機内上映求む

ジャンル:映画 / テーマ:映画感想 / カテゴリ:観の記:映面 [2009年10月28日 16時00分]
映画『沈まぬ太陽』観賞後記

描写や演出がどうとかいうよりも、物語(ストーリー)としては「荒い」。
主人公が労組運動に起因する左遷人事を受け続ける話(原作ではアフリカ篇)、
主人公が遺族係となったジャンボ機墜落事故の話(原作では御巣鷹篇)、
主人公が新体制下で抜擢され会長と企業再建を期す話(原作では会長室篇)、
ここに、主人公の家庭再生も、同僚友人との確執も、政官財界の腐敗も加え、
一本一話の映画にしてあるのだから「荒い」のは当然であろうか。

これが日本航空を舞台にした「モデル小説」の映画化作品でなければ、
こんな荒削りで欲張りな内容は、物語としての体(てい)をなさないハズ。
無論この映画は原作同様に事実を歪め虚構を散りばめ重ねてはいるのだが、
いくらテロップで「架空」「フィクション」と強調しても、もし本当に
完全な空想劇ならば最低のクズ映画だと断言できるわけで、つまり
この作品は、あくまで「現実の日航」と「山崎豊子の原作」あっての存在。
そういう意味で、制作物としては駄作だが、モデル映画としては見応え有り。

巷間では、現状の日航のヤバさとか映画化への苦労とかを背景にして、
渡辺謙演ずる主人公の不屈にして清冽な心意気(?)が持ち上げられているが、
私には「そう感ずるばかりではないところに作品の意義がある」と思える。
悪く言えば「懲りない」「変えられない」まま茫洋と生き続けてしまう
人間の普遍した「したたかさ」が描かれているわけで、そう捉えてみると、
その見苦しくも哀しい「したたかさ」は、パクリ続けても書き続ける「原作者」や
呪われた一族(?)でも作り続ける「製作者」の姿勢そのものに、
見事に相通じているではないか。
主人公がケニアのサバンナに見る沈まぬ太陽は、原作者の製作者の出演者の、
そして観客我我の「懲りない」「変えられない」沈まぬ業(ごう)なのだ。

後半部で石坂浩二演ずる会長が「この会社は必ずや立ち直れる」と吐くが、
現実世界のヤバい日航が立ち直るには、この作品を機内上映するべきである。
それができないならば日航には沈んでもらうべきだ、そう思いながら館を出た。
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kisanjin

Author:kisanjin
鳥目散 帰山人
(とりめちる きさんじん)

無類の珈琲狂にて
名もカフェインより号す。
沈黙を破り
漫々と世を語らん。
ご笑読あれ。

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