値上げの異臭

ジャンル:グルメ / テーマ:コーヒー / カテゴリ:珈琲の記:2011 [2011年02月08日 05時30分]
当節巷でコーヒーの値上げが騒がれている。その原因や背景を論ずる話も多い。
昨秋あたりから「各生産国での天候不順や自然災害の頻発」が強調され、次には
「ブラジル・ロシア・インド・中国など新興国での需要拡大」が力説されはじめ、
USA金融政策の量的緩和によるカネ余りで投機資金が金融市場に流れ込む実情を
近視眼的と切って捨て、相対的に浅く薄く捉えさせる誘導的言説も見受けられる。
他の食糧品高騰と同列に並べ、新たな需要拡大を構造的要因と称すると、冷静で
高邁な観点とも思いがちではあるが、他方でコーヒー生産大国で国内需要の拡大
と同時に輸出量の増大を当面の見通しとする例もあり、側面的な認識のみでは
高止まりを叫ぶ相場師の餌食になる可能性も免れない…クワバラクワバラ。
 
 コーヒー価格推移
 
もう少し視点を異にして、「コーヒーの値上げ」騒動を捉えられないものだろうか?
1988年から直近2011年1月まで約20年余のコーヒー価格を追ってみよう。
コーヒー生豆の国際市場相場を示すものとしてICO Composite indicator price
(国際コーヒー機構 複合指標価格)を、また、コーヒー生豆の日本国内への流入
価格として貿易統計から輸入価格をキログラム単価で換算したものを、さらには、
日本国内での代表的な消費価格として小売物価統計からインスタントコーヒーと
外食市場でのカップコーヒーの値段を、以上4つの価格指標を表に並べてみた。
 
ICOのComposite indicator priceの2001年最低値は、その後数年間の
「コーヒー危機」(Coffee Crisys)を示すものであり、日本国での輸入価格単価も
当然に連動して2002年に最低値を示している。それ以前では1994年から
1997年にかけて前回のコーヒー価格の上昇ピークを示していることも2つの
指標は連動しているが、ここ直近5年間では国際相場ほどには日本の輸入価格
単価が上昇しておらず、やや乖離した変動傾向が見受けられる。この差から、
コーヒー生豆の国内流通市場関係者が「我慢して失った分を一気に取り返す」
感覚で値上げ煽動に拍車をかけている要因があるのではないか、と私は考える。
 
これら前記2指標とは全く異なる推移を示すのが、インスタントコーヒーと
外食店舗でのコーヒー1杯の値段である。インスタントコーヒーに関しては、
この20年余の間ずっと値下がり傾向が続いて「失われた20年」を象徴する。
対して外飲みのコーヒー価格は、緩やかに上昇傾向が長く続き、ここ5年は
ややデフレ基調の単価低落を小さくではあるが示している。生豆価格の変動と
全く乖離している消費価格の20年余間、この推移をかえりみた後でネスレや
スタバの最新の値上げ予告に整合性を感じることは難しい、と私は思っている。
 
生産から加工を経て消費に至る各流通段階のコーヒー関係者の全てが結託して
便乗値上げする悪者とは短絡に断ずることはできない。だが、実際の本質的な
背景要因よりも風潮や思惑に踊る傾向、その連鎖が全くないとも言い切れない
ことを、4つの価格指標の変動傾向の差違が示している、と私は捉えている。
ただ安直に「値上げは困る」などと世間に訴えているだけでは、ウマいコーヒーに
ありつけない薄黒いカラクリ。コーヒーアロマ以外の異臭を放つ、その値上げの
カラクリを突き通す視線を備え、珈琲狂の真の悲鳴をあげていきたいものだ。
 
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Author:kisanjin
鳥目散 帰山人
(とりめちる きさんじん)

無類の珈琲狂にて
名もカフェインより号す。
沈黙を破り
漫々と世を語らん。
ご笑読あれ。

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