もがく凧

ジャンル:映画 / テーマ:映画感想 / カテゴリ:観の記:映面 [2015年11月29日 01時30分]
映画『007 スカイフォール』(2012年)の最後、仕事に戻る用意はできたかと訊かれて「ハイ!よろこんで」と居酒屋の店員のように答えたダニエル・クレイグ。だが、2014年11月にはソニー・ピクチャーズ・エンタテインメント(SPE)へサイバー攻撃が加えられて、クレイグが主演する次の映画の脚本が盗まれた。
 
 《…「スペクター」に登場する「悪」は、現実の米政府情報機関による通信傍受活
  動を想起させ、ボンドもそうした現代社会の負の断層と無縁な存在ではないこ
  とが描かれる。「実際、無制限な通信傍受や無人機攻撃がもたらす結果は恐
  ろしいものだ」。古典的なヒーローが存在しにくい、そんな時代だからこそ「昔な
  がらのやり方で、現場に行き敵の顔を直視する」人物として、ボンドをとらえて
  いる。(梅原季哉)》 (「傷抱える独自のボンド像 ダニエル・クレイグ主演」/
  「朝日新聞」 2015年11月27日)
 
つまり、配給会社SPEへのサイバー攻撃もスペクターという「悪」の仕業であり、その触手は映画そのものにも伸びている…カネがかかっているようで、かなりみみっちい話だけれども、はたして大丈夫か? 同じ2015年のスパイ映画『コードネーム U.N.C.L.E.』とも比べて観よう…《結果は恐ろしいものだ》。
 
『007 スペクター』(Spectre) 観賞後記
 
 もがく凧 (1) もがく凧 (2)
話の運びは陳腐に堕ちていたが懐古と訣別と自壊と復活を繰り返して好かった前作『007 スカイフォール』では、実質のボンドガールはM(前任/ジュディ・デンチ:演)であった。これで年長者たる熟女に目覚めたジェームズ・ボンド(ダニエル・クレイグ:演)は、本作『007 スペクター』で五十路の女ルチア・スキアラ(モニカ・ベルッチ:演)と…やっちまったな! 《古典的なヒーローが存在しにくい、そんな時代だからこそ》スペクターの首領(?)エルンスト・スタヴロ・ブロフェルド(フランツ・オーベルハウザー)を演じたクリストフ・ヴァルツを活かして欲しかったが、「観てビンゴォ~」のランダ大佐や「観てジャンゴォ~」のキング・シュルツと違って、本作では貧相で幽かなカッコウだった。
 
 もがく凧 (3) もがく凧 (4)
話がだらだらとやたらに長いだけ(上映時間148分は007シリーズ最長)の『007 スペクター』には、「なぜここへ?」(Why did you come?)とも「殺しにきた」( I came here to kill you.)とも「殺されに来たんだろ」(And I thought you came here to die.)とも言ってやりたいが、「面白い見解だ」(Well, it's all a matter of perspective.)などと評するべきところは一つも無い。危なっかしくも新たなジェームズ・ボンド像を提示して面白かった前作『007 スカイフォール』に比して、本作『007 スペクター』では群衆活劇を狙ったものの結局は‘お遊戯会で失敗したドタバタ劇’にしてしまった。同じドタバタ劇でも、『コードネーム U.N.C.L.E.』の方が熱が入る。ヘンリー・カヴィルがダニエル・クレイグより好演していると必ずしも思えないが、作品の出来映えとしては『007 スペクター』を比すること自体が「アンクルから来た男」に対して失礼である。監督サム・メンデスよ、「お前は嵐の中でもがく凧だ」(You are a kite dancing in a hurricane.)…この駄作は、《ボンドもそうした現代社会の負の断層と無縁な存在ではないことが描かれる》。
 
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kisanjin

Author:kisanjin
鳥目散 帰山人
(とりめちる きさんじん)

無類の珈琲狂にて
名もカフェインより号す。
沈黙を破り
漫々と世を語らん。
ご笑読あれ。

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