居酒屋で考えるコーヒー2

ジャンル:グルメ / テーマ:コーヒー / カテゴリ:珈琲の記:2017 [2017年08月22日 01時00分]
コーヒーについて考えるに、これまでもワインの本やカカオ・チョコレートの本や紅茶の本や分子調理の本や居酒屋の本から捉えてきたが、今般は再び居酒屋の本で考えて…まぁ、迎え酒みたいな話だけど。
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『居酒屋の世界史』(講談社現代新書 2120)
(下田淳:著/講談社:刊 2011年)
 
 《私は本書で世界の居酒屋に入ることで、一二世紀前後以降のヨーロッパ
  文明(私はこの時期以降をヨーロッパ文明と定義している)の特徴を引
  きだすことを最終目的とした。(略) しかし私は居酒屋をもう少し厳密に
  定義したい。つまり、居酒屋とは、金銭(穀物、貝殻、金属など現物貨幣
  でもよい)の見返りに酒類を提供する営業空間であると。となると、カフェ
  は本来コーヒーを提供する店であったが、そこが酒も扱えば居酒屋の
  範疇に入ることになる。実際カフェは大衆居酒屋にもなった。つまり、金
  銭と引き換えに酒を飲む「場」が、居酒屋である。このように、貨幣経済
  の成立が居酒屋の前提条件であることを確認しておく。(略) 本書は多
  様な文献を、少しずつ「つまみ食い」というより、「つまみ飲み」してでき
  あがったものである。(略) 本書のような世界の居酒屋の概説書(残念
  ながら、ラテンアメリカやオセアニアなど紹介できなかった地域もあるが)
  は、日本のみならず欧米にもないと思われる。》 (「はじめに」pp.3-8)
 
『居酒屋の世界史』は《世界の居酒屋に入ることで》と言っているが、著者が居酒屋を巡った節はない。同じ「居酒屋」を論じている本でも、『日本の居酒屋文化 赤提灯の魅力を探る』のマイク・モラスキー氏が‘酔顔(すいがん)’で私的文化論を著したのに対して、本書の下田淳氏は‘素面(しらふ)’で史的文化論を述べている。‘素面’なだけに、詩性は薄いが整然たる著述だ。「はじめに」で概要を示し、本章でも10話全ての冒頭に要約を掲げ、「おわりに」は摘要となっている。そして、巻末の参考文献が220も挙げられて、《多様な文献を…「つまみ飲み」してできあがった》本書には微塵も酔気がない。ここまで醒めた視座を貫いている本は、酒や居酒屋の本はもとより、コーヒー本で探そうにも類書は少ない。そこが《世界の居酒屋の概説書》として素晴らしい。 
 
 《古代を別にすれば、ヨーロッパで居酒屋が成立したのが一二世紀頃、そ
  れが増加したのが一六世紀前後であった。一六世紀、イスラム圏では
  カフェ、中国では茶館が、居酒屋の機能のいくつかを引き継ぐようになっ
  た。ただカフェや茶館は都市の文化であった。農村には居酒屋、カフェ、
  茶館は発達しなかった。(略) 私は、「農村への貨幣経済の早くからの
  浸透」がヨーロッパ近代文明飛躍の鍵であると思っている。》 (「おわり
  に」pp.215-218)
 
『居酒屋の世界史』において下田淳氏は、《居酒屋とは、金銭の見返りに酒類を提供する営業空間》であり、つまり《貨幣経済の成立が居酒屋の前提条件》であり、だから《貨幣経済の早くからの浸透》がなかった非ヨーロッパ文明圏の《農村には居酒屋、カフェ、茶館は発達しなかった》と語る。汎世界史論としては、かなり粗暴で課題も残る説だ。だが、そこにあえて目を瞑って、コーヒーに置き換えて考えると、私には面白くも捉えられる。まず、世界史に「酒と居酒屋」と「コーヒーとカフェ」を置いてみよう。酒は古代から存在するもので、その後に《貨幣経済の成立》で居酒屋が登場する。対して、生豆だけを煎って使う飲み方のコーヒーは古代には存在せず、概して実質は《貨幣経済の成立》でカフェと共に登場する。だから、居酒屋の歴史を論じても酒の歴史を述べたことにはならないが、コーヒーの歴史を論ずる場合にはカフェの歴史と混交してしまいがちになる。また、「酒と居酒屋」は出現する時期に大きな差はあるが《酒を飲む「場」が、居酒屋である》ことで不可分であり、対して、「コーヒーとカフェ」は時期の差が小さいものの《実際カフェは大衆居酒屋にもなった》ことでカフェにコーヒーは不可欠とはいえない。したがって、「コーヒーとカフェ」は「酒と居酒屋」に比しても余程に、《ヨーロッパ近代文明》一極の史観に偏りがちである。そうした至極当然の、しかしまた偏向や交錯に惑わされて忘れがちな、コーヒーの世界が独自に有する課題を、本書『居酒屋の世界史』は楽しくも明らかに示している。
 
