撮らん専断す

ジャンル:映画 / テーマ:映画感想 / カテゴリ:観の記:映面 [2014年06月29日 22時30分]
ハリウッド業界人が推す「ザ・ブラックリスト2012」計78本の中で下から2番目に低い得票
だったジャック・パグレンの脚本を、ウォーリー・フィスターは初めての監督作品にして、デジ
タルカメラでは‘撮らん’と35mmフィルムでの撮影を‘専断す’る…他に謳うネタが、無い?
 撮らん専断す (1)
 
『トランセンデンス』(Transcendence) 観賞後記
 
『トランセンデンス』は、《もし、コンピュータに科学者の頭脳をインストールしたら――》という
「もしもシリーズ」の新作である。昨2013年には『ローン・レンジャー』で第34回ゴールデン
ラズベリー賞の最低リメイク・盗作・続編賞を獲ったものの最低主演男優賞を逃してしまった
ジョニー・デップが、‘今度こそ’とばかり志村けんに代わって熱演している…「だめだこりゃ」。
 撮らん専断す (2)
 
この作品を‘Transcendence’(超越)した駄作へと転落させているのは、精神転送した後
の人工知能の描き様。話運びの焦点が、‘Singularity’(シンギュラリティ:技術的特異点)
というテーマ自体から、ナノマシンと再生医療によるオカルトへ移ってしまったところで、ハイ
どっちらけ。『G.I.ジョー』のナノマイトによる破壊シーンを逆に回したような画、退屈の極み。
9つ歳下の師匠クリストファー・ノーランが監督した『インセプション』の撮影をしておきながら、
ウォーリー・フィスター自身には‘Inception’(発端)として植え付けられなかった…陳腐だ。
 撮らん専断す (3)
 
 《無数なる個物の相互否定的統一の世界は、逆に一つの世界が自己否定的に無数に
  自己自身を表現する世界でなければならない。かかる世界においては、物と物は表
  現的に相対立する。それは過去と未来が現在において相互否定的に結合した世界で
  ある。現在がいつも自己の中に自己自身を越えたものを含み、超越的なるものが内
  在的、内在的なるものが超越的なる世界である。過去から未来へという機械的世界
  においても、未来から過去へという合目的的世界においても、客観的表現というもの
  はない。客観的表現の世界とは、多が何処までも多であることが一であり、一が何処
  までも一であることが多である世界でなければならない。過ぎ去ったものは既に無に
  入ったものでありながらなお有であり、未来は未だ来らざるものでありながら既に現れ
  ているという矛盾的自己同一的現在(歴史的空間)において、物と物とが表現的作用
  的に相対し相働くのである。》
  (西田幾多郎 「絶対矛盾的自己同一」/『思想』202号 岩波書店/1939年)
 
 撮らん専断す (4)
PINN(Physically Independent Neural Network)という通名の人工知能と、R.I.F.T.
(Revolutionary Independence From Technology)と名乗る反テクノロジー過激派
組織とは、『トランセンデンス』の世界においては、《表現的に相対立する。それは過去と未
来が現在において相互否定的に結合した世界である》。それを消化も昇華もできないまま、
安っぽいメロドラマに仕立ててしまったウォーリー・フィスター…彼こそがPINNかR.I.F.T.
の餌食にされるべき存在であろう。‘Transcendence’(超越)と‘Immanence’(内在)…
人間の脳ミソの中に《内在的なるものが超越的なる世界》を探した『インセプション』は、「遅
すぎた夢物語」であっても面白かったが、《超越的なるものが内在的》であることを表現でき
ていない『トランセンデンス』は、《未来は未だ来らざるものでありながら既に現れているとい
う矛盾的自己同一的現在(歴史的空間)》を全く描けていないので救いようの無い超駄作だ。
こんなことならば‘撮らん’方がよかったと‘専断す’べきだった映画が…『トランセンデンス』。
 
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kisanjin

Author:kisanjin
鳥目散 帰山人
(とりめちる きさんじん)

無類の珈琲狂にて
名もカフェインより号す。
沈黙を破り
漫々と世を語らん。
ご笑読あれ。

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