パンティ、苦渋の声

ジャンル:グルメ / テーマ:コーヒー / カテゴリ:観の記:美面 [2017年03月23日 01時30分]
《1960年代から日本の女性が頻繁に着用し、70年代に入るとテレビや雑誌などを通じて社会的に流行した「パンティ」。ありとあらゆる文化がパンティに染まったこの現象は、ズロースとショーツの隙間に開花した徒花であったのか?》…「右も左もパンティづくし!」とかいう‘鼻血ブー’な展覧会が東京駅丸の内駅舎内の美術館で開かれているらしい…何か違うようにも思ったが、まぁ気にしないで、東京でコーヒー遊びのついでに観てみよう!
 パンティ、苦渋の声 (2)
 
「パロディ、二重の声 日本の一九七〇年代前後左右」 (東京ステーションギャラリー)
 
入館。プロローグは、山縣旭(レオ・ヤマガタ)による〈モナリザ〉が40点余も並んでいる(上半身ばかりでパンティがない!)。第一部「国産パンティの流行前夜」には、吉村益信の〈豚〉がいた(上半身だけでパンティが穿けない!)。第二部「肥大するパンティ」には、赤瀬川原平の〈おざ式〉や長谷邦夫の〈バカ式〉〈アホ式〉〈マヌケ式〉があったし、〈伊丹十三のアートレポート〉も映していた(伊丹十三なのにパンチラもパンモロもない!)。第三部「いわゆるパンティ裁判」には判決文が並んでいる(結局パンティがない!)。退館。‘鼻血ブー’どころか「くそっ、騙された」と苦渋の声を呻き漏らす。
 パンティ、苦渋の声 (3) パンティ、苦渋の声 (4)
 
パンティの展覧会なのにパンティが一つもない…何か違うようにも思ったが、会場のあちらこちらに立て掛けてあった解説が好かった。抄出しておく。
 
《「パンティー」という言葉は、戦後はもちろん、戦前にもふつうに使われていなかったが、一九七〇年代に入ってから、ひろく週刊誌やマンガ雑誌で使われるようになり、日常の日本語の一部となった。》 (鶴目俊輔)
《したがって位置エネルギーのない言葉にパンティは成立しない。》 (青瀬川原平)
《したがって文体模写や語り手による叙述においては可能であった二つの声の融合という現象は、パンティでは不可能なのである。》 (身入馬夫珍)
《パンティは或る意味で多義性発生装置であるから、その未来は洋々たるものであると思います。》 (山田昌男)
《(パンティは)別の定義をすれば、類似よりも差異を際立たせる批評的距離を置いた反復である。》 (林田八音)
《むしろ、正・反がシステム化し、固定化した認識の枠組みそのものを批判することがパンティではないか。》 (本村恒久)
《わたしたちのまわりで時めいている〈偉大なもの〉とその亜流はすべてパンティの原料にするのがよい。》 (井上のき)
《不自由のなかでこそ、パンティーはいきいきするのかも知れないが、一方では、芸術の自由を獲得し拡げるためにもパンティーの力が必要なのだ。》 (赤塚不二家)
《とり・みきさんが「元ネタがばれると困るのが盗作で、ばれなきゃ困るのがパンティなんだ」と、言ったんですけど、これは至言だと思いました。》 (松熊健太郎)
《もともとパンティというのは他人の褌で角力をとり、しかもそれを汚してから相手の顔に投げつけるようなもので、相手は当然怒り心頭に発し、またそうでなくてはパンティは面白くない》 (和口誠)
《「パンティは著作権法の世界における〈鬼っ子〉のような存在である」と言われる。》 (小泉曲樹)
《「イエス」と「ノー」と両方をもっているのがパンティであって、そのようなかたちで次の作品が生まれてくる。》 (清水蟻範)
《パンティーは、もともと批評的なものである。だが、いま、パンティーといわれるものは少しも批評的ではない。》 (下野昴志)
《だからこそ、私たちは、パンティを通して、その共通の約束事、それぞれの文化や時代にとっての「当たり前」を確認できるのです。》 (津辺棚栗捨輪)
 
 パンティ、苦渋の声 (1) パンティ、苦渋の声 (5)
解説には首肯すべきものもあったが、展覧会の意図には違和感も残る。《日本の一九七〇年代前後左右》を‘回顧’や‘懐古’するために並べても面白味は薄い。当時のパンティは、そのために作られていないから。パンティを切り口に《日本の一九七〇年代前後左右》という時代を照射するためならば、あまりに踏み込みが浅い。むしろ、現在と近未来の苦渋を直截に問うべきだから。「パンティ、苦渋の声 日本の二〇二〇年代前後左右」…そう展覧会を《相手の顔に投げつけるようなもの》に捉える、《またそうでなくてはパンティは面白くない》のである。
 
コメント (0) /  トラックバック (0)

コメント

この記事にコメントする

トラックバック

この記事へのトラックバックURL
http://kisanjin.blog73.fc2.com/tb.php/1015-9308696c
編集

kisanjin

Author:kisanjin
鳥目散 帰山人
(とりめちる きさんじん)

無類の珈琲狂にて
名もカフェインより号す。
沈黙を破り
漫々と世を語らん。
ご笑読あれ。

08 ≪│2017/09│≫ 10
- - - - - 1 2
3 4 5 6 7 8 9
10 11 12 13 14 15 16
17 18 19 20 21 22 23
24 25 26 27 28 29 30
Powered by / © Copyright 帰山人の珈琲漫考 all rights reserved. / Template by IkemenHaizin