勝者無き豆の争い

ジャンル:グルメ / テーマ:コーヒー / カテゴリ:珈琲の記:2010 [2010年04月01日 05時00分]
存在無き豆を争う」で取り上げたエチオピアコーヒーに関する笑止な話題の続報(2010年3月30日-)。
 
 知財高裁が特許庁の審決取消/コーヒー豆商標訴訟=エチオピアが勝訴
 
コーヒー豆の商標として「シダモ/SIDAMO」と「イルガッチェフェ/YIRGACHEFFE」をエチオピア連邦民主共和国が日本で登録していたが、2010年3月29日知財高裁はこれを無効とした特許庁審決(2009年3月)を取消し、商標登録を認めた。この取消訴訟、原告・エチオピア連邦民主共和国が勝者、被告・全日本コーヒー協会が敗者、ということになるのだろうが、私にはどうにも合点がいかない本質的な疑問が残る。以下は、今般の知財高裁の裁きに関連する当事者への私・帰山人の裁き(見解)である。
 
 
 主文
 
 原告・エチオピア連邦民主共和国、並びに被告・全日本コーヒー協会、双方
 の係争を改めて「猿芝居」と断じて、その誤った係争姿勢を有罪とする。 
 
 事実及び理由
 
  第1 事案の概要
 
  本件に関しては、「シダモ」「イルガッチェフェ」が (a)「高品質コーヒー豆の
  差別化、特化(スペシャライズ)のために付されている銘柄名(ブランド名)」
  なのか、(b)「単に商品の産地又は品質を表示するもの」なのか、を焦点
  にしたものである。

  第2 当事者の主張
 
  商標を登録した原告・エチオピア国は、商標使用のライセンス契約を合法
  強化し、ブランド化でより外貨を獲得し価格を維持上昇させる戦略を狙い
  前記(a)を主張した。商標無効を請求した被告・全日本コーヒー協会は、
  市場の主導権を失いたくない業界意図を、銘柄化を公益上の不当性と表
  して前記(b)を主張した。
 
  第3 知財高裁の判断
 
  《地理的な面からみて、シダモ地方とシダモコーヒーエリア、あるいはイル
  ガッチェフェ地方とイルガッチェフェコーヒーエリアとが一致しているわけで
  はない》、《しかも、シダモコーヒーエリアあるいはイルガッチェフェコーヒー
  エリアで産出されるのは…『コーヒーの実』であって、いまだ『コーヒー豆』
  ではない。産出されたコーヒーの実が、所定の精製場所(ほとんどがアジ
  スアベバに所在する)に運ばれて精製されて、初めて指定商品たる『コー
  ヒー豆』となる》、知財高裁の判決理由には上記内容が前記(a)の裏づけ
  として断言されている。
  また、同判決理由には、シダモやイルガッチェフェという地名が一般的な
  地図・辞書・事典類に掲載されていないことなどをあげて、《仮に地理的
  名称の意味が残っているとしても著しく微弱》、《コーヒー又はコーヒー豆
  に付されている本件商標に接する需要者である一般消費者が、この標章
  から産地と認識することは、希有のことというべきである》と記されている。 
  さらに、同判決理由には、被告・全日本コーヒー協会の構成団体に所属
  する有力企業、アートコーヒー・キーコーヒー・ドトールコーヒー等が「イル
  ガッチェフェ」の名を冠した商品をブランドとして広告・販売している事実が
  指摘されている。
 
  第4 当判決の理由
 
  原告・エチオピア国は、本来誇るべきコーヒー産地でもある名称が、日本
  国内で全く無名であるという知財高裁の判断に恥辱を感ずることもない
  かのように、「事実上、主張が全面的に認められた」という主権国家にあ
  るまじきコメントを出している。同様に、「地名とコーヒーエリアの不一致」
  や「精製が全く別エリア」という本来のブランドイメージに反する事実を裁
  判上で暴露されてまで利権の確保を優先する姿勢は、自らの威信を失墜
  させ背徳したものと言わざるを得ない。 
  被告・全日本コーヒー協会は、名称を銘柄として利用しているという構成
  団体や業界企業の存在を認知しながら、それを裁判上で暴露明示されて
  までも、公益性に名を借りた利権の主張を行い、真の業界振興や市場啓
  発に反する請求を続けてきた。 
  原告も被告も、エチオピアコーヒーが残留農薬問題により日本市場で危
  機的状況に陥っている昨今に結束して対処すべきところを、互いに相矛
  盾した主張と事実を知財高裁の判決で暴露されてまで争い続けた姿勢は、
  明らかに誤りである。
  よって、主文のとおり判決する。

「存在無き豆を争う」果てが「勝者無き豆の争い」という無粋さ、再度怒りを超えて笑ってしまうのは私だけだろうか?
 
【2010年4月23日 追記】
 
上記の原告と被告に象徴される「エチオピア」と「日本」の姿勢を、《結束して対処すべきところを…争い続けた姿勢は、明らかに誤りである》と私が断じて記していることについては、「法廷外でも全てにおいて結束せずいがみ合っているわけでは無い」といいたくなるコーヒー業界関係者もいるかもしれない。
確かに例えば、「日本の市場からコーヒーの『付加価値』を学ぶ -開発途上国のコーヒー生産関係者が東京で研修に参加-」(JICA 2010年3月17日)の様なことも実行されていることは、私も承知しているつもりである。
しかし、だからこそ商標問題に関しては、「争い」の適切さや影響度をはかって対処するべき、と思うのであって、短慮で無様な仕儀であることの罪を相殺する反証に「研修」なんぞがあたるわけではないのである。やはり笑ってしまう…
 
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鳥目散 帰山人
(とりめちる きさんじん)

無類の珈琲狂にて
名もカフェインより号す。
沈黙を破り
漫々と世を語らん。
ご笑読あれ。

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