太陰の彼方

ジャンル:グルメ / テーマ:コーヒー / カテゴリ:珈琲の記:2018 [2018年09月05日 01時00分]
  乗ってけ 乗ってけ 乗ってけと
   電信柱のぐんたいは やばさ世界に比(たぐ)いなし
  乗ってけ 乗ってけ 乗ってけと
   電信柱のぐんたいは ひれつ世界に双(なら)びなし
 
漫画『カフェでカフィを』(ヨコイエミ:著 集英社クリエイティブコミックス/集英社クリエイティブ:刊 2017)を、中条省平は「第22回 手塚治虫文化賞」(朝日新聞社)の「新生賞」に推して、《掌編連作を重ね、同一の登場人物や事物を再登場させることで世界の運命の不思議さを浮かびあがらせる手法に感心しました。絵柄も洗練されて、とてもおしゃれです》とコメントした。だがその推薦は受賞に届かず、別の作品に「新生賞」授賞が発表された2018年4月25日、続巻の『カフェでカフィを 2』が発売された。
 太陰の彼方 (1)
 《初巻には巻数が入っていないことから勘のよい方はすでにお気づきかと
  思いますが、2巻は当初は出る予定ではありませんでした。(略) 1巻が
  あまりにも私の想像を大きく超えた評価をいただいたために、2巻が世
  に出て行くときは嬉しいを通り越して恐ろしくもありましたが、おかげさま
  で、そう感じることすら贅沢な経験であったと思っています。》 (Webサ
  イト『ヨコイエミ マンガ・イラストレーション』 日記 2018年6月2日)
 太陰の彼方 (2)
『カフェでカフィを 2』について、巷間に「雰囲気がこなれてきて」とか「完成度が高くなった」とかいう感想もあるが、私はそう感じることすらできなかった。初巻に感じた《作為がやや目立ちすぎる》ところが、第2巻では作画だけでなくて《物語を立ち上がらせる》作劇にも及んでいる。作者の力(りき)みが痛痛しいを通り越して恐ろしくもある。「カフェでカフィを」シリーズは『officeYOU』で掲載が続いているようなので、駄作でないが発想の蓋然性がさらに薄くなったこと、そのエゴイズムの先にある具合を追ってみようとは思う。
 
漫画「シリーズ小さな喫茶店」(山川直人:著/KADOKAWA エンターブレイン:刊)を、第1巻『一杯の珈琲から』(2015)、第2巻『珈琲色に夜は更けて』(2016)、第3巻『珈琲桟敷の人々』(2017)と単行本(ビームコミックス)で刊行された都度に私は読んだ。そして、46回目の朔太郎忌である2018年5月11日、続巻で最終の第4巻『月と珈琲、電信柱』が発売された。長新太(1927-2005)にちょうど40年遅れで生まれた山川直人は、萩原朔太郎(1886-1942)の行年に達している。
 太陰の彼方 (3)
 《『コーヒーもう一杯』そして『小さな喫茶店』と、コーヒーと喫茶店の漫画を
  単行本にして9冊、お話にして103篇描いてきました。それもこれでお
  終いです。あ、でも、これから描くだろう漫画の登場人物も、やたらコー
  ヒーを飲んだり喫茶店に入ったりは、すると思います。》 (山川直人ブロ
  グ「地球の生活」 2018年5月11日)
 太陰の彼方 (4)
『月と珈琲、電信柱』の巻頭にある「午後の居場所」(連載第35話・収載第31話)を読んで、私は「あ、終わったな」と思った。この話は、「賢明にして慈悲深い読者諸君 どうか彼らをそのままに…… 問い詰めたり詮索したりすることなかれ」と締められている。著者がついに(?)「第四の壁」を破って訴えかけてしまったこの時点で、連作の流れは《これでお終い》なのだ。だからなのか、この第4巻に収められた計12話は、前3巻の計30話よりも話の切れ味が鈍い。そして、巻末の「どうして彼女は珈琲好きになったか」(第41話)と「さよならの手紙」(第42話)で、‘らしくない’コーヒーの蘊蓄をわざと厭味に織り交ぜて、「お返事はいりません さよなら」と終えている。さらに「あとがき」で著者は、《伝わらないように書いてるときもある》と結んでいる。山川直人は、何を拒んで何から逃げるのだろう? 時代? カフェ? カフィ? …そんなことは知らない。知る必要もない。私にとっては、どうして山川直人はコーヒー好きになったのかだけが問題なのだ。なぜなら私は、そんなことにだけ興味をいだくように生まれついた人間なのだから……
 
 太陰の彼方 (5)
 ♪ ドッテテ ドッテテ ドッテテ サードの 波に 波に 波に乗れ乗れ
   揺れて 揺られて 夢の珈琲 太陰(たいいん)の彼方(かなた) ♪
 
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鳥目散 帰山人
(とりめちる きさんじん)

無類の珈琲狂にて
名もカフェインより号す。
沈黙を破り
漫々と世を語らん。
ご笑読あれ。

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