珈琲苦諦

ジャンル:グルメ / テーマ:コーヒー / カテゴリ:日本珈琲狂会 [2018年02月06日 01時00分]
日本珈琲狂会(Coffee Lunatic Club of Japan:略称CLCJ)は、2010年の2月6日に生まれた。創設8周年を迎えた今般、コーヒーの真相は苦(にが)い飲料であると改めて示し、コーヒーの苦諦(くたい)を想う。
 
 珈琲苦諦 (1)
 《…そして椅子に座ってコーヒーを一口呑んでみる。頗る苦い。恐らく苦味
  丁幾(くみちんき)でも規那(きな)薬でもこんなに苦くはないと思ふ。そこ
  で彼は砂糖を五杯拾杯入れた。そしてまた試みに呑んでみる。やはり苦
  い。また入れる、やはり苦い。いくら入れても、砂糖の甘みと、コーヒーの
  苦味とが一處にならない。砂糖は砂糖で甘過ぎ、コーヒーはコーヒーで
  苦過ぎる。ベルグソンは物の流動を例へて水に砂糖を入れるともうそれ
  は水でない砂糖でないと云ったけれど、此のコーヒーはいくら砂糖をいれ
  ても、砂糖は砂糖、コーヒーはコーヒーである。彼は泣き面をした。けれ
  ども、空腹が切りに時間と戦ふ資力を要求するので、彼は仕方なく、渋
  面を顰蹙して焦げたコーヒーを飲出した。窓の外の日は翳って風が吹き
  荒んで来た。》 (田代倫 「苦いコーヒーを呑む男」/『悪魔の伝導とその
  報告書』pp.229-230 隆文館:刊 1921)
 
珈琲二苦とは、本質が無い‘波’を求め続ける「内苦」と、カフェインの害を不当に説かれ続ける「外苦」である。
珈琲三苦とは、やたらと苦みを忌み嫌う「苦苦」(くく)、焦げた臭いや渋い味まで苦味とする「壊苦」(えく)、負の側面に目を瞑り耳を塞ぎ口を噤む「行苦」(ぎょうく)である。
珈琲四苦とは、威勢だけで追う「勢」(せい)、流行に弄ばれる「弄」(ろう)、麝香猫の糞豆を慕う「猫」(びょう)、恣意を騙り恣行する「恣」(し)である。
珈琲八苦とは、四苦(勢・弄・猫・恣)に加えて、愛する豆が生産されなくなる「愛別離苦」(あいべつりく)、怨み憎んでいる業界人にまで会釈する「怨憎会苦」(おんぞうえく)、求める香味が得られない「求不得苦」(ぐふとくく)、色・種・層・業・式の5要素に執着する「五蘊盛苦」(ごうんじょうく)を合わせたものである。
 
 珈琲苦諦 (2)
 雨にも負けて 風にも負けて
  虫にも錆(さび)の病(やまい)にも負けて
 凌侮(りょうぶ)の心を持ち
  欲はなく 決して集(すだ)かず
  いつも静かに嗤(わら)っている
 一年に果実十封度(ポンド)で
  豆と少しの珈琲基塩(カフェイン)を産み
 あらゆることで 自分の感情を入れずに
  よく見聞きしわかり そして忘れず
 山の坂の甘蕉(バナナ)の陰(かげ)の
  小さな枯葉敷きの畑に居て
 東にビョーキのマニアあれば
  行って説教してやり
 西に憑(つ)かれたプロあれば
  行ってその味に難を付け
 南に競(せ)りそうな人あれば
  行って高値でなくてもいいと言い
 北にフェスやセミナーあれば
  行ってつまらないからやめろと言い
 日照りのときは涙を流し
  寒さの夏はおろおろ歩き
 皆(みんな)に唐変木(とうへんぼく)と呼ばれ
  褒(ほ)められもせず 苦(く)に病まれる
 そういうモノに 私はなりたい
 
9年目を迎えた日本珈琲狂会と、その主宰である鳥目散帰山人は、苦に病まれて狂ったままに、コーヒーの苦諦を追究する。
 
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コメント

No title
嶋中労 URL [2018年02月07日 14時36分]

この『雨ニモマケテ』はいいな。みんなに唐変木と呼ばれ、褒められもせず……そういうモノにあなたは充分なってます。ほんにあなたはつむじ曲がりの風狂遊士だね。でも、そんなあなたがいないと世の中つまらない。この男、劇物につき近寄るべからず。遠巻きにして石を投げるべし。ついでにわが愚弟の苦諦にも心を寄せるべし。

to:嶋中労さん
帰山人 URL [2018年02月08日 13時01分]

労師、そう言っていただければが私には何よりも嬉しいところです。ありがとう。でも実は、《私たちは‶酔狂人〟であることに大いなる誇りをもったほうがいい》と記された労師を後ろから追っかけているだけなんですがねぇ…

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Author:kisanjin
鳥目散 帰山人
(とりめちる きさんじん)

無類の珈琲狂にて
名もカフェインより号す。
沈黙を破り
漫々と世を語らん。
ご笑読あれ。

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