不信の奇態

ジャンル:グルメ / テーマ:コーヒー / カテゴリ:珈琲の記:2010 [2010年11月18日 05時30分]
スターバックスと中国、浅からぬ因縁の両者が絡んだコーヒー記事を発見した。
 
 「スタバ、雲南にコーヒー栽培基地建設へ」
  スターバックスは12日、雲南省に世界で初めてのコーヒー栽培基地を
  建設すると発表した。このほか、コーヒー研究・発展センターやコーヒー
  栽培者支持センターなどを雲南省で運営するという。
  (SankeiBiz:2010年11月16日)
 
Starbucks Newsroom(2010年11月11日)の発表によれば、スターバックス社は
雲南農業科学アカデミー(YAAS)及び雲南省普洱(プーアル:旧思芽)市人民政府との
間でコーヒー栽培の大規模開発に関する覚書を交わした。開発センターや精製処理
施設を始め、世界初のベースファーム、コスタリカ・ルワンダに続くアジア初の
農民支援センターなどを開設する内容である。対して人民政府側は覚書に沿って
30億元(約370億円)を投資し、現在の3万8000トンのコーヒー生産量を
2020年までに20万トンに、栽培面積で2万6700haから10万haへと拡大予定。
 雲南スタバ
このスタバの動向は、中国国内の店舗網拡大は言うに及ばず、雲南省を主に
栽培生産も含めて中国国内に大規模投資を続けるネスレ社に対する対抗策で
あろう、と私は考えている。現にネスレ社も今後10年間で雲南エリアに対し
スタバと同規模の投資を計画発表していて、この2社の争いはついに巨大市場
の中国にまで波及して、本格的なコーヒー栽培開発競争を繰り広げることに…
 
他方、中国の雲南省は世界有数(エリア別では世界一)のタバコ生産地であり、
世界規模の禁煙嫌煙風潮をにらめば、基幹産業の転換策を模索せざるをえない。
加えて、ここ数年の雲南エリアでは大豪雨と大干ばつが繰り返す気候災害に
みまわれ、農事も含めた社会復興の資金源を海外に求める事態となっている。
 
今後の中国におけるコーヒー栽培開発に関して、私が注視したいのは栽培する
品種に関してである。中国へのコーヒー伝播の始原はともあれ、1910年代に
伝わったティピカやブルボンは、1950年代から60年代に雲南省保山市を
中心とした人民政府の栽培開発でも70年代以降は勢いを失い、生産量は現在
でも少ない。代わって1980年代後半に雲南熱帯農業科学研究所が再復興で
導入を図った栽培品種がカティモール(Catimor CIFC7963ほか)であり、加えて
1990年以降は同種Pシリーズをネスレ社が推奨したこと、1998年以降の
UNDP(国連開発計画)下でも収量優先の栽培施策が進められたこと、など
からカティモールは中国雲南エリアの主力栽培品種となった。2004年には
K7が導入されるなど多様な品種が海外から導入され続けてはいるが、安定
して香味評価の高い決定的な栽培品種は定まらないまま現在に至っている。
 Yunnan Coffee
スタバやネスレなどコーヒー大企業と中国人民政府とのコーヒー産業での
化かし合いに興味が無いとまでは言えないが、願わくば雲南コーヒーの栽培
収量よりも品質の安定向上に腐心してほしい、と思う私だ。もっとも、役者の
顔ぶれには「腐心の期待」よりも「不信の奇態」を感じてしまうことも否めない。
 
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コメント

No title
珈子 URL [2010年11月20日 00時45分] [編集]

そうなんですね~!
勉強しました。雲南のコーヒーは焙煎したことがあります。きれいな豆でした。
フルシティーで・・・美味しかったです。
「少数民族が自分たちのためだけ作っている貴重な豆」という言葉につられて買いました。
大資本が入ってくると栽培方法が今と違ってくるかもしれませんね。(詳しくは知りませんが)と味はどうなるんでしょう?なんて余計なことを考えてしまいます。

200gから500g焙煎機になりました。
「500gなんだけど1Kいけるよ」と言われやってみましたら1ハゼが17分くらいになって・・・少なくし800g→600g・・600gくらいなら大丈夫ですが、(1ハゼが15分くらい、もう1分早いといいなあ)やっぱり500g焙煎機は500gなんだと・・このごろ豆の量で苦戦しています。

to:珈子さん
帰山人 URL [2010年11月20日 01時52分]

「少数民族が自分たちのためだけに作っている」雲南コーヒー?ビミョ~な宣伝文句ですね(笑)。逆を言えば、中国のように比較的新しい商業栽培地では
>大資本が入ってくると栽培方法が今と違ってくる…
というよりも、最初から大資本が動かして栽培地が拡大してくるケースが多いですね。記事では省きましたが、中国に持ち込まれた新たな栽培品種は、ケニアのルイルCRF(Coffee Research Foundation)やポルトガルのCIFC(Coffee Rust Research Centre)やコスタリカのICAFE(Instituto Costarricense del Café)などの研究機関から導入されています。その起点や仲介には必ず大手のコーヒー企業が関与しています。ま、だからと言って「大資本を背景に歩留まりと利益のために少数民族に栽培させたコーヒー」などと宣伝するハズもなく…
 
>このごろ豆の量で苦戦しています。
それで消費や商売が全く成り立たないならば問題ですが、各々の焙煎機と焙煎者に合う焙煎量は、結局は当人が「ヨシ」と思う範疇と加減を見つける、ってことでしょうね。工業化された完全熱風方式ですら投入量によって豆同士の輻射熱で焙煎プロセスが変動しますから、直火式や半熱風式の焙煎機では量が違えば焙煎プロセスを全く同一にするのは原理的に考えてほぼ不可能です。それを思い通りにできた時は、内心シメシメと私も思いますが、その次はアレアレと思うことに…その繰り返しです(笑)。

No title
浅野嘉之 URL [2010年11月20日 12時10分]

おはようございます
帰山人さんってほんと良く走っていらっしゃる
そんな方だったのですね
考えてみればそういったこと
お互いに全然しらないもんですね
先日上海へ参りました
想像以上に深くアメリカが中国社会にはいっている
大阪で見たことのない数のCity Bankがあり
街の一等地はスタバでうめられている
ヨーロッパ系のブティックやカフェもあり
ひょっとすれば日本より結びつきが強いのかと
思われるくらいでした
上海の中心にたっていると自分が
社会主義の国にいることを忘れます
“スタバのコーヒー栽培基地の建設”
これはアジアの珈琲業界にとって
いい悪いは別にして
おおきなニュースですね



to:浅野嘉之さん
帰山人 URL [2010年11月20日 15時41分]

そうですね、ここ最近は大会走が続いています。でも走歴は5年弱、
「そんな方」になったのはごく最近です。もっとも以前に東京・会庵
へ伺った時も、皇居周回ラン→会庵→コーヒー学会でしたが(笑)。
 
近代中国は日欧米の植民化争いの中で社会や文化が形成されている、
この点で日本には経験が少ない分、「結びつき」は弱いでしょうね。
かつて中国から茶をもっていってアヘンを与えた、今後の世界企業
はコーヒーを栽培させて何を中国に与えるのか、良し悪しは別でも
気にはなるところです。

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Author:kisanjin
鳥目散 帰山人
(とりめちる きさんじん)

無類の珈琲狂にて
名もカフェインより号す。
沈黙を破り
漫々と世を語らん。
ご笑読あれ。

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