よそ者への愛

ジャンル:映画 / テーマ:映画感想 / カテゴリ:観の記:映面 [2018年03月10日 23時30分]
昔むかし、嘘や苦痛のない魔法の王国が地面の下にあった。その国の王女は人間の世界を夢見て地上へ出たが、全ての記憶を失って魂だけが少女オフェリア(イバナ・バケロ:演)に宿った。1944年、スペインの山間に王国の従者パン(ダグ・ジョーンズ:演)が現れてオフェリアへ3つの試練を与え、少女は幻想の国で永遠の幸せを探したが継父ヴィダル(セルジ・ロペス:演)に殺された。フランコ政権軍の大尉であるヴィダルはレジスタンスに殺された。パンはペイルマンからギルマンへ姿を変えて南米アマゾンへ移り住んだ。それから18年、捕獲された不思議な生きもの(ギルマン/ダグ・ジョーンズ:演)がアメリカのボルティモアの政府機関へ運ばれてきた。そのオッカム航空宇宙研究センターには、魔法で甦ったオフェリアとヴィダルもいた。オフェリアは声も失って熟女の清掃員イライザ(サリー・ホーキンス:演)となり、ヴィダルはストリックランド大佐(マイケル・シャノン:演)として機関を総ていた。ストリックランドの魔の手がギルマンとイライザに迫る。王女イライザはギルマンと共に魔法の王国へ帰ることができるのか?──切なくも愛おしい愛の物語。
 よそ者への愛 (1) よそ者への愛 (2)
 
『シェイプ・オブ・ウォーター』(The Shape of Water) 観賞後記
 
映画『シェイプ・オブ・ウォーター』(2017)は、ギレルモ・デル・トロ(監督・脚本・製作)による『パンズ・ラビリンス』(2006)の続編(?)だった。童話「人魚姫」(ハンス・クリスチャン・アンデルセン/1936)を何もかも逆に設定し直して、映画『大アマゾンの半魚人』(ジャック・アーノルド監督/1954)を元に、映画『スプラッシュ』(ロン・ハワード監督/1984)を焼き直して、小説『美女と野獣』(ガブリエル=シュザンヌ・ド・ヴィルヌーヴ/1740)のような異類婚姻譚に仕立てたもので、それ以上でもそれ以下でもない、《切なくも愛おしい愛の物語》として退屈な凡作である。
 よそ者への愛 (3) よそ者への愛 (5)
 
 《曖昧で新鮮味のない考え方かもしれないが、愛こそが、恐怖や憎悪によっ
  て堕落したあらゆるものに効く解毒剤だ。しかし、僕たちは感情を恐れる
  時代に生きている。愛についての発言が愚かで浅はかだと思われるリス
  クを避けたいがため、僕たちはその本質について口にするのをためらっ
  てしまうのだ(ただし、愛を語るのが愚かで浅はかだとするのが、既存理
  念に対して懐疑的、嘲笑的な態度をとるシニシズムだと解釈するなら、そ
  れはそれで洗練された思考だと言えなくもないのだが)。(略) 僕は信じ
  ている。僕たちは互いに愛し合うことができる一方、“違っている”ことや
  “よそ者”であることを恥ずべき存在だとする者たちと距離を置くこともで
  きるのだ、と。でっち上げのイデオロギーに感化されずやり過ごせるので
  あれば、最後には敵などいなくなるだろう。僕はつまり、僕以外と常に合
  わせ鏡にある。“よそ者”はいつだって僕たちなんだ。》 (ギレルモ・デル・
  トロ 序文「創造されるべき形」/『ギレルモ・デル・トロのシェイプ・オブ・
  ウォーター 混沌の時代に贈るおとぎ話』 ジーナ・マッキンタイヤー:著 阿
  部清美:訳 DU BOOKS:刊 2018)
 
 よそ者への愛 (4)
ギレルモ・デル・トロが映画『シェイプ・オブ・ウォーター』へ込めた、その熱い‘愛’は私にも捉えられた。ただし、《曖昧で新鮮味のない》作品に対して《懐疑的、嘲笑的な態度をとる》ことを私は躊躇しない。《“違っている”ことや“よそ者”であることを恥ずべき存在だとする者たちと距離を置くこと》は、‘愛’なのか? でっち上げの‘愛’に感化されずやり過ごせるのであれば、私は『シェイプ・オブ・ウォーター』を観に行かなかっただろう。私は信じている。‘愛’ばかりでっち上げすぎると‘粋’(いき)じゃなくなるのだ、と。《“よそ者”はいつだって僕たちなんだ》と言うギレルモ・デル・トロよ、私はいつだって“よそ者”への愛に対しても“よそ者”なんだ。本当に《切なくも愛おしい愛の物語》とは、そういうものだろう。
 
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Author:kisanjin
鳥目散 帰山人
(とりめちる きさんじん)

無類の珈琲狂にて
名もカフェインより号す。
沈黙を破り
漫々と世を語らん。
ご笑読あれ。

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