フェイクブック

ジャンル:映画 / テーマ:映画感想 / カテゴリ:観の記:映面 [2011年01月28日 23時00分]
道義徳行や醇風美俗といった世俗の倫理を超えたところに「映画」は存在可能だ。
内容はおろか製作行為自体に嫌悪した作品であっても存在の否定には躊躇する。
そうした私の「映画」に対する構えを揺るがすかのような作品を観てしまった。
 人間関係連繋  人間関係連繋 (1)
 
『ソーシャル・ネットワーク』(The Social Network) 観賞後記
 
「これだけのセリフと内容をよくぞ2時間に収めた」と展開スピードと緻密を
讃す所見が多いようだが、私は異なる印象を持った。物語の冒頭、主人公
マークは恋人エリカとダイアローグにならない会話をして罵られ振られる。
その冒頭で登場する話題全てが、作品総体で描かれる人間集団の(ソーシャル)
連繋(ネットワーク)を集約している。「女に振られました」で物語が始まって、
「でも繋がりを求めます」で物語が終焉する…要はそれだけ、残りは心象を省き
「ごたく」セリフを並べているだけ、その大胆で単簡な諷喩こそ讃するべき。
 
但し大胆さで言えば、実在する人物を実名で役に据えて実話かのように描く
作品自体のあり方こそ、観客の誤認を前提に確信した陰険なギミックである。
キャストの心象描写を意図的に省いた上、善悪に曖昧な写像を観客の解釈に
まかせて客観に見せかける手法、見事というよりも先に私には嫌悪と感ずる。
この自覚無き「ほぼ悪意の製作」には、「こんな映画を作っていいのか」の思い。
私の構えを揺るがし動じさせた「ほぼ悪意の製作」、この作品の存在自体を
肯定すべきか否定すべきかは迷い結論できないが、不快に感じることは事実。
この観点においては「21世紀の『市民ケーン』」という評に同意をはばかる、
悪意ではなく透徹した洞察に満ちたオーソン・ウェルズの名作に非礼である。
 
ヴィクトリアズ・シークレットの創業者Roy Raymondの投身自殺という1993年
8月26日に起きた事実、これをネタに非情なフィクションを成立させるより、
デヴィッド・フィンチャー(監督)とアーロン・ソーキン(脚本)をゴールデンゲート
ブリッジから突き落とすノンフィクションの方が私にはよほどの納得感がある。
俳優陣の演技はマズマズだが、際立って良かったのはジョシュ・ペンスだ。
もっともシネマトゥデイのように「今回、CGなどの技巧には頼らず…」などと
噴飯モノの紹介をされると、当のジョシュ・ペンスも投身自殺したくなる?
 
 人間関係連繋 (2) 
「最低ではないけれど、そう見える生き方をしている」マークを描いた映画は、
「最高ではないけれど、そう見せる撮り方をしている」Fake-Book作品だった。
 
コメント (4) /  トラックバック (0)

コメント

No title
ナカガワ URL [2011年01月30日 18時57分]

先日、投売りdvdの中からアミン大統領が主人公の映画を買って観て似た感想を持ちました。誤解を招く危ない映画が増えているのですね。----この物語は事実に基づいたフィクションです----コワイコワイ

to:ナカガワさん
帰山人 URL [2011年01月30日 20時22分]

事実に基づいたフィクション…近いコトワリはエンドロール後に
出てましたが、じゃあどんな映画もアリかといえば…難しい。
「映画」で表現を規制することはあってはならないとは思いますが、
どうも奔放とか放埓とかを「こぎれいな付加価値」に見せたい
傍からは「こぎたない」奴らが増殖中…愚衆がナントカ賞を与えるから?

No title
ねこや URL [2011年02月03日 22時07分] [編集]

こんばんわ。
「実話に基づいて・・」というふれ込みの映画には何本もがっかりさせられています(T_T)
そんなわけで、このフレーズのついた映画はことごとく避けてとおる今日この頃ですw

to:ねこやさん
帰山人 URL [2011年02月04日 14時55分]

おぉ、ねこやさん、いらっしゃいましぃ~
コメいただきウレシ~^^/
 
>「実話に基づいて・・」・・映画はことごとく避けてとおる
そりゃハズレ無い策としてはカンペキな対処法ですねw
私はそこまで徹底できない…すると『チェ 28歳の革命 / 39歳 別れの手紙』や『アンストッパブル』みたいにアタリのこともあれば、『ソーシャル・ネットワーク』みたいに???っていう作品もくらってしまいますw
まぁ、記録映画(真のドキュメンタリー)は別として、元が実話だろうがフィクションだろうが、映画として楽しめることができるかできないか、が一番問題なワケで…
そういう意味では、ムリに「実話」押しする映画ほど、ハズレっぽい臭いは一層際立ってますよねぇ。

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鳥目散 帰山人
(とりめちる きさんじん)

無類の珈琲狂にて
名もカフェインより号す。
沈黙を破り
漫々と世を語らん。
ご笑読あれ。

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