講談社現代新書では、『居酒屋の世界史』の他にも‘世界史’本が刊行されている。『海の世界史』や『馬の世界史』や『都市計画の世界史』や『高層建築物の世界史』や『世界史を変えた薬』などだが、今2017年秋に旦部幸博氏が著した『コーヒーの世界』が加わる。新刊『コーヒーの世界史』は、どんな《特徴を引きだすことを最終目的とした》ものなのか? 今般は迎え酒みたいな話でコーヒーを考えたが、酔いを醒まして『コーヒーの世界』を待とう。
 
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大暑にキッス

ジャンル:グルメ / テーマ:コーヒー / カテゴリ:珈琲の記:2017 [2017年08月06日 23時00分]
「キッスは目にして!(ぽお)」じゃなくて「喫(きっ)すは暑(しょ)にして!(ぽお)」…2017年の大暑(7月23日~8月6日)は正に大暑だった。その大暑に珈琲を喫す…
 
2017年7月25日
 大暑にキッス (1) 大暑にキッス (2)
「コーヒーの苑」 ハイブレンド/水出し(ペルー:冷たいの)
静岡県藤枝市。640日ぶりの訪店。だが、気分は35年前に通いつめた頃と変わらない。《そこにはいつもコーヒーの優しい香りがあり、常連たちの親密な会話があった》。気負うことなく美味い珈琲を喫しながら、中山夫妻と雑談。これで好いのだ。
 大暑にキッス (3) 大暑にキッス (4)
苑を出て昼飯を摂った後、蓮華寺池公園へ行き、茂ったハスを見ながら池の周囲を散策。ボート乗り場前の「マツウラコーヒー」へ初訪…中休みに入るので喫せず。
 大暑にキッス (5)
「村松珈琲店」 4番(ブレンド:濃いめ100cc)
静岡県藤枝市。「苑」で存在を聞きつけてトレーラーハウスの店を初訪。手廻し釜(500g容量)、手製ネルでドリップ…「大坊珈琲店」に魅了された、と。独自は有機しばりでコロンビアとエチオピアの2種だけでブレンド。面白い店だ。
 
2017年7月27日
 大暑にキッス (6)
前夜に「コクウ珈琲」で篠田康雄氏とネルドリップ実践研修(?)、その時に貰ったゴーヤを自宅で佃煮にした後、自分で焼いたブレンド(「珈琲遊戯」のICBM)でブラン・エ・ノワールを作って喫す。加糖でしっかり甘い、これで好いのだ。
 
2017年7月30日
 大暑にキッス (7)
「星屑珈琲」 グアテマラ(濃厚ネルドリップ:20g100cc)
名古屋市千種区。3週間ぶり2回目の訪店。店に並んでいる文庫本を気ままに読みながら珈琲を喫した後、手廻し釜(銅製1kg容量:collins製)での焙煎やらペーパードリップの抽出やら、延々と談話研修(?)。先が楽しみだ。
 
2017年8月4日
 大暑にキッス (8)
「まめ蔵」 ケニア マサイAA/マンデリン ビンタンリマ
岐阜県土岐市。途次に昼飯を摂って、8週間ぶり4回目の訪店。ブラジル移民にベトナムや中東のコーヒーにブルボンポワントゥ…水野政明氏とコーヒー話で世界を旅しながら珈琲を喫す。おやつも美味い。素晴らしい店だ。
 
2017年8月5日
 大暑にキッス (9)
3日前に《少々ですが暑気払いに》と大坊勝次氏から豆が届いた。同日に「フレーバーコーヒー」(愛知県西尾市)へ持ち込んで紙で淹れて味わったが、自宅にて改めてネルで淹れて喫す。僅かに酸味を残して軽やかに深い大坊世界で暑気払い。これで好いのだ。
 
