あばらかベッソン

ジャンル:映画 / テーマ:映画感想 / カテゴリ:観の記:映面 [2014年08月30日 23時30分]
映画『リミットレス』(Limitless/2011)によれば、《普通の人間は脳の20%しか使っていない》…映画『ルーシー』(Lucy)によれば、《人類の脳は10%しか機能していない》…ん、どっち? 『リミットレス』の‘NZT48’、『ルーシー』の‘CPH4’、共に脳を100%フルに使える強力「スマートドラッグ」である…例えば、どちらもスグに中国語を習得できたし…ん、ビミョー?
 あばらかベッソン (1)
 
『LUCY/ルーシー』(Lucy) 観賞後記
 
リュック・ベッソンといえば、監督した作品『ニキータ』(1990)・『レオン』(1994)・『フィフス・エレメント』(1997)など、アンヌ・パリローやマイウェン(・ル・ベスコ/ウィンウィン)やミラ・ヨヴォヴィッチ…出演する女優と次々に‘あばらかべっそん’という具合で、なんともはや‘べけんや’な映画人である。今般の『ルーシー』は、スカヨハ(スカーレット・ジョハンソン)と‘あばらかべっそん’なのか?
 あばらかベッソン (2)
 
序盤は『レオン』で中盤は『インセプション』で終盤は『2001年宇宙の旅』…どころか、他に『アルタード・ステーツ/未知への挑戦』と『マトリックス』と『GHOST IN THE SHELL/攻殻機動隊』も加えておいて、しかし、SF映画としては《10%しか機能していない》ようにワザと作った、その代わりに毎度お馴染みのカーチェイスとバイオレンスは残して混ぜ…映画『ルーシー』は、「リミットレス」(無限)に「トランセンデンス」(超越)した奇作で怪作な傑作である。リュック・ベッソン監督の《脳は10%しか機能していない》、いや‘本質’では7%未満しか機能していないハズなのに、「ルーシーはルーシーに生まれるのではない、ルーシーになるのだ」という‘実存’論の核心を説いた‘べけんや’な映画が生み出された。
 あばらかベッソン (3)
 
 《つまり、SFとは原則として、疑似科学的予測に基く、未来の可能性の物語で
  ある。という事は、そのドラマの時代において、それが遠い未来であればあ
  るほど、作者と読者もしくは観客は、自らの確実な死と対面せねばならない
  はずである。SFとは即ち、本来的にそういった“時”を、意識無意識を問わ
  ず内包した、そんなフィクションだった訳なのだ。(略) そして、あの時代、
  即ち猿人から宇宙人に至る、その間の長い長い、しかし宇宙的に見れば
  きわめて短い人間たちの“時間”に、スタンリー・クーブリックは実にさしたる
  進化を認めはしなかったのだという事実に、あらためて気付いてしまうのだ。
  これはつまり、『2001年宇宙の旅』でいえば選ばれて宇宙空間にありなが
  ら、TV電話で娘の誕生をいわい、対立国の科学者との会話に口ごもり、は
  ては機密保持のみにこだわり、つまりはいってみれば“無意味”のシークエ
  ンスに登場した結果、例の黒石板(モノリス)にあっさりと“拒絶”された、ヘ
  イウッド・フロイド博士(ウィリアム・シルヴェスター)たちのドラマ、というか世
  界だったのだ。そこはつまりは、いつでものぞましくはなく、さりとていまわし
  くもない、そんな世界のある時代である。》 (石上三登志 「ザ・タイム・マス
  ター/SF作家スタンリー・クーブリック」/『ザ・スタンリー・キューブリック』
  キネマ旬報社 1981年/『SF映画の冒険』 新潮文庫 1986年 に収載)
 あばらかベッソン (4)
 
これはつまり、『ルーシー』でいえば、偶然にも‘CPH4’に侵されながら、母親と電話で昔話を語り、‘まだ不完全だけど考え方は合っている’科学者との会話に口ごもり、はては刑事を連れ回すことにこだわり、つまりはいってみれば‘本質’的に“無意味”なシークエンスを並べた結果、猿人(ルーシー)から超人(ルーシー)に至る宇宙的に見ればきわめて短い“時間”のドラマ、というか世界だったのだ。そこはつまりは、自らの確実な死と対面せねばならない“時”を意識無意識を問わず内包した、いつでものぞましくもなく、そしていまわしくもある、そんな世界のある時代の‘べけんや’なフィクションだったワケなのだ。『ルーシー』は、作った監督が‘リュック・あばらか・ベッソン’へと変態を遂げた映画である。
 
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kisanjin

Author:kisanjin
鳥目散 帰山人
(とりめちる きさんじん)

無類の珈琲狂にて
名もカフェインより号す。
沈黙を破り
漫々と世を語らん。
ご笑読あれ。

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