線引きは俗

ジャンル:映画 / テーマ:映画感想 / カテゴリ:観の記:映面 [2018年06月11日 04時30分]
カンヌ国際映画祭は新たな線引きで2018年(第71回)のコンペティション部門からNetflix(ネットフリックス)作品を締め出した。この線引きにネットフリックスは反発してカンヌ国際映画祭から撤退した。そもそも‘映画’とは何か? 劇場公開の映画とネット配信の動画の間に線引きをするべきなのか否か? そんなことで揉めているうちに‘線引き’ではなくて‘万引き’を描いた映画がパルムドールを受賞した。…拾ったんです。捨てた人ってのは他にいるんじゃないですか?
 線引きは俗 (1) 線引きは俗 (2)
 
『万引き家族』 観賞後記
 
柴田初枝(樹木希林:演)・信代(安藤サクラ:演)・亜紀(松岡茉優:演)・りん(ゆり/じゅり/佐々木みゆ:演)ら「万引き家族」が住む家は、「富士珈機 東京支店」から50mにある空き古家だった。柴田治(リリー・フランキー:演)・祥太(城桧吏:演)の父子がコロッケを買ったのは、「カフェ・バッハ」から1kmにあるジョイフル三ノ輪商店街の「肉の富士屋」だった。コロッケは万引きされない。「肉の富士屋」でコロッケは不可視だからだ。…盗んだのは、絆でした。
 線引きは俗 (3)
 
 《…特に震災以降、世間で家族の絆が連呼されることに居心地の悪さを感
  じていました。絆って何だろうなと。だから犯罪でつながった家族の姿を
  描くことによって、あらためて絆について考えてみたいと思いました。》
  (是枝裕和:談/『万引き家族』Webサイト Director's Interview)
 
映画『万引き家族』を観たのは、監督(原案・脚本・編集)である是枝裕和の言に惹かれたからだ。私は《「絆(きずな)」を無闇に口にする直接に罹災されていない者者にも言っておこう、津波に流されてしまえ!》と思い、また《「絆」(きずな)の語を見ると反射的に「いいね!」ボタンを押す日本人は、国賊である》と思っていたし、今でもそう思っている。万引きは‘賊’であるが、安っぽい線引きも‘賊’である。
 
 《作品内にわかりやすく可視化されている監督のメッセージなど正直大した
  ものではないと僕は考えている。映像は監督の意図を超えて気付かな
  い形で「映ってしまっている」ものの方がメッセージよりも遥かに豊かで
  本質的だということは実感として持っている。》 (是枝裕和 「「invisible」
  という言葉を巡って 第71回カンヌ国際映画祭に参加して考えたこと」/
  Webサイト『KORE-EDA.com』 2018年6月5日)
 線引きは俗 (4)
 《「あなたにとって映画とは何ですか?」(それにしても愚かな質問ですね)
  と聞かれたら「知らないね」と答える人。「あなたはこの映画をつうじて
  何を訴えたいのですか?」と聞かれたら「べつに」と答える人。こういう
  人の映画を見ましょう。》 (内田樹 「黒澤明監督ご逝去」/Webサイト
  『おとぼけ映画批評』 1998/後に『うほほいシネクラブ 街場の映画論』
  文藝春秋:刊 2011 に収載)
 
 線引きは俗 (5)
是枝裕和監督の作品を今まで劇場で観たことが私は一度もなかったのだが、ともかく今般の『万引き家族』は観た。そして、「《犯罪でつながった家族の姿を描く》映画はどうでしたか?」と訊かれたら、私は「知らないね」と答える。「この映画を通じて何を感じたのですか?」と訊かれたら、私は「べつに」と答える。演者の芝居は悪くないけれど、映画としては《正直大したものではない》小さな物語だから。「ナントカ家族」の映画ならば、石井聰互監督の『逆噴射家族』(1984)とか周防正行監督の『変態家族 兄貴の嫁さん』(1984)とかの方がずっと面白い。こういう線引きは‘俗’?
 
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鳥目散 帰山人
(とりめちる きさんじん)

無類の珈琲狂にて
名もカフェインより号す。
沈黙を破り
漫々と世を語らん。
ご笑読あれ。

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