 ♪ 喫すは暑にして 恋する香味
  喫すは暑にして 香味は心
  喫すは暑にして 心は炎 ♪
 
古い店、新たな店、変わらぬ味わい、変わりゆく香り、訪ねて訊かれて、放恣に逸楽に、珈琲を大暑に喫す(ぽお)。
 
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倫理的な調達

ジャンル:グルメ / テーマ:コーヒー / カテゴリ:珈琲の記:2017 [2017年08月03日 05時00分]
スターバックス(Starbucks)は、2007年より11年連続で「世界で最も倫理的な企業」(World's Most Ethical Companies)であると、エシスフィア・インスティテュート(Ethisphere Institute)によって選出されている。倫理の普及を嘯く非道な団体の発表は信ずるに値しないが、「倫理的な調達」(Ethical Sourcing)を掲げる企業は正真に‘倫理的’なのだろうか? エシカルコーヒークイズのスタバ傘下ブランド特別編で解いてみよう。 
 倫理的な調達 (1)
 
[問1] 2012年にスタバはパスカル・リゴのパン屋を1億ドルで買収して傘下に収めました。2015年にはブルーボトルコーヒーが別のパン屋を買収して僅か8ヵ月弱で契約を解消しましたが、その同じ2015年にスタバが閉鎖したパン屋の名前は?
イ:タカキベーカリー
ロ:ラ・ブーランジェ(La Boulange)
ハ:タルティーン(Tartine)
 倫理的な調達 (2)
 米スターバックスがベーカリー「ラ・ブーランジェ」を全店閉鎖
 《アメリカのコーヒーショップ大手「スターバックス」は、サンフランシスコ
  周辺で展開するベーカリーカフェ「ラ・ブーランジェ」の全23店舗を9
  月末までに閉鎖すると発表しました。 フード部門の強化を目的とし
  て「ラ・ブーランジェ」を買収し、それを契機としてスターバックスの店
  舗におけるフードの充実やラ・ブーランジェの商品展開など多くのメ
  リットをもたらしたものの、長期的な成長を目的とするグループ戦略
  を鑑み、ラ・ブーランジェ単独での店舗展開は困難と判断し今回の
  決定に至ったようです。》 (Web『不景気.com』 2015年6月22日)
 
[問2] コーヒーの木からコーヒーチェリーが収穫できるようになるには3~5年くらいかかりますが、スタバが買収したパン屋やジュース屋や茶屋を見放して潰すまではどれくらいかかるでしょう?
イ:コーヒーの花の寿命と同じ1~3日くらい
ロ:コーヒーチェリー収穫までと同じ3~5年くらい
ハ:コーヒーの木の経済寿命と同じ20~30年くらい
 倫理的な調達 (3)
 スタバのジュース専門店「エボリューション・フレッシュ」、全店閉鎖へ
 《スターバックスがまた一つ、中核事業であるコーヒー以外のビジネス
  に終止符を打つことになった。同社が5年前に買収したジュース
  バー、「エボリューション・フレッシュ」だ。 ケビン・ジョンソン社長兼
  最高執行責任者(COO)に近くその座を譲るハワード・シュルツ最
  高経営責任者(CEO)は2011年、スターバックスのブランドロゴ
  から社名を外した。これについてシュルツは当時、「将来に手掛け
  る事業が、必ずしもコーヒーに関連したものである必要がなくなる」
  と説明していた。》 (Web『Forbes Japan』 2017年3月1日)
 
[問3] 次々にブランドを買収しては潰しているスタバは2017年だけでも2つのブランドを全店閉鎖と発表しましたが、さらにこの先でスタバが見放したり手放したりして潰してしまうブランドは?
イ:茶のTazo(タゾ)
ロ:コーヒーのSeattle's Best(シアトルズベスト)
ハ:水のEthos(エトス)
 倫理的な調達 (4)
 スタバのお茶専門店「ティバーナ」、米で全店閉鎖へ
 《米国の小売・外食産業に大きな影響を及ぼしている現在の困難な状
  況は、コーヒーチェーン大手スターバックスにもわずかながら痛みを
  もたらしているようだ。 時価総額およそ860億ドル(約9兆5500億
  円)の同社は7月27日に行った今年第3四半期(4~6月)の決算
  発表に合わせ、傘下のティバーナ(Teavana)が運営するお茶専
  門チェーンを閉鎖する方針を発表した。戦略的な見直しを行った結
  果、業績不振が続いていた同チェーンの現状は、今後も「続く可能
  性が高い」と判断したという。 同社の発表文によれば、米国内にあ
  るティバーナの379店舗は全て閉鎖することになる。主にショッピン
  グモール内に出店しているこれら店舗の大半は、2018年春までに
  営業を終了する。》 (Web『Forbes Japan』 2017年7月28日)
 
