タイムパラドックス

ジャンル:グルメ / テーマ:コーヒー / カテゴリ:珈琲の記:2010 [2010年01月28日 00時30分]
『珈琲時間』
TAISEI MOOK(大誠社)
Vol.01 2008年11月発行
Vol.02 2009年4月発行
Vol.03 2009年12月発行
 
この雑誌(ムック)を発行する大誠社は誠晃印刷の子会社・出版部門に相当、コーヒー関係の雑誌を世に出す出版社としてはかなり毛色が変っている。そのためか、雑誌の中身や仕立ても一風変った感じで、洗練や高踏と離れ野暮ったさが臭う、けれど何となく憎めない温かみがある、今のところは。
 
Vol.01からして唸らされた。珈琲の鉄人と称して鈴木誉志男(サザ)・宮越陽一(宮越屋)・堀口俊英(HORIGUCHI)の3人を巻頭に並べた気合、後段にコーヒーを語る著名人として藤岡弘、・工藤夕貴を持ってくる感覚、間にはスイーツ番長こと清水好夫まで登場させる、この熱気と掟破り感。
 
Vol.02の発刊は前巻での予告2009年1月中旬がずれて春4月。で、著名人シリーズは(柴田や旭屋ではあり得ない)大西賢示=はるな愛! 早くもかなり怪しい雰囲気になってきたところで、次号予告は「癒しの空間で珈琲と戯れる」特集に夏を意識したカフェ記事満載で6月下旬発売である。
 
Vol.03がなかなか出ない、夏が過ぎ秋が過ぎ冬が来て…やっと出た。巻頭特集「焙煎師という名の仕事」って予告と全然違う!当然夏カフェ無し! 著名人シリーズも無くなっている!大丈夫かっ? 大丈夫なのである。当初の掟破り感は失われない証拠に、次号特集は春を意識したアウトドアコーヒー、2010年3月下旬発売予定だ! 大丈夫かっ? 大丈夫…だと思う、思いたい。
 
昨今はコーヒー関係のムックが濫発されているが、この『珈琲時間』ほど誌名に反して時間に横着かつ雑把なモノは無い。コーヒーカップを片手にゆっくり時間を過ごすどころか、ハラハラドキドキの珈琲サスペンス雑誌だ。
 
 
『珈琲時間』
豊田徹也 アフタヌーンKC(講談社)
 
新刊コミックを読まなくなってかなり久しいので、当然この漫画家も未見。「コーヒーをモチーフにした芳醇な短編集」という謳いに乗って入手した。
 
扉を開いて読み始めた瞬間に「これは少なくともハズレじゃ無い」確信、吉田秋生と谷口ジローという好みの漫画家を足して割った感じの画だから、ちょっと大友克洋を意識したような構図もあるし…みんな古いところだが。いかにも現代的な淡白さがあるストーリー展開だが、物語としての局所的な仕掛けは昭和世代の臭いがする…肝心の「コーヒー」の扱いも保守的だし。
 
第13話「田中ブックカフェ」の「あちゃー もう粉おしまいだったか……」に続く「ポールニューマンも深町丈太郎もこうやった」は俗だが泣けてくる。『動く標的』のニューマン(ルー・ハーパー)から43年、『新事件屋稼業・2』「愛は世界をほろぼす」の深町丈太郎から24年、ここで出がらしを出すか! 作中で「セカンドドリップ」と弁明させるあたりが今風の軟派な感じである。
 
これだけ作為的に語りも描写も自作他作に繋いでおきながら、陳腐にならない力量は、なかなかのものである。コーヒーカップを片手にゆっくり時間を過ごすどころか、ハラハラドキドキの珈琲ノスタルジアコミックだった。
 
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コメント

No title
珈子 URL [2010年01月29日 10時11分] [編集]

帰山人さんの解説を思い出しながらもう一度まんがを読み直します(笑)
今は熱いコーヒー風呂にどっぷりという感じですが、まだ確かめながらソロソロとしていたとき読みその後開いていませんでした。感性が鈍いのを自覚しました。トホホ。

この頃コーヒーの本で、写真の豆と解説がどう見ても??というのがあることに気付きました。
少し前の私だったら知らずにその通りに受け取るところです。「少し前の私」は一杯いると思いますので明らかな間違いはヤッパリいけないですよね。
それにしてもこの頃コーヒーの本が多いです。スタバ等の影響でコーヒー好きな若者が増えているのでしょうか?

to:珈子さん
kisanjin URL [2010年01月29日 20時50分]

『珈琲時間』(コミックの方)のように過去の名作を背景やモチーフに織り交ぜてくるタイプの漫画は、読み解きに個人差があらわれますねぇ。きっと私が見逃している点もたくさんあるでしょう。でも、そういうタイプだと看破できる嗅覚だけは失わないようにしたいし、その為には常に今の作品も(将来に過去の背景やモチーフに使われる前提で)記憶に留めておきたい…老化との戦いです。

コーヒー本激増は確かにスタバブーム以降ですから、それだけ関心の裾野が拡がったのでしょう。ひと昔前は伊藤博(故)の本が全て、ふた昔前は井上誠(故)の本が全て、みたいな状況よりも一見情報量は増えて結構なんですが、両故人のような深い探究心を感じられる「語り部」が不在の状況は寂しくも感じます。概論的な水準は昭和初期の本とあまり変わらないレベルでしかない、それが日本のコーヒー本の実状だと思っています。

No title
ねこや URL [2012年03月10日 00時33分] [編集]

『珈琲時間』
豊田徹也 アフタヌーンKC(講談社)

これは一回読んで即Book Offにリリースして
しまいました(--)
根がアート体質じゃないので、雰囲気重視の作品は
どうも肌にあわないのですよ。
珈琲テーマじゃないですが、「百姓貴族」は
オススメですよ^^

to:ねこやさん
帰山人 URL [2012年03月10日 18時41分]

オススメ、どうもありがとう。
荒川弘かぁ…手を出していない…いや漫画自体読むことを封じたんですよ随分以前に…それまでに手元のコミック本が数千冊になってしまって時間もカネも追いつかない状態になったので^^;;
でも、ねこやさんに限らず複数の達眼者に薦められているので、『百姓貴族』覘いてみます^^

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Author:kisanjin
鳥目散 帰山人
(とりめちる きさんじん)

無類の珈琲狂にて
名もカフェインより号す。
沈黙を破り
漫々と世を語らん。
ご笑読あれ。

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