そうだ 京都、嗜好。 3

ジャンル:グルメ / テーマ:コーヒー / カテゴリ:珈琲の記:2017 [2017年05月14日 23時00分]
デイヴィッド・リス(David Liss)は、《オランダ黄金期の商業と聞いて現代人が思い浮べるのは、まず絵画の取引だろう。絵画は芸術品というより、美的な商品と見なされていた》(歴史解説/『珈琲相場師』 松下祥子:訳 早川書房:刊)と言う。その17世紀のオランダ画壇の中でも特異な存在であったヘラクレス・セーヘルス(Hercules Pieterszoon Seghers/c.1589-c.1638)の回顧展がメトロポリタン美術館で催されている頃、セーヘルスを名乗った作家アンナ・ゼーガース(Anna Seghers/1900-1983)を研究する臼井隆一郎氏の講演を含む催事が京都で開かれるという。セーヘルスはコーヒーがオランダへ本格的に輸入される直前に死んだが、ゼーガースの小説はコーヒーのある日常を臼井さんに語らせるだろう…一昨年昨年に続いて「嗜好品文化フォーラム」へ行ってみよう。そうだ!京都、嗜好。
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2017年5月13日
「第15回 嗜好品文化フォーラム」 (京都新聞文化ホール)
 
ドシャ降りの新名神高速道路を往き、会場から北北西約1kmに駐車。まずは今般も、「café de corazón」(カフェ デ コラソン)へ。毎土曜7時からのモーニングコーヒークラブに参加。コラソンブレンドを飲みながら、社会情勢やら郷土食やらコーヒーやら雑多な話題で楽しく過ごす。散会後、傘をさして三条通の辺りまで散策、雨の京都の街は好い風情。
 
会場へ到着、旦部幸博氏と「やぁ、どうも」。臼井さんと旦部さんを左右に置いた席で、午前の部である嗜好品文化研究会の助成研究口頭発表を聴く。「定住化したケニアの牧畜民による蜂蜜利用の変容」(稲角暢)と、「台湾「哈日族」の嗜好品文化 ──アイドルとアニメグッズをめぐって」(張瑋容)と、「11-13世紀 中国西部少数民族における茶の嗜好品化」(森本創)の3題。前2題は1990年代以降のポコットや哈日の変容の政治的背景を考えながら、3題目は地域間交流と茶の関係をコーヒーの伝播史と対照しながら聴いた。旦部さんと感想を述べあいながら、会場近くの「なか卯」で昼飯。雨は上がったようだ。
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午後の部は「嗜好品と政治学」をテーマとした講演と討論。記念講演「朝コーヒーを飲める普通の生活の世界政治 ──20世紀ドイツ文学の視座から」(臼井隆一郎)と、基調報告「嗜好品が政治を帯びるところ ──「つながり」と「からだ」」(斎藤光)と、髙田公理・臼井隆一郎・斎藤光・藤本憲一・井野瀬久美惠・速水健朗の6人(敬称略)による総合討論。臼井さんは、演題通りにコーヒーを絡めて、アンナ・ゼーガースから始まり19世紀以来のドイツ史を論じた。話が‘アウシュヴィッツのコーヒー’に及んで演者自ら悲憤に絶句、ヘタクソだが心を打つ講演だった。総合討論でも、臼井さんが人間の根本的な‘アヤシサ’を問うて、「何で定住するようになったか?」という人類史の基底を揺るがす発言が光耀した。髙田さんが『九十歳。何がめでたい』(佐藤愛子:著)に倣って「定住。何がおもろい」と見事に括って催事が終了。
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京都ブライトンホテルへバスで移動して懇親会にも参加。立食ビュッフェの宴の中、疋田正博氏や楠正暢氏や小山伸二氏とも談話。今般の催事では、その前後や休憩でも臼井さんと喫煙しながら喋りっ放し。帰路に車へ同乗してもらった旦部さんとも、会ってから別れるまでの始終で楽しきコーヒー談議が続いた。
 
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移民の排斥、棄民、殺戮、思考と志向と嗜好の制圧…定住化して群れたヒトが国家や政治や社会の在り様に根本的な‘アヤシサ’を現出させているとすれば、《朝コーヒーを飲める普通の生活》にも未来はない。人類史自体が行き場のない‘トランジット’であり、そこに咲いた流転の徒花(あだばな)がコーヒーなのかもしれない。そう私に想わせる「嗜好品文化フォーラム」の一日だった、それも嗜好? そうだ!京都、嗜好。
 
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鳥目散 帰山人
(とりめちる きさんじん)

無類の珈琲狂にて
名もカフェインより号す。
沈黙を破り
漫々と世を語らん。
ご笑読あれ。

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