私的珈琲論序説~(2)直火焙煎派 その2

ジャンル:グルメ / テーマ:コーヒー / カテゴリ:私的珈琲論序説 [2009年02月06日 00時04分]
(承前)
 
さて「直火」対「熱風」という論争は、世で様々な焙煎機が使用される中で、
焙煎する豆のバッチが数百グラムから数十キログラムの場合で、
尚且つ、いわゆる「ドラム式」といわれる焙煎機を使用する場合に語られる。
これが工場用ともいえる数百キログラム超の大型焙煎機を対象に、
論議されたことを私は聞いたことがない。
つまり、私がここで言いたいのは、コーヒー生豆を焙煎する際に、
様々な機器と多様な手法を選択できる中で、
「直火」対「熱風」論争はごく限られた範疇での議論でしかない、
という認識を前提にするべきだ、ということである。
 
「ドラム式」といわれる回転釜による焙煎機に限定して語ると、
俗に「直火式」「半熱風式」「熱風式」と分類するケースが多い。
この分類では、熱源が回転釜の下方に位置されており、
熱源の空間と回転釜の空間がほぼ一体化している構造が「直火式」と「半熱風式」であり、
熱源の空間と回転釜の空間が分離している構造を持つのが「熱風式」である。
日本国内の個人店主規模の自家焙煎珈琲店のほとんどが使用している焙煎機は、
「直火式」か「半熱風式」であり、(ドラム式の)「熱風式」を導入するケースは少ない。
ところで、昔ながらややこしいのは「半熱風式」を「熱風式」と呼ぶケースも多いことである。
そのような呼称の混乱も含めて、こうした概念の背景には、
「半熱風式」は「直火式」と「熱風式」の折衷方式、という位置づけがある。
しかし私は、この「半熱風式」の概念的位置づけに「否」と言いたい。
 
確かに焙煎機の開発において、省空間の観点でも熱源の効率利用の観点でも、
筐体は小さいが焙煎環境が不安定(?)な「直火式」と、
焙煎環境の安定度は高いが筐体が大きくなる「熱風式」との「良いとこ取り」で
「半熱風式」が(特に空間制約が顕著な日本では盛んに)採用されている事実はある。
だが、それは言い換えれば「経済」「商売」を前提にした機種の開発と選択の論であり、
焙煎そのものから見た科学的な分類概念とは、大きな隔たりがある。
 
そもそも焙煎とは、コーヒー生豆に熱を伝達することにある。
一般論でも物体に熱移動・熱伝達がなされる手法は、
伝導(コンダクション)、対流(コンベクション)、輻射(ラディエーション)の3種類である。
この視点で考えると、「熱風式」は対流(コンベクション)主体であるのに対して、
「半熱風式」はより伝導(コンダクション)に比重を置いた熱伝達方式である。
そして「直火式」がやはり対流(コンベクション)主体であることを考えると、
「直火式」は「半熱風式」よりも「熱風式」(に近いの)である。
 
つまり、「直火」対「熱風」論争は、焙煎の熱伝達方式で捉え直すと、
「直火」「熱風」対「半熱風」の論議と考えられる、と私は提起する。
これを簡単に言えば、コンロの上での手振りの焙煎を想定して、
金網を使う(=直火)か、フライパンを使う(=半熱風)かの違いである。
 
面白いことに近年の「半熱風式」ドラム型焙煎機の様々な改良点は、
概してより「熱風」化し、伝導熱よりも対流熱伝達に比重を置く方向が多い。
しかし、これはフライパン焙煎的「半熱風式」の特徴を捨てて、
本来の「熱風式」に憧れて近づいたら、
詰まるところは金網焙煎的「直火式」にも接近している、
という何とも皮肉な捉え方もできるのである。
そして、結局は「直火」である不都合が何も無いことを裏付けている、
というやや強引な解釈を私はしている。
 
以上の意味で、私は「直火焙煎派」を名乗っておきたい。
 
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コメント

bardの鈴木 URL [2015年07月31日 04時30分]

いやすばらしい見解と思います。
私もまっっったくの同意見です。
私はデザイン業を営む傍ら趣味で自家焙煎をしてまして、今まで様々な焙煎器具を使ってみましたが、かねてより構造的・感覚的に「あれ?直火って結局熱風に近くね?」と思ってました。
でもなんとなくこの持論がマジョリティと軋轢を生みそうで表立って主張はしてきませんでした…が、これからはちょっと本気出して持論を発信しつつ実証していこうと思いますw
非常に有用な記事をアップしてくださりありがとうございます。m(_ _)m

to:bardの鈴木さん
帰山人 URL [2015年07月31日 18時38分]

>マジョリティと軋轢を生みそうで…
生むかもしれませんね。直火式に共通する独特の香味を《一種の煎りムラ》(『コーヒー おいしさの方程式』)によるものとする田口・旦部両氏の見解に全く賛同している私ですが、どうも業界の直火派の連中は(コレを自分たちが悪く言われているように捉えて)反発しがちです。直火派だろうが半熱風派だろうが熱風派だろうが、好悪の感情論と物理現象の実態論とをゴッチャにして利益誘導的な論をぶっているバカ者どもがマジョリティなんでしょう。私には何らの揺るぎもありません。仲間が欲しいとも思っていませんがね(笑)

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鳥目散 帰山人
(とりめちる きさんじん)

無類の珈琲狂にて
名もカフェインより号す。
沈黙を破り
漫々と世を語らん。
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