絶滅しない危惧

ジャンル:学問・文化・芸術 / テーマ:思うこと / カテゴリ:あ・論廻 [2010年09月05日 04時30分]
CBD(生物多様性条約)-COP10関連フォーラム全2日の1日目のみ聴講参加。
COP10社会学術対話フォーラム
 
2010年9月4日
COP10社会と学術の対話フォーラム 「生物多様性を主流に」
 
意外と冷房の効いた会場(名古屋大学豊田講堂)、オープニングセレモニーと称する
お偉方のツマラナイ挨拶続きには興も妙も利も無いので、早速居眠り半分で過ごす。
 
カナダ森林局研究員Ian D. Thompson(イアン・トンプソン)氏は基調講演の冒頭で、
CBD未批准のUSA非難を一言。昨2009年の別フォーラムでも基調講演した
Weizsacker氏が名指しでUSAを非難、この当然の一言が腰砕けの日本人には無い。
こうした場面に遭遇する都度に、COP10開催地が軟弱日本であることを恥じる。
 
基調講演で語られたポスト2010年目標案に関して、私が気になった点は2つ。
1つは、貧困と生物多様性の関連。貧困層の生活維持を困難にする生物資源の減少
という観点から、貧困を生物資源損失の要因と捉えて貧困層への対応を推し始めた。
CBDにおいても望まぬ人々に欧米主観の幸不幸を強要しかねぬ危険を私は感じる。
もう1つは、「過剰漁獲と破壊的な漁業活動の撤廃」の件。昨今の非科学的で狭隘な
心情論がCBDにも持ち込まれ始めた臭いを感じる。もっともこの後に一切触れぬ
フォーラム自体が政治的議論を避けた茶番劇であること、私は嫌な感じを拭えない。
 
続く「セッション1 世界の課題」「セッション2 日本の課題」は、講演者の計9名が
割当て時間に急かされたバラバラ報告に終始し、まともな討議も無いお粗末な仕立。
そもそも森林・海洋・農地・都市と対象分野を変えただけで生態系変化と生物種の数
ばかりが語られ続く。遺伝的多様性にはほとんど触れられず、遺伝資源の利用や配分
の課題には一切触れない。世界だの日本だのと叫んでもテーマ自体が偏り多様に非ず。
 
地球温暖化など気候変動の人為的部分は生物多様性問題の一部であり、それは人間の
数が生態系ピラミッドを破壊するほど多くなったことを示す、という五箇氏の言など
五箇公一・半藤逸樹・伊藤一幸3氏の講演は、切り口や臨む姿勢では聴き楽しめた。
 
私が思うに、絶滅を危惧される生物種から見ればヒトは「絶滅しない危惧」種である。
例えば先進各国の少子高齢化は、「絶滅危惧に進むべき(?)ヒトという種」に到来した
生物多様性の損失を防ぐ絶好の機会であるが、こうした視点の議論はまず出てこない。
生物多様性を損う元凶最大の人口爆発をそっちのけにして地球温暖化との連関ばかり
叫ぶ先進各国の姿勢は、CBDを人類の犠牲無き身勝手な目標に帰結させていくのだ。
 
会場からの質疑・意見を求めると、「専門的で難しすぎる」だの「判り易い指標を示せ」
だの低能丸出しの発言が連続してウンザリする。講演パネラーの中には遠慮がちに
揶揄する氏もいたが、私ならば「考えず楽して学びたければ出て行け!」で終わらせる。
確かに生物は多様性に富んでいる、それはヒトの知性においてもかなりのものらしい。
 
9月とは思えぬ茹だる暑さの中、視野も進行もお寒いフォーラムに涼を感じて帰った。
 
コメント (8) /  トラックバック (0)

コメント

記事を楽しく読ませていただきました.
セッション2 沿岸海洋の講演者 URL [2010年09月06日 04時23分] [編集]

帰山人 様

フォーラムへのご参加,ありがとうございました.講演者の一人として,反省すべき点を反省します.

私もこの類の記事(上から目線での評価)をブログに投稿することはよくあります.貴方のようなご意見をお持ちの方が会場にいながら,議論に参加していただけなかったことが残念でなりません.貴方自身が議論に参加すれば,貴方がウンザリするような会場からの発言を回避することも可能だったでしょう.

フォーラムの視野や進行についての問題点は,運営側も十分に理解していると思います.私も,今後の課題として対応していくつもりです.

セッション2 沿岸海洋の講演者

to:セッション2 沿岸海洋の講演者さん
帰山人 URL [2010年09月06日 10時30分]

お疲れ様でした。コメントありがとうございます。
上から目線(?笑)でも、Hさんをフォローしておいてヨカッタ~^^;
でも、あのフォーラムで私が発言したとしても「ウンザリするような会場からの発言を回避することも可能だった」とは思いきれません。運営側も消化不良と理解していても結局は同じレベルの催しが繰り返される…よくある現象ですがCOP10関連でもズーッと起きていますから。議論が昇華することよりも集うこと自体でヨシとする風潮は、講演者ではなく運営主催者が酷いからだと思っています。
ダレた空気に秘めた憤怒を垣間見せたHさん、今後もアレで対応してください。さすれば私も機会に合わせて議論に参加してみようかと…^^/

No title
ナカガワ URL [2010年09月11日 10時11分]

自家焙煎の個人経営はかなりのリスクが伴い、経営的に法人には我慢できないことを強要される面があります。たとえばオーナー食い扶持が減るというような。そんな中で、個人経営に乗り出す自家焙煎経営者の方には、無子の方が結構います。子そのものがリスクになるわけです。でも後継などの継続性が脆弱になります。コーヒー屋とかカフェはミーム(古い?)の継続性がある、といいたいところですが。自家焙煎のミームの日本固有種については、減少危惧かしら。ホリグチさんが布ドリップの店を開店したと聞きました。ニッポニアネルシス?のミームが遺伝しているかも----そのうち訪問してみたいと思います。

to:ナカガワさん
帰山人 URL [2010年09月11日 21時43分]

