芽か荷か

ジャンル:学問・文化・芸術 / テーマ:art・芸術・美術 / カテゴリ:観の記:美面 [2018年01月07日 05時30分]
文化庁メディア芸術祭の地方展が愛知(ナゴヤ)にやってきた。はてさて‘メディア芸術’とは何だろう? 文化芸術基本法(旧:文化芸術振興基本法)に拠れば、‘芸術’(第8条)でも‘伝統芸能’(第10条)でも‘芸能’(第11条)でも‘生活文化’や‘国民娯楽’(第12条)でもなくて、《映画、漫画、アニメーション及びコンピュータその他の電子機器等を利用した芸術》を‘メディア芸術’(第9条)というらしい。‘メディア芸術’なんて国に規定された虚ろな言葉は愚劣でどうでもいいし、愛知展は「ヒトを超える、芸術。」とか「人間存在さえも超えるような、機械の、機械による、機械のための芸術。」とか人を食ったようなキャッチコピーを掲げている。腹立たしいので観てみよう。
 芽か荷か (1) 芽か荷か (2)
 
文化庁メディア芸術祭愛知展 「MECÂNICA -私と私の次なるもの-」
(ナディアパーク/デザインセンタービル2F・3F・4F)
 
 《愛知展では、ここ20年の間に制作されてきたアート、エンターテインメント、
  漫画、アニメーション各分野の作品群から、「人工知能/人工生命なるも
  の」を感じ、考えることをテーマに28点の作品を選定して展示。アンドロ
  イドと人工生命創造という二つの領域の融合により開発された世界初公
  開となる機械人形「Alter(オルタ)2」や、デジタル時代において新たな弔
  いの形を表現する「デジタルシャーマン・プロジェクト」など、最先端かつ
  ユニークなアート作品を見ることができる。》
  (「人間の未来 ここに」/『中日新聞』 2018年1月6日)
 
 芽か荷か (3)
2018年1月6日訪。2階アトリウムでのマンガとアニメーションの展示は、漫画「PLUTO」に関する長崎尚志の随想が好かっただけで、商業作品から抜き出しただけの雑なパネルばかり。3階デザインホールに展示されたデジタルアートとしての商業ゲームもただ置いてあるだけ。この階では、アート部門の「(不)可能な子供、01:朝子とモリガの場合」(長谷川愛)とアニメーション部門の「ムーム」(堤 大介/ロバート・コンドウ)が面白かった。
 
 芽か荷か (4) 芽か荷か (5)
展覧会の題通りに「MECÂNICA」(メカニカ)らしかったのは、4階デザインギャラリーに展示された「Alter(オルタ)2」(代表:石黒浩/池上高志)と「デジタルシャーマン・プロジェクト」(市原えつこ)だけ。う~ん、いずれもよくできているロボットなのだろうが、例えば鼻をほじったり貧乏揺すりをしたりするわけではないので、この先で《ヒトを超える》とも思えない。いや、そもそも《人工知能/人工生命なるもの》が追うべき存在に人間は足るのだろうか?
 
トークセッションⅠ「MECÂNICA《メカニカ》の開催を迎えて」を聴く。河村陽介氏はインフルエンザ罹患で欠席。市原えつこ氏と関口敦仁氏の話しっぷりは拙いけれども実直で、各自の作品の来歴は面白くて聴き応えがある。「名古屋国際ビエンナーレ ARTEC」(1989-97)から「ユネスコ・デザイン都市なごや」(2008-)まで、ご当地ナゴヤのお手盛り喧伝に終始する江坂恵里子氏の話運びにうんざりする。森山朋絵氏も「名古屋はメディアアート・メディア芸術の聖地」と繰り返し述べたが、そういうヨイショは無用だろう。
 
展覧会で作品に贈賞理由や講評を付し掲げても罰は当たらないだろうに、気が利かない展示だらけで文化庁も運営委員会も仕事をしているとは言えない。メディア芸術祭の地方展、愛知展「MECÂNICA」はもちろん先行した石垣島展「ひかりきらめくイマジネーション」にしろ後続する京都展 「Ghost」(ゴースト)にしろ、とってつけたような無理矢理のテーマ付けは酷い。それとも、この展覧会自体が日本の文化芸術に《新たな弔いの形を表現する》試みなのか?
 
 芽か荷か (6) 芽か荷か (7)
ナディアパークを去って、大須観音を覘きながら、その後に星屑珈琲でコーヒーを喫しながら考える。文化庁メディア芸術祭、これを続けていれば《私の次なるもの》が芽を出すのか? 芸術を規定して顕彰して出陳することは民間には荷が重いのか? だから「MECÂNICA」は「芽か荷か」(メカニカ)なのか? 人間が《機械の、機械による、機械のための芸術》と嘯いても、‘メディア芸術’の未来は楽しくない。
 
コメント (0) /  トラックバック (0)

コメント

この記事にコメントする

トラックバック

この記事へのトラックバックURL
http://kisanjin.blog73.fc2.com/tb.php/1095-8275f14e
編集

kisanjin

Author:kisanjin
鳥目散 帰山人
(とりめちる きさんじん)

無類の珈琲狂にて
名もカフェインより号す。
沈黙を破り
漫々と世を語らん。
ご笑読あれ。

09 ≪│2018/10│≫ 11
- 1 2 3 4 5 6
7 8 9 10 11 12 13
14 15 16 17 18 19 20
21 22 23 24 25 26 27
28 29 30 31 - - -
Powered by / © Copyright 帰山人の珈琲漫考 all rights reserved. / Template by IkemenHaizin