さよならジュピター

ジャンル:グルメ / テーマ:コーヒー / カテゴリ:珈琲の記:2010 [2010年05月25日 05時00分]
ナントカ製法とかナントカ焙煎とかナントカ抽出とか…缶コーヒーのうたい文句は、
失笑してしまうばかりだが、ついに焙煎「温度」を商品名にした缶コーヒーが出現。

「ルーツ『ロースト560℃微糖』、5月31日より全国で新発売」
(JT=日本たばこ産業株式会社 2010年5月24日発表)
560℃

JTの商品紹介によれば、この缶コーヒーに使用するコーヒー豆の煎り始めの温度、
従来より約50℃高い「ルーツ史上最高の560℃に設定」しているそうである。

摂氏560度!…華氏の間違いではないのか(華氏560度=摂氏293.3度)?
と一瞬疑いたくなる超高温焙煎だが、高収率(hi-yield)を追求する大型焙煎機の
世界では当然至極のことで、改めて「手廻し」「手網」の私的焙煎世界と差異を感じる。

560℃で焼く焙煎機、勝手な憶測ではPROBAT社製あたりか?
Saturn(サターン:旧称RZ)シリーズは日本国内でも大手焙煎業者が導入多用する
ボウル型遠心攪拌式の大型焙煎機で、1バッチ最速2分前後、1時間当りで
約2.5~4トンのコーヒー豆を焼きあげる。PROBAT社には、他にも
ドラム式のNeptune(ネプチューン:旧称G・EN・R) シリーズ、
スターラー式のJupiter(ジュピター:旧称RT・RN・サーマ2)シリーズなどの
大型焙煎機が揃っているが、いずれも考えられないスピードで1時間に数トンの
豆を「処理」できる巨体なシステムであり、焼かれたコーヒーは工業製品といえる。

小型焙煎機を使用する自家焙煎店やアマチュアから毛嫌いされ非難されがちな
大手の「工業的高温短時間大量焙煎」だが、高温・大量だからこその輻射熱効果が
短時間で安定した焙煎を可能にしていることは、有益な技法として無視できない。

とはいえ、ローマ神の名をかたってまで性能を誇示される大型機械で超高温処理
されたコーヒーに、何ともいえない抵抗を感じることも私には否めないところだ。
仮に560℃焙煎の缶コーヒーが最新式のネプチューン・サターン・ジュピターで
焼かれたものだとしても、やはり寄り付かず遠ざかる気持ちに変わりはない。
珈琲狂として‘VOYAGER’ではありたいが、「さよならジュピター」である。
 
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コメント

No title
ちんきー URL [2010年05月25日 23時52分]

コーヒーが工業製品・・・
どんな設備の工場でどんなQC工程表や作業要領書を使って作っているのか見てみたい気もします。
(見たら缶コーヒー嫌いになりそう)

to:ちんきーさん
帰山人 URL [2010年05月26日 10時08分]

>コーヒーが工業製品・・・
まぁ「喩え」だと解釈していただいてもいいんですがね…
でもイールド(歩留まり)最優先で製造されていること自体は、
コーヒーに限らず「工場で作られる食品」共通の真実ですね。
そんなこと思い浮かべると「何も食べられなくなる?」…
そんなこと思い浮かべながら「何でも食べちゃう」私って…

豆のしわと温度について
珈子 URL [2010年05月28日 08時00分] [編集]

いつもながら記事を拝見し学んでいます。
雑誌も読みました。お話に引き付けられて何回も読み返しました。

以前はマンデリンの焙煎方法のご指導をありがとうございました。
あれからすぐは豆がありませんでしたので焙煎できませんでした。最近ようやく焙煎しましたが以前よりは良くなりました。
美味しいと思えます。ただ何だか少しムラがあります。てっきり未熟豆だと思っていたのですが・・・水分量の違いがあるとは後で知りました。マンデリンと言う豆は難しいのですね~。

ところで熱のお話にはまたビックリしました。
どんな風にコーヒーの味を出すか焙煎の時間の工夫は大事と思っていましたので・・。
そこで、この頃悩んでいる温度のことを教えてください。
私は低い温度からだんだん高くしていく焙煎方法を教えていただいたのですが、一方最初にワッとガス圧を高くし徐々に低くしていく方法もあるのですね。
この頃「豆のしわ」に悩んでいます。ハイくらいでツヤツヤと伸びている状態にしたいのですがだんだん高くしていく時、どこでどのくらい時間をとってどんな温度にすればいいのか分かりません。もう少しもう少しと思っているとすぐシティくらいになります。シティのちょっと手前くらいにしたいのです。
今度、高→低の方法もやってみようと思いますが、最初の刷り込みから中々脱しきれないです。

