音と場所 PiM

ジャンル:学問・文化・芸術 / テーマ:art・芸術・美術 / カテゴリ:観の記:美面 [2017年08月13日 05時30分]
IAMAS(イアマス)は岐阜県が1996年に設立して2012年に廃止した国際情報科学芸術アカデミーの略称だったが、今は2001年に併設した情報科学芸術大学院大学の無理な英名‘Institute of Advanced Media Arts and Sciences’の略称としてすり替え残されている。芸術がハコモノ行政に弄ばれた典型として墓碑銘の感がいやます。岐阜県美術館は情報科学芸術大学院大学との連携企画事業「IAMAS ARTIST FILE」を2013年から催して、今般は第5弾をやっている。2017年8月11日には関連のトークイベントもあるし、AiMの公開演奏もまたある。なんやろーね、行かなかんわ。
 
IAMAS ARTIST FILE #05 前林明次 「場所をつくる旅」 (岐阜県美術館:展示室3)
 音と場所PiM (1)
 《四つのパートから成る作品の中心になっているのは、岐阜県美術館が
  所蔵する山本芳翠の《琉球漁夫釣之図》と、前林が沖縄で採録してき
  た音源を混ぜ合わせた音響のインスタレーション。油絵が暗闇から浮
  かび上がる空間には4chサラウンドシステムから波の音が響き渡り、
  そこに沖縄のさまざまな場所の環境音が重なっている。(略) 明治20、
  21年ごろに描かれたという油絵と、現在の音の間には130年近い隔
  たりがある。その間に沖縄は、日本が地政学的に抱えてきた問題を
  象徴的に示す場となった。だがその「問題」は作品では前景化されな
  い。 130年前と現在、絵画と音、観ると聴く、美術館と外、ここ・岐阜
  と遠い場所・沖縄。それらの間にある膨大な情報とさまざまな関係性
  への想像は、体験者自身にゆだねられている。》 (千葉恵理子 「過去
  を見て 今を聴く」/『朝日新聞』愛知版 2017年8月2日) 
 音と場所PiM (2) 音と場所PiM (3)
前林明次氏の「場所をつくる旅」は《風景画の音によるアップデート》だそうだが、私の《関係性への想像》では保守王国という場所で琉球処分の画に占領軍の音が聴こえる。山本芳翠の〈琉球漁夫釣之図〉を葛飾北斎の〈琉球八景〉にすり替えたならば、《関係性への想像》では冊封使録の挿絵に己酉の乱の音が聴こえるのだろうか? なんやろーね。
 
トークイベント 「音・場所・表象」 (岐阜県美術館:講堂)
 音と場所PiM (4) 音と場所PiM (5)
松井茂氏と柳沢英輔氏と前林明次氏による鼎談を聴く。以下、雑な聴講メモ。
〔松井茂〕 映画はトーキーになって何か重大なものを失った。 『ラ・シオタ駅への列車の到着』(リュミエール兄弟) 『セザンヌ』(ストローブ=ユイレ) 音と映像の同調の困難さ。 オスプレイの音が出たとき「出たぁ」という感じ、前林作品は極めて映画的な作り方。
〔柳沢英輔〕 美術館というモノを展示する場所で音を展示する難しさ。 超音波を可聴域に変換した「Ultrasonic Scapes」とエオリアンハープによる「Ferry Passing」の紹介。 絵画や映像にはフレームがあるが音にはフレームがない。
〔前林明次〕 感覚的な衝撃を直に受けないようにパッケージ化して映像を無害化する、ある種の耐性をつける。 二重の合成、沖縄の現実が合成されている。 音が持っている同期以外の意味、同位。 記録ではなくて記憶になった時に作品になる。
松井さんの音の話は、面白いが厭らしい。柳沢さんの音の話は、素直だが利己的。松林さんの音の話は、上品だが落ちない。鼎談の最後の方で出てきた「ウォークマン」の話を私なりに脳内処理する。‘聴くために録る’テープレコーダーと‘録ったものを聴く’ウォークマン、サウンドアートの展示とトークショウでの解説、いずれも音と場所の断絶を示している《関係性への想像》。なんやろーね。
 
「アーティスト・イン・ミュージアム AiM 2017」 (岐阜県美術館:実習棟)
 音と場所PiM (6) 音と場所PiM (7)
5日前と同様に永田砂知子氏が〈土の音〉を即興で演奏するが、今般は正村暢崇氏が舞踏で加わったことで、催しの焦点が変わった。寛ぎの時間は失われて緊張の雰囲気、演奏の聴衆(オーディエンス)が舞踏の観衆(スペクテーター)に変って、響く音までこうも変わるのか。その舞台としては(私が観逃がした13時からの)多目的ホールの方が相応しかっただろう、(私が観た16時半からの)実習棟での上演は前回の方が好かった。今般の「PiM」は、「パーティシパント(関与者)・イン・ミュージアム」ではなくて「パフォーマー(演者)・イン・ミュージアム」だ。作家(渡辺泰幸氏)らと少談して会場を去る。サウンドとインスタレーションとパフォーマンス、音と場所と表象、それらの連関と断絶とすり替えを5日ぶりに再訪した岐阜県美術館で味わい楽しんだ。
 
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鳥目散 帰山人
(とりめちる きさんじん)

無類の珈琲狂にて
名もカフェインより号す。
沈黙を破り
漫々と世を語らん。
ご笑読あれ。

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