問1と問2の正答は共に‘ロ’だが、問3の解答は‘イ’も‘ロ’も‘ハ’も全てだと予想される。コーヒーのさび病に対する耐性品種を開発しても、買収したブランドの耐性を開発しないスタバ。コーヒーでC.A.F.E.(Coffee And Farmer Equity)プラクティスを標榜しても、買収したブランドの公平性に目を向けないスタバ。コーヒー豆かすリサイクルループを推進しても、買収したブランドの尊厳と持続性を再生しないスタバ。スターバックスには傘下に他のブランドを「倫理的な調達」する能がなく、それ自体がコーヒー業界や飲食業界の‘病害’であり‘かす’である。地球上から消え去ることが、スターバックスにとってもっとも倫理的であろう。
 
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子ども珈琲電話相談2

ジャンル:グルメ / テーマ:コーヒー / カテゴリ:珈琲の記:2017 [2017年07月26日 05時00分]
夏休み子ども珈琲電話相談」は、小中学生のみなさんの珈琲に対する疑問や興味にこたえる番組です。りっぱな(?)質問でなくてもかまいません。ふと、頭に浮かんだ謎、素朴な質問でも大丈夫です。ぜひ、夏休み中のお子さんとご一緒にお楽しみください。
 夏休み子ども珈琲電話相談2
 
【難敵】
「お名前と学年を教えてください」 「里辺(りべ)利香(りか)です。小学5年生です」 「利香さんの質問はどういうことですか」 「えっと、地球の温暖化が進んでコーヒーが飲めなくなるかもしれないというのは本当ですか?」 「はい。利香さんはコーヒー好きですか」 「好きです」 「では、井利先生に訊きますね」 「井利です。利香さんは地球の温暖化が進むとどうしてコーヒーが飲めなくなると思いますか」 「コーヒーが採れなくなるからだと思います。栽培に合う環境が高いところに移って農地が不足するとか、気候が不安定になって干ばつや土砂崩れがたびたび起きるとか、サビ病が拡がってしまうとか…」 「よく勉強されていますね。結論から言えば、既にそういうことが起こり始めていますし、利香さんが大人になった時にはコーヒーを好きなだけ飲むことはできなくなってしまうかもしれません。一つの考えとして、採れなくなって減ったら減った分だけ我慢して最後はコーヒーを飲むのをやめてしまう、という方法もありますが、利香さんはどう思いますか」 「ちょっといやです」 「そうですね。私もコーヒー好きですから、それはいやです。でもね、この話は我慢するのかどうかでは終わらないと思います」 「えっ」 「あのね、本当にコーヒーが飲めなくなるくらい地球が酷いことになってしまう頃には、コーヒー以外の、例えば、コメとかムギとかトウモロコシとか大豆とかが採れなくなったり、お魚が獲れなくなったり、あるいは飲むお水ですら全然足りなくなってしまうかもしれない、そういう心配もあります」 「そうなんですか」 「だから、コーヒーだけ何とかしようと思うよりも、地球の温暖化が進むと利香さんの生きていく世界はどうなるのか、何を我慢して何を変えなければいけないのか、コーヒーを飲みながらコーヒー以外にも目を向けて利香さんたちにも考えてほしいんです。わかりますか」 「えっと、はい…」 「じゃ、さよなら~」 「さよなら…」
 
【瞬殺】
「お名前と学年を教えてください」 「粕柄(かすから)貴志流(きしる)です。小学3年生です」 「訊きたいことはどういうことかな」 「えっと、銀ブラというのは銀座をぶらぶら歩くことではなくて銀座でブラジルコーヒーを飲むことだというのは本当ですか?」 「はい。貴志流くんは銀座でブラジルのコーヒーを飲んだのかな」 「飲みません」 「えっ?」 「えっと、銀座で飲むんだったらブラジルなんかじゃなくて、ビルの最上階にあるカフェでグァテマラの特級畑のコーヒーを飲みます」 「は、はい。では、星名先生に訊きますね」 「星名です。貴志流くんは銀座でブラジルコーヒーを飲むことが銀ブラの語源だと思いますか」 「わかりません」 「ウソ、許せないウソです。わかりましたか」 「えっと、はい…」 「じゃ、さよなら~」 「さよなら…」
 