よろしくお願いします。

to:珈子さん
帰山人 URL [2010年05月28日 17時22分]

「温度のこと」これは難しいですねぇ。
まず、「何(orどこ)」の「温度のこと」なのか?
「焙煎方法」として様々な温度を測り調整することは必要かもしれませんが、結局は「豆自体」の温度によって豆のローストされる具合が規定されるわけで、でも「豆自体」の温度やその変化を完全正確に測定することは不可能です。
そこで実際には、ドラム式業務用焙煎機でいえばドラムの下や上や内部に 温度計をつけて間接的な測定を試みたり(豆集団に温度計突っ込んでも間接)、「ガス圧(の変化)」≒「熱量(の変化)」≒「温度(の変化)」と仮定してみたりして、なんとかツジツマを合わせようとするしかないわけですね。
しかし!仮に「ガス圧」=「豆に与えられる熱量」としても(←コレ自体が至難 のワザですが)、それが焙煎の具合を規定する「豆自体の温度」とは連動しない
…これがコーヒー焙煎のやっかいでオモシロイところだと考えています。
別の言い方をすれば、「火力(近似でガス圧)を一定」にし、単位時間当たり「豆に与えられる熱量を一定」にしても、「豆自体の温度」上昇はキレイな右肩上がりの直線にはならない、つまり焙煎の進行は階段状になっちゃう。
火力調整なんかしないで放置してもローストされる豆の変化はバラバラ…
これをさらに火力調整して「ある意図通り、思った通り」に焙煎進行を制御
することは、正直そーとー難しいハズだ、と思っています。
私の焙煎は原則として、ずーっと火力(ガス圧)一定、だってそれでも焙煎
プロセスはブレるのに、火力を変化させたら焙煎プロセスがブレる変数を
激増させてしまうもん、そんなカミワザな制御をする自信もないけれど、
必要もない…という「火力一定焼き」に落ち着いちゃいました。様々な変化を思いつく限り挑戦してみた紆余曲折のアゲクではありますが…。
あ、話がズレてきた?えーつまり、珈子さんの「温度のこと」は、何の温度
で何を意図することなのか、がわからないと私には説明し難いですねぇ。
 
次に「ハイくらいで豆のシワを伸ばす」の件、これも難しいですねぇ。
「ハイ」の焙煎深度も、例えばハゼを目安にしても「1ハゼと2ハゼの中間」 「1ハゼと2ハゼの間の後半」「2ハゼ前」「2ハゼが始まった段階」…と、人によって捉え方がバラバラですしね(しかもハゼと色は一致しないし…)。
まぁ、「2ハゼのピチッっていう音を1回聞く程度」と勝手に仮定します。
この焙煎度で「ツヤツヤと伸びている状態にしたい」のは確かに高難度。
豆の伸び面(つら)を最優先に考えるのであれば、「>もう少しもう少しと
思っていると…」っていう段階では、シワがキレイに伸びるか伸びないか、
もうとっくに勝負が決まっていて時既に遅い、と私は思います。
「2ハゼギリギリのローストにしてはシワが伸びているなぁ」という豆は、
「1ハゼあたりでの膨化(puffing)度を最大限にする」前提があって、その 前提に「俗にいう蒸らし(or水抜き)から1ハゼに至る間に豆の内芯部と外表部の温度上昇がなるべく均一になっている」前提がある、という推論によるものです。
もし「>低い温度からだんだん高くしていく焙煎方法」で、「蒸らし が終わった!さあ豆の皆さん、熱をあげるから気持ちよくハゼてごらん!」
と熱量を早く多く与え過ぎると、この頃に豆が吸熱だけでなく発熱反応が
起こるので、必要以上に急激に温度が上昇して膨化が中途半端になる…、という意に反した悲しいプロセスを生じてしまい、その後では取り返しがつかない…、という状況が推測できるんじゃあなかろうか、と(あくまで私の経験論を言葉にしただけ、科学的な理由づけは完全ではありません)。
先にも言った通り、仮に火力を一定にしていても、蒸らし(水抜き)から
1ハゼに至る間に豆自体の温度上昇は急激になります。
実は、膨化やハゼの原因や過程は謎だらけで、未だ解明しきれていません。もっとも高度なレベルでも
http://d.hatena.ne.jp/coffee_tambe/20081101
程度です(貶しているんじゃなくて解明の限界を示すための参考ですよ)。

