一か八か

ジャンル:グルメ / テーマ:コーヒー / カテゴリ:珈琲の記:2010 [2010年07月10日 05時00分]
関口一郎編『珈琲こだわり座談集』(いなほ書房:刊)読了。
 
1914年5月26日生まれの関口一郎氏、一昨2008年『煙草と珈琲』、昨2009年『珈琲辛口談義』に続く誕生日を意識して一連の出版である。96歳の「誕生会と出版記念会」でも、星田宏司氏によれば
 《それにしても関口さんの元気なこと。シャンとしている。
  「ギネスブックものだ、いや、コーヒー界の国民栄誉賞をあげなくては」
  との声もあり。》 (季刊『珈琲と文化』No.78 編集日録)
だそうで、つまり周囲は「絶筆になるかと思いきや…」と年々に祝っている? 全て初出誌で既読であり目新しさはない『珈琲こだわり座談集』の内容だが、この高齢「一郎」生存記念出版シリーズ(?)という名目に負けて入手した次第。
 
福岡での美美・森光宗男氏との対談(座談集・第三部に収載)で、ネルフィルターの話題に関連して関口氏は「ばんぢろ」に触れている。
 《ここ=福岡の有名な「ばんぢろ」さんが、この記事がでた時に私の店へ
  飛んできましてね…大変な熱心な方で、唯一これを理解してくれた方
  ですね。》
関口氏のいう「ばんぢろさん」は耕八路(本名:井野耕八郎)氏(故人)のことである。
 
関口氏と同年代の井野耕八郎氏(1916年生)、著書『珈琲と私』(葦書房)の腰巻には「最初にして最後のコーヒー職人」と紹介され、本人も「マスター」ではなく「バーテン」を自称し続けた。俗に塗れた飲食業界で叩き上げられたバーテンが語る「ばんぢろ方式創作珈琲抽出」論の熱っぽさは、関口氏の熱情とも異質な泥臭いオモシロさがある。
 
日本の自家焙煎珈琲界では老舗パイオニアとして「東の関口、西の襟立」などといわれるが、コーヒー抽出の論者として、また強烈な個性を放つ人物としても引けをとらない井野氏、彼について語られることは巷間圧倒的に少ない。まるで自家焙煎でなければ抽出論のみでは相手にしない、かのようである。「ばんぢろ」と同じ福岡に店を構える「美美」の森光氏ですら、別郷出身の三浦義武氏の遺業には執心らしく研究調査に余念も無いが、井野氏に同等の関心があるようには見受けられない。その他コーヒーの業界人や愛好家の中でも井野氏の遺業が触れられることが少ないのは、なぜだろうか?
 
「一郎」氏と「耕八郎」氏、同じ大正生まれの珈琲職人、片やは故人になったが、「一か八か」の思い切った研究調査の対象に「ばんぢろのおいしゃん」を! 『珈琲こだわり座談集』を読みながら、そのような思いが浮かんできた。
 
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コメント

ブログでははじめまして
森光宗男 URL [2010年07月13日 01時48分]

お店には確か2度ほど伺ったことがあります。勉強不足で今になって百珈苑BLOG・帰山人さんのblogをしりました。いくつか誤解があるようなのでコメントしました。私の珈琲の基準に「感動」があります。それは動機がなければ生まれませんからそんな縁があったものに限られてしまうのはご勘弁ください。言葉より技術より、何より直に珈琲に接したいと自分に願ってきました。いささか情緒に流されるきらいはありますが、否定どころか私は核心だと思っています。そこに行った者だけが感じた広がりこそ真実です。

to:森光宗男さん
帰山人 URL [2010年07月13日 10時38分]

拙自ブログにお越しいただきありがとうございます。
>いくつか誤解があるようなので…
この記事で(こと耕八路氏に関して)森光さんを焦点に腐すつもりはありません。私の斜眼で捉えきれず隔意を感じられたのであれば、届かないところは陳謝いたします。「そこに行った者だけの真実」を心性から世間に語る難しさ、「感じた真実」と異なる事実を認める難しさ…何はにつけて悪態をつき続ける私ですが、私なりの珈琲への「感興」に免じてご寛恕願います。

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鳥目散 帰山人
(とりめちる きさんじん)

無類の珈琲狂にて
名もカフェインより号す。
沈黙を破り
漫々と世を語らん。
ご笑読あれ。

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