コーヒーは旅をしない

ジャンル:グルメ / テーマ:コーヒー / カテゴリ:珈琲の記:2017 [2017年02月25日 01時00分]
コーヒーは旅をするのか? 『旅する缶コーヒー』というコーヒー漫画はあるが、缶コーヒーが旅をするのか、不明だった。《日本のはるか遠く、地球の裏側で元気に育った、小さな赤い実は、おいしいコーヒーになるために、長く険しい旅に出発します》というショートムービー「コーヒー豆の大冒険」(UCC上島珈琲)があるのだから、コーヒーは旅をするのか? いや、「旅をしない」という新たな話が報じられた。
 コーヒーは旅をしない (1)
 
 「コーヒーも旅をしない」 @コンゴ民主共和国・ルブンバシ
 《コンゴ民主共和国(旧ザイール)の南部ルブンバシで、取材中にコー
  ヒーを頂いた。近くで栽培された豆を使っているという。口に含むと、
  オレンジのような香りと、黒糖のようなまろやかさが口全体に広が
  った。かなり重量感のあるコーヒーだった。 アフリカでは、エチオピ
  ア産やタンザニア産の豆が有名だが、高地に位置するコンゴ南部
  でも良質の豆が取れる。「でも、この豆を日本に持って帰っても、こ
  のおいしさは再現できないんだ」と現地在住の日本人は残念がる。
  原因は水だ。日本の水は軟水が多く、お茶をいれたり、だしをとっ
  たりするには適しているが、コーヒーには不向きだとも聞く。「コー
  ヒー豆も生きているから、育った場所の水でいれるのが一番おい
  しい」という。 そういえば、欧州を旅した時、「おいしいワインは旅を
  しない」という言い伝えを聞いた。良質のワインは保存が難しいし、
  地元で全部飲んでしまうから、というのがその理由だった。 おいし
  いコーヒーも「旅をしない」のだろうか。確かめるためには、私たち
  が旅をしてみるしかない。》 (三浦英之 特派員メモ/「朝日新聞」
  2017年2月23日)
 コーヒーは旅をしない (2)
さすが、三浦英之特派員、このルポは、とても好い。日本の水が《コーヒーには不向き》という点は寝耳に水で賛同できないが、そこは水に流そう。コーヒーは《育った場所の水でいれるのが一番おいしい》から、日本では《このおいしさは再現できない》という言、なるほど、水が合う合わないということは、コーヒーにもあるのだろう。たとえ、それがどんな水であっても…
 
 《コルウェジから約290km離れたルブンバシは、コンゴの鉱業のもう
  一つの中心地だ。この地域の研究者たちは、鉱業が住民の健康
  に深刻な悪影響を及ぼしていると主張している。 彼らの調査によ
  れば、採掘人や地元住民が日々の生活で摂取している金属の量
  は、安全基準の数倍に達しているという。 住民の尿を検査したとこ
  ろ、基準と比べてコバルトが43倍、鉛が5倍、カドミウムとウランが
  4倍も含まれていた。子供の場合はさらに数値が高かった。 別の
  調査で、コンゴの鉱業が盛んな地域で獲れた魚には、高濃度の金
  属が含まれていることもわかっている。 さらに別の調査では、ルブ
  ンバシの土壌は「地球上で最も汚染が深刻な10地域の一つに入
  る」という結論が出たという。》 (「事故で、汚染で、次々と倒れるコ
  ンゴの鉱山労働者…彼らを搾取する「巨大企業」の正体とは?」
  Webサイト『クーリエ・ジャポン』 2016年10月/‘The cobalt
  pipeline: Tracing the path from deadly hand-dug
  mines in Congo to consumers' phones and laptops’
  Todd C. Frankel “The Washington Post” 2016.09.30)
 コーヒーは旅をしない (3)
仮に土壌や水が汚染されているからといって、《コーヒー豆も生きているから、育った場所の水でいれるのが一番おいしい》という主張に、水をさすことはできない。仮に土壌や水が汚染されているからといって、そこに人が生きているから住んでいる場所の景色を観るのが一番楽しいという主張に、水をさすことができないように。コーヒーにとっても、人にとっても、水になれるということは、そういうことなのだ。
 
 コーヒーは旅をしない (4) コーヒーは旅をしない (5)
動乱と侵略と内戦と殺戮と疫病と貧困の中にコンゴ民主共和国(RDC)があり、荒廃と汚染と病害の中にRDCのコーヒーがある。キブやカタンガを主にしてRDCのコーヒー産業にも復興の手は差し伸べられているが、2000年代以降の生産量や輸出量に現状でも伸張はみられない。そうした経緯と実態を解しないままに、日本をはじめとするコーヒー消費国がRDCにもスペシャルティコーヒーを求めるのであれば、コーヒーは「旅をしない」方が好い。正に、《私たちが旅をしてみるしかない》のである…コーヒーは旅をしない。
 
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Author:kisanjin
鳥目散 帰山人
(とりめちる きさんじん)

無類の珈琲狂にて
名もカフェインより号す。
沈黙を破り
漫々と世を語らん。
ご笑読あれ。

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