壊された珈琲

ジャンル:グルメ / テーマ:コーヒー / カテゴリ:珈琲の記:2009 [2009年03月20日 01時00分]
新留勝行氏の『野菜が壊れる』(集英社新書)を読了した。農薬漬け化学肥料漬けの栽培で「野菜が壊れ」、土地は死に、家畜は疲弊し、負の連鎖として肉も調味料などの加工食品も「壊れ」ていく経緯を示した本である。本書の「あとがき」に「コーヒー」が登場するとは、読み進めるまで気がつかなかった。
 
《一九九四年、ブラジルのサンパウロ近郊でコーヒー栽培が危機に瀕しているという話が飛び込んできました。グアラチンゲターというその町はブラジルコーヒー発祥の地とのことで、かつてはサンパウロまで見渡すかぎりコーヒー畑が続いていたそうです。それが、コーヒーばかりか、作物が何も育たなくなってしまったというのです。(中略)土壌はpH四・〇以下の酸性で、飲み水も汚染されていました。》
 
新留氏はこの不毛の大地を回復するべく申し出るが、当時のグアラチンゲター市長ネルソン・アントニオ氏は「この土地を荒らした日本人は悪魔の手先だ。会いたくない」と言い放ったらしい。それは、《…一九七〇年代、日本政府は、移住した日本人の土地を確保する代わりにブラジルに対して無償で化学肥料を提供し、その時以来の化学肥料使用がこの荒廃を招いたというのです。》という理由からである。
 
こうした「痛い」話はコーヒー関係にも多々あるので、そのえげつなさは想定の内だが、ここでも「ブラジル移民史の影」を知らされて、陰鬱な気持ちになる。
 
また、ブラジルでは歴史的に主たるコーヒー産地が移動してきているが、その要因として霜害・病害などの回避や需要増に対応した技術改良などがとりあげられている。しかし、このグアラチンゲター一帯を不毛の大地にした理由が、他の産地移動の要因にもなったことは、想像に難くない。
 
昨2008年は「日本人ブラジル移住100周年」であり、それを記念した「日本ブラジル交流年」であり、私もコーヒー絡みで幾つかのイベントに参加した。自らの賀状にも交流年をうたい、「記念切手」「記念硬貨」も入手し、と興じていたのだが、やはりと言うべきか、浮かれた後には沈むことあり。
 
日本の化学肥料がブラジルのコーヒー危機を招く(?)、負の産地移動。「コーヒーに負を与える日本人」とでも言うべき、ありがちで深刻な課題発見。
サンバをB.G.M/にしても陽気になりきれない、苦いブラジルコーヒーの話である。
 
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鳥目散 帰山人
(とりめちる きさんじん)

無類の珈琲狂にて
名もカフェインより号す。
沈黙を破り
漫々と世を語らん。
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