もう一つ、現時点での私的焙煎では、いかなる温度も測っていないし、
豆の伸び面(つら)にも比較的無頓着です。もちろん検証する視点が無いと言えばウソになりますが、「温度をこうもっていく」とか「シワが伸びた」 が、舌や鼻で「ウマイなぁ」に直結する指標かと振り返ると、どうも「ウケウリ」や「根拠が曖昧な恣意的思い込み」に引っ張られる弱い私には邪魔で…
と、いうことで「>教えてください」と言われても、エラそうに答える資格
すら無い立場なのかもしれないことをお断りしておきますm(_ _)m
(↑じゃあこんなにくどいコメントするなっ!って自ら突っ込んでおく)

No title
ナガ URL [2010年05月29日 09時48分]

ナガです。私のブログへのコメントありがとうございました。URLが載っていたので拝見させていただきましたが、読み応えのあるブログですね。それにしても缶コーヒー、すごいことになってますね。あんまり飲まないのですが、560度、どんな味なのか興味わきました。

ありがとうございました
珈子 URL [2010年05月29日 09時55分] [編集]

繰り返し読みました。
ふ~む・・・私の質問は無知が故の・・でした。
分からないことが沢山あるということが分かりましたし、言葉でうまく表現出来ていないにもかかわらず、お話いただいた中に求めていた答えがあります。
今さらですが焙煎というのは単純ではないのですね~。
「2ハゼを1回聞いて」止めたいのです。ぷっくりとつややかな状態で。
高難度も、試行錯誤で楽しみの部分としてやって見ます。

今は豆がどんな状態でも、家で出来ることが嬉しく楽しく、一日中焙煎していても厭きません。
着衣も髪までコーヒーの匂いぷんぷんが幸せです。

ありがとうございました。

to:ナガさん
帰山人 URL [2010年05月29日 13時13分]

ナガさん、ようこそおいでいただきました。
ご覧の通りランニング以上に珈琲狂というフザケタ人生です。
走力がついたらウルトラマラソンやロングトレランの途中で、
自前で珈琲を淹れたり、さらに焙煎してみたい、と思っています。
今後ともよろしくお願いします。

to2:珈子さん
帰山人 URL [2010年05月29日 13時24分]

>お話いただいた中に求めていた答えがあります。
少しでも参考になったのであれば、私もウレシイです。
  
>「2ハゼを1回聞いて」止めたいのです。ぷっくりとつややかな状態で。
いいですねぇ。誰が何と言おうと、自分のやりたいことがハッキリ
していることほど、楽しく前進できる糧になるものはありませんよね。
倦むことなく焙煎し続ける私も、珈子さんの「発熱」?に励まされました!
こちらこそ、ありがとうございます。

No title
ナカガワ URL [2010年05月30日 01時35分]

「さよならジュピター」は小松左京が当時構想10年とか20年とかいって、できた映画は構想した当時のままほっておいたアイデアか、という作品だったような----。
確かボイジャーくんは、クリエイターを求めて出戻ってくるんでしたよねえ。

to:ナカガワさん
帰山人 URL [2010年05月30日 21時43分]

小松左京の構想がペンローズ・プロセスを導入したお膳立てはスゴイし、考証にあたった面々もよかったのに…映画としては???な「さよならジュピター」は悲しかった。
クリエイターを捜しに戻ったのは「ヴィジャー」です!とツマラナイこだわりを言ってみる…
宇宙、それはコーヒーに残された最後の開拓地である。そこには人類の想像を絶する新しい品種、新しい技術が待ち受けているに違いない。これは、人類最初の試みとして無期限の調査飛行に飛び立った日本珈琲狂会の驚異に満ちた物語である!

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Author:kisanjin
鳥目散 帰山人
(とりめちる きさんじん)

無類の珈琲狂にて
名もカフェインより号す。
沈黙を破り
漫々と世を語らん。
ご笑読あれ。

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