスペシャルティや
サスティナブルなどの言葉が冠せられる時代以前からの志で…そういう
気概のある人物は(私の貧弱な視野では)バッハ田口氏しか存じません
(まぁ長年の付き合いで欲目が無いとは言い切れないかもしれない:笑)。
ってことで(バッハの)ナカガワさん出番ですよ~。
…私が団体ねぇ、独りじゃムリ、同志を募って皆でやりましょうよ。

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鳥目散 帰山人
(とりめちる きさんじん)

無類の珈琲狂にて
名もカフェインより号す。
沈黙を破り
漫々と世を語らん。
ご笑読あれ。

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