【拒絶】
「お名前と学年を教えてください」 「牧(まき)根太(ねた)です。中学2年生です」 「質問はどういうことかな」 「えっと、コーヒーは健康にいいのですか?」 「はい。根太くんはどうしてこの疑問を思いついたのですか」 「コーヒーの科学の本を読んでいたら、『コーヒーはヒトの健康にどう影響するのか』という話がありました。でも、個人レベルで考えると飲んでも飲まなくても大きな違いはなさそうで、よくわからなくなってしまいました」 「なかなか難しそうな問題ですね。では、平瀬先生に訊きますね」 「えっ? 井利先生か星名先生で…」 「根太くんの質問は、自称コーヒー博士の平瀬先生がお答えします」 「我が輩がコーヒー博士の平瀬じゃ。健康にいいコーヒーは水素の…」 「さよなら…」 「あっ、根太くん、根太く~ん」 (ツーッ、ツーッ…) 「え~と、切れましたね。さぁ、今日もたくさんの質問ありがとうございました」
 
お楽しみいただけましたか? 《ふと気がつくと、いつしかもう、あまり「なぜ」という言葉を口にしなくなっている。そのときだったんだ。そのとき、きみはもう、ひとりの子どもじゃなくて、一人のおとなになっていたんだ。「なぜ」と元気にかんがえるかわりに、「そうなっているんだ」という退屈なこたえで、どんな疑問もあっさり打ち消してしまうようになったとき》(「あのときかもしれない」 『深呼吸の必要』 晶文社:刊)と長田弘氏は記し遺しました。でも、珈琲に「なぜ」を問うたり珈琲を「そうなっているんだ」と識る、そこに子どもか大人かは関係ありませんし、元気に考えれば退屈はありません。夏休みも珈琲に生きるだけです。
 
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シレシレシ

ジャンル:グルメ / テーマ:コーヒー / カテゴリ:珈琲の記:2017 [2017年07月15日 05時00分]
コーヒーには白白(しらじら)しくてシレシレシ話もあるし、果果(はかばか)しくてスキスキシ話もある。
 
痴れ痴れし。「一杯のコーヒーから始まる話」(『中日新聞』・『東京新聞』 考える広場 2017年7月1日)には、臼井隆一郎の他に戸田奈穂と井崎克英の言説も載っていた。
 
 《フェアトレードにも関心があります。産地国の人たちの生活を安定させる
  ために、豆の価格が多少高くなっても構わないと思います。チョコレート
  でもそうですよね。カカオ豆を採っている子どもたちがチョコを食べたこ
  とがない例もあるそうで。》 (戸田奈穂 「味と香りのとりこに」/聞き手:
  小野木昌弘)
  シレシレシ (1)
 《よく「九〇度くらいまで冷ましたお湯で入れるといい」といわれますが、あ
  れは雑味を出さないため。豆が上質なら、グラグラにわかした熱湯で入
  れた方が、コーヒーの持つおいしさが抽出されます。》 (井崎克英 「最
  高品質の豆求めて」/聞き手:出田阿生)
 
戸田奈穂が何を言いたいのか、私には知れない。カカオ豆の脂肪分の融点によって生ずる課題としての「チョコレートの南北問題」を解っていないのか? 《豆はケニアが一番好きです》とも言っていたが、紅茶を飲みながらコーヒーを栽培しているケニアの例をどう評するのか? 痴れ言だ。
井崎克英が何を言いたいのか、私には知れない。どう焼いてもどう淹れても《豆が上質なら》ば雑味は出ないとでも信じているのか? 《何といっても「たかがコーヒー」ですから》とも言っていたが、だから《グラグラにわかした熱湯で入れ》ない水出しパックも扱っているのか? 痴れ言だ。
何かを声高に伝える意企で自ら齟齬をきたすことを恥じない…「一杯のコーヒーから始まる話」は、《なぜこんなに人を引きつけるのか。そこから何が見えるのか》だけではなくて、なぜこんなに人は愚かなのかが見えてくる。痴れ痴れし。
 
