トラの暑中見舞

ジャンル:グルメ / テーマ:コーヒー / カテゴリ:珈琲の記:2009 [2009年06月25日 01時00分]
少し早めの「暑中見舞い」を、私の頭の中の妄想で申し上げる。

 コンニチハ、僕はスマトラ虎(トラ)です。
 その名の通り、インドネシアのスマトラ島に棲んでいますが、仲間は数百頭だけ、
 国際自然保護連合(IUCN)のレッドリストでもCR(絶滅寸前)種になってます。
 僕たちが棲んでいるスマトラ島南部のBukit Barisan Selatan National Park
 (ブキ・バリサン・セラタン国立公園)は、ゾウやサイも含めて絶滅の危惧される
 野生生物の貴重な棲息保護区になっています。
 でも世界自然保護基金(WWF)報告書によると、この保護区の森林は違法な
 農地開拓により既に2割も消失しているそうです。
 何のための開拓かと言えば、コーヒー栽培です。
 
 WWFは、森林を破壊し僕たちを絶滅に追いやる違法な栽培コーヒーを、
 そうとは知らずにコーヒー消費国の輸入企業が購入している、と言っています。
 でも、僕は「知らずに」ではなくて「知っていて」買っている、と思っています。
 クラフト、ネスレ、ラバッツァ、スターバックス…、そして日本の商社も含めて、
 消費国52カ国のコーヒー関連企業が、僕たちを死に追いやっているのです。

 このことをコーヒー狂の帰山人という人物に話したところ、彼は
 「オレは無実だ。なぜならスマトラ島の南部で栽培しているのはロブスタ種だ。
 オレは昔から島の北部で採れるアラビカ種のコーヒー生豆しか使っていないぞ」
 と、トンチンカンな弁明をしていました。

 帰山人が好んでいるスマトラ北部でのアラビカ種コーヒーにも問題があります。
 品種や精製方法の独自性が失われてきていることに加えて、
 ブランドの名付けとかでも、スマトラ島住民の僕としては、吼えたくなることも…
 例を挙げれば、「マンデリン」関連のブランド。
 昔は、「世界一ウマイ」とまで評された、琵琶湖の2倍以上も大きいトバ湖の
 近辺で採れるコーヒー豆に対してのみ「マンデリン」が名乗られていました。
 さらに北のアチェ州で採れる豆は、「アチェ・アラビカ」とか、産地高原の名で
 「ガヨマウンテン」とか名付けて「マンデリン」とは区別していたのです。
 今でもアチェとかガヨとか名乗っている豆も残っていますが、ここ近年で
 激増し目立ち始めたのは「マンデリン」ブランドに頼ったネーミング。
 「スーパー・マンデリン」とか、アチェ州の全く別の湖周辺で採れた豆に
 「マンデリン・トバ・ブルー」とか…
 まあ、元来の「マンデリン」も僕らのように絶滅しかかった時があったようで、
 今の「マンデリン」すら本物とは言い切れないのだから、多少産地が拡がっても
 似たように上質の豆は「ぜーんぶ、マンデリン」でいいじゃない、ということかな。
 ただ、どうもこういう考え方は「実より名で売る」商売に見えて「イヤな感じだ」
 という意見では、帰山人と僕は一致した意見です。
 僕だって、いくら絶滅しそうでも、隣のジャワ島のジャワトラと同じ種類だとは
 言ってほしくありませんからね。ジャワトラは絶滅しちゃいましたけど。

 あ、そうそう、ごく最近では、「マンデリン・スマトラタイガー」なんて僕らの名前を
 ブランドにしたコーヒーも出回り始めたそうです。
 こちらは本来のマンデリン産地の上質な豆ではあるんですが、
 でもねぇ、同じコーヒーの栽培開拓で絶滅に追いやられている僕たちの名前を
 ブランド名にするのって、あのぉ~当事者としては複雑な気持ちなんですけど。
 どうも人間って生き物は、商売の為なら「虎の威を借る」のも辞さないらしい…
 人間って酷い生き物ですね…

どうして、妄想がスマトラタイガーで語られたのかは定かではない(?)が、
丑(ウシ)年の2009年も半分終わって暑中、早々と来年寅(トラ)年に
想いを馳せてしまったようである。
私も含めて、トラ年だから「スマ『トラ』島のマンデリンだ」とか「スラウェシ島の
『トラ』ジャだ」とか、考え始める時季もあっと言う間に迫ってこよう。だが、
そんなことより、少しでもいいから「コーヒーに殺されそうなスマトラ虎」のことを
憶えておけ、という自戒の念が語らせた妄想なのかもしれない。
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Author:kisanjin
鳥目散 帰山人
(とりめちる きさんじん)

無類の珈琲狂にて
名もカフェインより号す。
沈黙を破り
漫々と世を語らん。
ご笑読あれ。

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