「ニッポニアネルシス」の形成と展開について。
 日本のコーヒー界における布ドリップの始原は(一杯淹てではない)比較的大量抽出の単なる一技法として導入されたのだと想像しています。その段階(明治大正時代)では商売の技法以外に余分なマインドウイルスには感染していなかったのです。
 しかしその後(昭和時代)の日本ではコーヒー店(カフェー)文化の複製・伝達が大きな規模では進まない一方で、個人的な技法研究による布ドリップ観の変異が生じます。三浦・襟立・関口・井野など諸氏による研究は布ドリップを業務上の手段から選択的付加価値の技法へと変質させていったのです。彼らの多くはフランスを主な対象とした「本場仕込み」への憧憬という(それ自体認識を誤った擬似的な)マインドウイルスに感染していたのです。
 彼らニッポニアネルシスの先駆者には一杯淹てと大量抽出とを区分する技法として捉える者は少なかったのですが、後を追う個人経営のコーヒー(専門)店オーナーたちは、布ドリップを「一杯淹て」を原則として、その「手間」=「丁寧」=「美味」=「高価格」という付加価値のマインドウイルスで世に撒布していきました。無論、個人経営の規模や能力による限界や脆弱性を埋めるために作り出した人工的な変異ウイルスです。
 こうして誤った認識(=欧州コーヒー先進国の模倣子継承)による実際には日本にしか存在しない珍妙なニッポニアネルシスが形成されたのです。社会的な飲用比率では圧倒的に少ないものの、コーヒー界では極めて目立ってコーヒー抽出技法の頂点として君臨し続けるという点が「珍妙」といえる特徴です。
 さらに平成時代まで下ると新たなコーヒー業態により他の抽出技法への認識が拡がり、相対的にニッポニアネルシスは「古風で保守的で偏狭な」技法として王座を危うくし始めて、現在に至っています。一部には、コーヒー業界では著名なコーヒー店主たちが新たに布ドリップによるコーヒーを提供し始めたりもしていますが、これは単なる回帰現象ではありません。国際的なスペシャルティコーヒー流行による高付加価値追求への動きが抽出技法にも目を向け始め、結果として布ドリップの付加価値マインドウイルスが日本から海外に流出してアメリカや韓国など海外ニッポニアネルシスが現れ始めたのです。日本の擬似回帰性もこうした国際的な潮流に敏感なコーヒー店主たちが起こしているものです。つまり形成時に外から来たと誤認した日本独自の抽出技法は、今度は外圧によって限定的な復興が叫ばれるという皮肉な状況にあるのです。

えー、こんなところでしょうかネ?ナカガワさん(笑)

No title
ナカガワ URL [2010年09月12日 13時25分]

いつも、長い返事を書かせてすいません。これらのタイプを怒る方がいれば謝罪しておいてください。とはいえ、負の選択も含めて多様、途絶えることを含めて継続----マンガ版「ナウシカ」のラストのようで「小気味良い」ですね。「たざいたいせいきん」とか何とかバクターとか、ほとんど腐海の生活みたいです----久しぶりに再読してみようっと。

to2:ナカガワさん
帰山人 URL [2010年09月12日 17時28分]

>いつも、長い返事を書かせてすいません。
イイのイイの!好きで書いてるんですから。日本コーヒー傍系史の下書き練習にもなるしぃ~。
ブロコメが長いですがTwitterの「つぶやき」も長~い帰山人ですから。もっと長いのはTambeさんの「つぶやき」ですよね(笑)。我々のはもはや「つぶやき」レベルじゃなくてジジ放談!フォロワーで顔しかめているヒト多いかも(笑)

No title
y_tambe URL [2010年09月13日 15時17分]

どうも(笑)、長い「つぶやき」でおなじみのY_Tambeです。最近は本来ニガテな領分の、スペシャルティ絡みのつぶやきが増えてますが、これもY先生から廻って来たお鉢の関係で、情報整理を余儀なくされてるせいだということで(笑)。

日本のネルドリップコーヒーの分類命名法については、一分類学者としては、
Dripcoffea flannella spp. japonica (Percolacoffeaceae)
透過抽出コーヒー科 ドリップコーヒー属、ネルドリップコーヒー、亜種ジャポニカ
という名前を提唱するものであります。ドリップコーヒー属は、このネルドリップコーヒーを含む布ドリップ亜属と、ペーパードリップ亜属、金属フィルタードリップ亜属に細分されており、日本にはペーパードリップ亜属のDripcoffea mellita、Dripcoffea kalita、Dripcoffea konoなどが多く見られます。

to:y_tambeさん
帰山人 URL [2010年09月14日 14時10分]

どうも、巻き込んでスイマセン(笑)。ネルドリップの分類命名の提唱ありがとうございます。こうなると亜種ジャポニカはどこまでを指すのかが難しい。一杯淹て、一刀淹て、点滴、連珠、本部式三点抽出…あたりは範疇内でしょうが、べに善式とかは怪しいし、オランダ式打返しとかばんじろ式はどうなんだ?ってなると…抽出者の数だけ固有種を主張されそうで今世紀中に分類が決着できるかどうか(笑)。まぁ、収拾がつかないままでも文化遺産にはなるかもしれませんね(オイオイ、早くも「遺産」にするか!)。

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Author:kisanjin
鳥目散 帰山人
(とりめちる きさんじん)

無類の珈琲狂にて
名もカフェインより号す。
沈黙を破り
漫々と世を語らん。
ご笑読あれ。

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