好き好きし。平野太呂の「ボクと後輩」(第24回/『POPEYE』No.844 2017年8月号)には、岩野響の言説が載っていた。
 
 《最初はスパイスカレーの隠し味にコーヒーを使っていて、初めはインスタ
  ントコーヒーを使っていたんですけれど、自分で煎ったコーヒーを使った
  らもっとおいしくなったので、それでいろんなおいしいコーヒー屋さんの
  を使ってカレーに混ぜていて、そこから「あ、コーヒーって奥が深くて広
  いんだ」って思って、そこからコーヒーにこだわり始めたっていう感じで。》
  (岩野響:談/平野太呂 「ボクと後輩」第24回)
  シレシレシ (2)
 《小学6年生のとき、両親の洋服を扱うショップのオーナーさんが『コーヒー
  に興味があるなら』と小さな手回し焙煎器をくれたんです。すぐに親に
  頼んで生豆をとりよせてもらって、家で焙煎をしてみました。コーヒー豆
  の焙煎って、時間や温度で味がまったく変わるのが面白くて。そのあと、
  学校へ行けなくなった時に、本気で取り組んでみたいと思ったのが焙煎
  でした。》(岩野響:談/友光だんご 「あえて高校に行かず15歳で「コー
  ヒーショップ」を構えた少年」/Webサイト「ジモコロ」 イーアイデム 20
  17年5月1日)
 
「HORIZON LABO」(ホライズンラボ)の岩野響については、今2017年春の開業後に知名となって大坊勝次と接点があることでも興味を抱いたが、若年やアスペルガー障害をもって巷間が騒ぎたてることには魅かれなかった。
だが、《スパイスカレーの隠し味にコーヒーを使っていて》そこから《コーヒーにこだわり始めたっていう感じ》という、今般の「ボクと後輩」で岩野響が語った話は付き付きしくて実に面白い。「たかがコーヒー」との出逢いは、こうであってほしいし、こうじゃなければいけませんよ、ええ。好き好きし。
 
何かを声高に伝える意企で自ら齟齬をきたすこと、それはよくある話だ。それを廉恥とするか破廉恥とするか…コーヒーにはバカバカしくてシレシレシ話もあるし、オモシロくてスキスキシ話もある。
 
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最低で圏外

ジャンル:グルメ / テーマ:コーヒー / カテゴリ:珈琲の記:2017 [2017年07月08日 05時00分]
2017年6月20日、公益財団法人日本生産性本部のサービス産業生産性協議会は、2017年度第1回の調査結果でカフェ業界の顧客満足度を発表した。
 最低で圏外 (1)
 
 「スタバ、顧客満足度調査でランク外に」
 《そして17年度の第1回調査では、先述した通りスタバの顧客満足は結果
  が公表される上位4社から外れ、ドトールは1位をキープした。ちなみに、
  スタバは顧客満足の順位が低下しているものの、顧客期待と知覚品質
  では1位をキープしている。以上の結果を簡単にまとめてスタバの現状
  を示すと、「客は事前に高い期待を抱き、実際にコーヒーを飲んでみる
  と、期待通りおいしく店の雰囲気もいいが、価格は高すぎる」ということ
  になる。》 (佐藤昌司/Web『Business Journal』 2017年6月28日)
 
 「スタバ満足度「圏外」に落ちた3つの理由」
  「スタバは面倒」の消費者心理/ドトールのほうが「コスパ」がいい/
  「意識高い系」への嫌悪感
 《生活に余裕のある人は決して多くない。以前に比べて欧米ブランドへの
  「憧れ」も薄れ、「日常生活」でのコストパフォーマンスが重視されるよう
  になっている。だからこそ、「カッコつけるのが、カッコ悪い」という逆説
  が成り立つのだろう。その意味で、スタバは「踊り場」を迎えたのかもし
  れない。》 (高井尚之/Web『PRESIDENT Online』 2017年6月
  29日)
 
 「「コーヒーの提供」から「場の提供」へ」
 《公益財団法人日本生産性本部が公表した「2017年度JCSI(日本版顧
  客満足度指数)第1回調査結果」で、コーヒー店チェーンのスターバッ
  クスの顧客満足度がランク外になったことが注目されているようです。
  そもそも「カフェ」って誰のため、何のためにあるのでしょうか。(略)そ
  のスターバックスが、冒頭の調査でランク外になったということは、利
  用者の求める「場」と、スターバックスが考える「場」に、ギャップが生ま
  れてしまったということです。》 (横田尚哉/Web『朝日新聞DIGITAL
  2017年7月6日)
 
