うんぽこ、珈琲 前篇

ジャンル:グルメ / テーマ:コーヒー / カテゴリ:珈琲の記:2018 [2018年06月21日 23時00分]
昨2017年10月の月初と月末にコーヒー絡みのアンソロジーが発売された。この2冊のコーヒー本を私は読み逃していたが、遅ればせながらちょっと取り上げてみよう。
 
 うんぽこ、珈琲 (1)
庄野雄治は「コーヒーの日」が好きなのだろう、計4冊もコーヒー本を10月1日に出している(いずれもmille books:刊)。私は、『はじめてのコーヒー』(堀内隆志と共著/2012)と『コーヒーの絵本』(2014)を読んだが、『コーヒーと小説』(2016)と『コーヒーと随筆』(2017)は読んでいない。庄野雄治が編んだアンソロジーは、《『コーヒーと小説』というタイトルだけれど、小説の中には一切コーヒーは出てこない》(「はじめに」)から。『コーヒーと随筆』(「はじめに」)も、《新しいものは古くなるが、いいものは古くならない》という騙りが気に入らない。違うね。いいものも古くなる。古くなってもいいものがあれば、古くなってわるくなるものもある、それが真実。だが、《読んでいる時に詰まったり、引っ掛かったりする、すなわち思考する行為がない読書はつまらない》(『コーヒーと随筆』 「はじめに」)という庄野雄治の言には、同ずる。私が《詰まったり、引っ掛かったり》して面白かったのは、アンソロジーでも別のコーヒー本だけどね。
 
 うんぽこ、珈琲 (2)
『こぽこぽ、珈琲』 (杉田淳子・武藤正人:編/河出書房新社:刊 2017)
 
 うんぽこ、珈琲 (3)
杉田淳子と武藤正人による編集ユニット「go passion」は、飲食物のアンソロジーを多く手掛けている。例えば、PARCO出版の「アンソロジー」シリーズ(全6巻/カレーライス・お弁当・おやつ・ビール・そば・餃子/2013-2016)。そして昨秋に発売された『こぽこぽ、珈琲』は、河出書房新社の「おいしい文藝」シリーズ(2014-)の11巻目である。で、まず書名の「こぽこぽ」に、私はちょっと《引っ掛かった》。シリーズ既刊の書名には、「つやつや」(ごはん)・「こんがり」(パン)・「まるまる」(フルーツ)などがある。これらは、対象の食べ物の‘状態’を表わしている。また、「ずるずる」(ラーメン)・「ぱっちり」(朝ごはん)・「うっとり」(チョコレート)などは、食べる(た)人間の‘状況’や‘感情’を表わしている。「ひんやりと」(甘味)・「ずっしり」(あんこ)は、象徴の対象が食べ物にも人間にも捉えられるか(?)、何となくわかる。しかし、「こぽこぽ」(珈琲)には《詰まった》。 「ぐつぐつ」(お鍋)と同様に、製作過程をも示したのか? 「ぷくぷく」(お肉)以上に意味不明の「こぽこぽ」(珈琲)って何?
 
 うんぽこ、珈琲 (4)
『こぽこぽ、珈琲』は、『日本の名随筆 別巻3 珈琲』(清水哲男:編/作品社:刊 1991)以来で約四半世紀ぶりのコーヒーを話題にしたアンソロジーとして、ちょっと好い。抜き書きだらけの『作家の珈琲』(コロナ・ブックス編集部:著/平凡社:刊 2015)や『珈琲のことば』(箕輪邦雄:著/平凡社:刊 2016)は、(そもそもアンソロジーではないが)編者の恣意が効いて《読んでいる時に詰まったり、引っ掛かったり》し過ぎて読み疲れる。『こぽこぽ、珈琲』は、「はじめに」も「あとがき」もなく、ただただ31篇の随筆が並べられている、その潔さに好感。『こぽこぽ、珈琲』の31篇と『日本の名随筆 別巻3 珈琲』の41篇とを対照すると、「コーヒー哲学序説」(寺田寅彦)と「ピッツ・バーグの美人 本場「アメリカン・コーヒー」の分量」(草森紳一)と「可否茶館」(内田百閒)と「カフェ」(吉田健一)と「蝙蝠傘の使い方」(種村季弘)の5篇が重なっている。また、小島政二郎と植草甚一と村松友視と山口瞳と常盤新平の5人は、顔ぶれこそ重なっているが収録された作品が異なる。『こぽこぽ、珈琲』は、新たな26篇の収載で『日本の名随筆 別巻3 珈琲』の増補をちょっと成している。
 
『こぽこぽ、珈琲』には、《読んでいる時に詰まったり、引っ掛かったりする》ところがちょっとある。だから、意味不明の「こぽこぽ」というよりも、私には「うんぽこ」(un poco:ちょっと)なコーヒー本である。「うんぽこ、珈琲」の話は終わらない。 〔続く
 
コメント (0) /  トラックバック (0)

コメント

この記事にコメントする

トラックバック

この記事へのトラックバックURL
http://kisanjin.blog73.fc2.com/tb.php/1138-43a445ee
編集

kisanjin

Author:kisanjin
鳥目散 帰山人
(とりめちる きさんじん)

無類の珈琲狂にて
名もカフェインより号す。
沈黙を破り
漫々と世を語らん。
ご笑読あれ。

11 ≪│2018/12│≫ 01
- - - - - - 1
2 3 4 5 6 7 8
9 10 11 12 13 14 15
16 17 18 19 20 21 22
23 24 25 26 27 28 29
30 31 - - - - -
Powered by / © Copyright 帰山人の珈琲漫考 all rights reserved. / Template by IkemenHaizin