食の幻想 いつつぶす?

ジャンル:グルメ / テーマ:これは美味い!! / カテゴリ:食の記 [2018年05月22日 01時30分]
「食(メシ)の記号論」という興味深いテーマで日本記号学会第38回大会が名古屋で催され、マンガが描く食も論じられるらしい…面白そうだ。学会員でなくても聴講できるので、行ってみよう。おっと、その前にマンガの中の食について村上知彦が15年ほど前に語っていた、その論考を読み返す。食をテーマにしたマンガとして『美味しんぼ』から始まって『包丁人味平』・『クッキングパパ』・『夏子の酒』などが取り上げられ、マンガが描いた食として『少年児雷也』から「ララミー牧場」や「偏食」などが論じられ、最後はこう締められている。
 食の幻想 いつつぶす? (1)
 
 《“グルメ・料理まんが”は、確かに「食」を主題としたまんがではある。それ
  は日本の食文化が、大衆的なレベルで「食」を趣味や議論の対象とする
  までに成熟したことの証しでもあるのだろう。しかし、まんがが描きだして
  きた「食」の風景は、実はその先にこそあるのだろう。バブル崩壊を経て、
  グローバル化の波にもまれるいま、日本人の「食」をめぐる官能はどの
  ように変化し、何を切実に欲望しているのか。それらを抽出するために
  は、身体の感受性に敏感な少女まんがやエロまんがあたりの、より詳細
  な検討が必要になるだろうというのが、最終的に描かれるべき見取り図
  のいま思い浮かぶ構図である。》 (村上知彦 「まんがの中の〈食〉 “グル
  メ・料理まんが”は何を描いてきたか」/『國文學』7月臨時増刊号 古典
  文学から現代文学まで「食」の文化誌/學燈社:刊 2003)
 
さて、《日本人の「食」をめぐる官能はどのように変化し、何を切実に欲望しているのか》…私は日本記号学会の大会2日目、2018年5月20日の午後の部を覘いてみた。
 
 食の幻想 いつつぶす? (2)
日本記号学会第38回大会 「食(メシ)の記号論」 (2日目)
(名古屋大学 情報学研究科棟1F 第1講義室)
◎第2セッション「マンガが描く食──『目玉焼きの黄身 いつつぶす?』と
 行為としての〈食べること〉」 司会:佐藤守弘
 吉村和真 「マンガは何を食べてきたのか」
 おおひなたごう 「『目玉焼きの黄身 いつつぶす?』をめぐって」
◎第3セッション「全体討論──食は幻想か?」 司会:室井尚
 山口伊生人「「ヘボ追い」ってなに?」
 
以下、備忘語録(順不同:敬称略)。
作る(制作)『クッキングパパ』⇒料理(作品)『美味しんぼ』⇒食べる(受容)「夜行」・『ダンドリくん』。〔佐藤〕/『ロストワールド』:「葉緑素を持った女陰」:食←生→性。『1日外出録ハンチョウ』第19話「混沌」(名古屋編)。最近のグルメ漫画で一番元気がいいのはコンビニ漫画。〔吉村〕/朗読紙芝居(?)。二郎とみふゆは自分と嫁。ギャグよりストーリーと食べ方をどう絡ませるのかが難しい。食マンガはエロマンガに近い(前フリいらないという人多い)。食べるシーンは好きじゃない(単調or恥ずかしい)。〔大日向〕/「ヘボ追い」いつ・どこで・どうやって:創造性をあらゆる部分に伴った文化。ハチの子の位置づけ:都市と付知町(身の回りにいるものあるものを採る)。〔山口〕/食べることと食べないこと(檜垣立哉):自然界の‘食らいあい’から距離をとるために料理する:『ソイレント・グリーン』。「手作り」という幻想(久保明教):食べさせたい・食べなきゃいけない。食の表象:皆根拠がない拘りに確信持っている。〔室井〕
 食の幻想 いつつぶす? (3) 食の幻想 いつつぶす? (4)
 
「マンガが描く食」については、‘食と性’の話題も含めて村上知彦曰くの《最終的に描かれるべき見取り図》が展観されたように思う。「食は幻想か?」については、マンガや‘ヘボ追い’の話題も含めてレヴィ=ストロース曰くの《料理の自然の側に位置する消化と、文化の側に位置する調理法から食卓作法までの広がり》(『神話論理』III 「食卓作法の起源」)が検証されたように思う。そして最好なのは(秋庭史典大会実行委員長はコンビニの値引き弁当を冷たいまま食べ続けている)「アキバ問題」で、《一番自由なのは秋庭さんかもしれない》(室井尚)や《アキバ問題はない。僕たちはみんな秋庭さんだ》(吉岡洋)などに爆笑。なるほど「アキバ問題」もまた、《食卓作法について言えば、それは調理の仕方に上乗せされた摂取の作法であり、ある意味では二乗された文化的加工とも見なすことができる》(「食卓作法の起源」)のである。「食(メシ)の幻想 いつつぶす?」…そう笑いたくなる実に楽しい聴講だった。
 
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鳥目散 帰山人
(とりめちる きさんじん)

無類の珈琲狂にて
名もカフェインより号す。
沈黙を破り
漫々と世を語らん。
ご笑読あれ。

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