「珈琲きゃろっと」に《スタバコーヒー、やーめた》と罵られる以前から、私は《スタバは全面的に凋落した。さらばスタバと言おう》と説いていた。だから、横田尚哉が《スターバックスの顧客満足度がランク外になったことが注目されている》と煽り、佐藤昌司が《期待通りおいしく店の雰囲気もいいが、価格は高すぎる》と吐き、高井尚之が《スタバは「踊り場」を迎えたのかもしれない》と嘯いても、何を今さらの感が拭えない。また、調査の対象とされたカフェチェーンが7つしかない中で、下位3つをランク外や圏外と称する意図がわからない。ミスタードーナツが2位である理由すら誰からも述べられない。これらを説きもしないでスターバックスコーヒーを眼目に勝手な論を喚く下賤な連中の方が、顧客満足が落ちたスターバックスコーヒーよりも酷い。経営コンサルタントと称する以前に、人間の性根としてランク外であり圏外へ凋落している。
 
 最低で圏外 (2)
そもそも、JCSI(Japanese Customer Satisfaction Index)という顧客満足度は、《誰のため、何のためにあるのでしょうか》? サービス産業生産性協議会による顧客満足度調査は、カフェ業界に関して2009年度より今般まで9回発表されている。1位の座は、初回の2009年度にタリーズコーヒーが、2012年度に対象として初登場したコメダ珈琲店が、2014年度にスターバックスコーヒーが、いずれも1回ずつ得ている。残り6回の1位は、カフェ・ベローチェ(2010・2011・2013年度)とドトールコーヒーショップ(2015・2016・2017年度)が、共に3回ずつ獲っている。だが、この結果について、ドトールの3連覇(?)を論ずる者はいても、ベローチェの栄華(?)を対照にした話は見出せない。全9回で対象となっているサンマルクカフェが一度も1位になれない理由は説かれない。もっとも、公益財団法人日本生産性本部のサービス産業生産性協議会による調査対象の変遷も解せない。ミスタードーナツを途中3回(2010~2012年度)でファストフードに区分して、再びカフェ業界の対象に戻した意図も不明瞭である。プロントとエクセルシオールにいたっては、2010・2011年度の2回で対象にされただけである。ちゃらんぽらんな調査だ。
 
以上の結果を簡単にまとめてカフェ業界のJCSI調査実態を示すと、「調査機関は事前に恣意的な判断を抱き、実際に結果をみてみると意外性を演出しているが、とても真面な資料とはいえない」ということになる。つまり、「圏外」であるのはスターバックスコーヒーではなくて、公益財団法人日本生産性本部と名乗る機関と経営コンサルタントと称する輩なのだ。さらに、こんなクダラナイ顧客満足度の話を鵜呑みにして、カフェチェーンを羨んだり貶したりしているコーヒー業界やコーヒー愛好者こそが最低の存在といえよう。こじつけるバカに浮かれるバカ、「最低で圏外」である。…《そもそも「カフェ」って誰のため、何のためにあるのでしょうか》? コーヒーは、誰のため、何のためにあるのか?
 
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コーヒーが映す後退戦

ジャンル:グルメ / テーマ:コーヒー / カテゴリ:珈琲の記:2017 [2017年07月02日 05時00分]
今2017年も半夏生を迎えた。感興のおもむくままに私の雑念を述べて、「暑中見舞」に代える。例えば、臼井隆一郎は《戦争が総力戦の段階に入った歴史的時点で、戦時と平時が明快な区別線をもたなくなった》と言い、内田樹は《日本はこれから長期にわたる「後退戦」を戦わなければならない》と言う。
 
 《戦争が総力戦の段階に入った歴史的時点で、戦時と平時が明快な区別
  線をもたなくなった。コーヒーを飲みたいという個人的な欲求が国民的
  欲求となり、それが国民的欲動となって植民地獲得の動きと化し、つい
  には世界総力戦に入り込む。そうなれば、一杯のコーヒーさえ飲めれ
  ば世界などどうなっても構わぬと考えていた人間が、どのような世界に
  入り込んで苦しむことになるかの典型例をドイツ史が示していると思わ
  れるのである。そして、そのドイツを見続けていると、その回りにアラビ
  アやアフリカの国々が蝟集し、ついにはユーラシア大陸を貫いて極東ア
  ジアや日本をコーヒー色に染め上げる筈である。》 (臼井隆一郎 『アウ
  シュヴィッツのコーヒー コーヒーが映す総力戦の世界』/石風社:刊
  2016年)
 コーヒーが映す後退戦 (1)
 《日本ははっきり末期的局面にある。これから急激な人口減を迎え、生産
  年齢人口が激減し、経済活動は活気を失い、国際社会におけるプレゼ
  ンスも衰える。日本はこれから長期にわたる「後退戦」を戦わなければ
  ならない。後退戦の要諦は、ひとりも脱落させず、仲間を守り、手持ち
  の有限の資源をできるだけ温存して、次世代に手渡すことにある。(略)
  後退戦の戦い方を私たちは知らない。経験がないからだ。けれども、困
  難な状況を生き延び、手持ちの資源を少しでも損なうことなく次世代の
  日本人に伝えるという仕事について私たちは好き嫌いを言える立場に
  はない。》 (内田樹 「まず米「属国」直視から」/『神奈川新聞』 憲法特
  集 2017年5月3日)
 
日本に限らず人類社会全体が《はっきり末期的局面にある》、と私は思う。人類は《これから長期にわたる「後退戦」を戦わなければならない》のだろうか? 人類社会が「後退戦」の段階に入った歴史的時点で、一杯のコーヒーさえ飲めれば世界などどうなっても構わぬと考える人間は、どのような世界に入り込んで苦しむことになるのか? 半夏生の前日、《なぜこんなに人を引きつけるのか。そこから何が見えるのか》を問う「一杯のコーヒーから始まる話」(『中日新聞』・『東京新聞』 考える広場 2017年7月1日)に臼井隆一郎の言説が載った。
 コーヒーが映す後退戦 (2)
 《そういったさまざまなエネルギーが生まれて、その機能がコーヒーハウス
  から飛び出し、国家組織化されて近代市民社会は形成されていきます。
  しかし、日本の喫茶店にはそういったエネルギーは感じないですね。隣
  の人に話し掛けたり、いきなり演説したりしたら、変なヤツに思われちゃ
  う。そもそも、日本の近代化自体が外国のものを取り入れて成り立って
  いますから、エネルギーが生まれる余地はなかったかもしれません。
  (略) 欧州とイスラム世界は今、敵対するような格好をとっています。そ
  もそも、欧州のルネサンス自体がイスラムの古代知識によっています
  から、近代的な欧州とアラビア世界は、私は一つの文化帯のはずだと
  思っています。シリア難民でもめているのも、非常に皮肉な時代です。
  そういう時代だからこそ、私たちはコーヒーとカフェの歴史をあらためて、
  最初から見直す必要もあると思うのです。》 (臼井隆一郎 「欧州、イス
  ラムの共作」/聞き手:秋田佐和子)
 
「一杯のコーヒーから始まる話」は、《そこから何が見えるのか》? 人間の根本的な‘アヤシサ’を問い続ける臼井隆一郎は、《近代的な欧州とアラビア世界は、私は一つの文化帯のはず》と言う。それは、《欧州のルネサンス自体がイスラムの古代知識によっています》に加えて、いわゆる‘総力戦’の時代へ下っても示されよう。アラビア世界で嗜好がコーヒーから紅茶へと遷移したこと自体が、近代的な欧州の帝国主義によっているのだから。コーヒーの歴史において先行したイスラムは、コーヒー飲用の「後退戦」においても先行している。そうした《非常に皮肉な時代》においてコーヒーも《はっきり末期的局面にある》、と私は思う。コーヒーの世界は《これから長期にわたる「後退戦」を戦わなければならない》のだろう。コーヒーの世界でも《後退戦の戦い方を私たちは知らない》。そう、《私たちはコーヒーとカフェの歴史をあらためて、最初から見直す必要もある》のだ。 けれども、人類社会が「後退戦」の段階に入った歴史的時点においても、手持ちのコーヒーを少しでも損なうことなく次世代の人類に伝えることについて、私は好き嫌いを言える立場でありたい。一杯のコーヒーさえ飲めれば世界などどうなっても構わぬと考える人間は、どのような世界に入り込んで苦しむことになるのか?
 
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kisanjin

Author:kisanjin
鳥目散 帰山人
(とりめちる きさんじん)

無類の珈琲狂にて
名もカフェインより号す。
沈黙を破り
漫々と世を語らん。
ご笑読あれ。

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